都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 所沢市生涯学習推進センター(第一会場)
所沢市生涯学習推進センター(第一会場)
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」
8/27-9/18

「所沢ビエンナーレ引込線 2011」へ行ってきました。
2008年のプレ展、また翌2009年の第一回展と、いずれも所沢の西武鉄道旧車両工場跡地にて見応えのある展示を繰り広げた所沢ビエンナーレですが、今年は場所を大きく変え、同市内の生涯学習センターと旧給食センターの二箇所で開催されています。

西武新宿線航空公園駅東口
最寄り駅は市の中心駅の所沢駅ではなく、その隣の航空公園駅です。第一会場の学習センターは駅から15分、また第二会場の旧給食センターはそこからさらに15分超と、前回までの駅至近のアクセスと比べると難がありますが、ともかくまず駅により近い第一会場の方から歩いて廻ってみることにしました。

航空公園駅より生涯学習センターへの道
航空公園駅は所沢の行政の拠点と言うべき場所かもしれません。繁華街こそありませんが、駅からのびる道路は歩道も広く、市役所などを横目に並木道を歩いていくと、約15分ほどで第一会場の生涯学習推進センターに到着しました。駅からは一本道です。緑色の「引込線」の旗を目印にすればまず迷うことはありません。

所沢市生涯学習推進センター(第一会場)入口
生涯学習センターとありますが、建物自体はかつての小学校跡地です。うちビエンナーレではその全てを用いるわけではなく、メインの体育館とプール周辺のみが会場となっています。

第一会場・体育館内部
がらんとした体育館のスペースを展示に用いるのはかなり難しいのではないかと思いますが、それでも場所性を意識した作品がかなり目立っていました。

吉雄介「On the Line」2000~2011年
体育館でよく見るラインテープ上に亜鉛のオブジェを配したのが吉雄介です。円状になったテープの上に並ぶその姿は、まるで都市に立ち並ぶビル群です。視線を低くして見ると迫力がありました。

荻野遼介「w1665×h1861×d61」2011年
また体育館の壇上には荻野遼介のペイントが鎮座します。そのモニュメンタルな様子は、まるで何らかの「的」のようにも見えるのではないでしょうか。

佐藤万絵子「curtain」2011年
窓越しのネットを利用した佐藤万絵子のインスタレーションもまた美感に秀でています。写真では分かりにくいですが、ネットに布、それにビーズを絡ませ、あたかもレースのカーテンのようなドレープを作り出しました。窓の一面の刺繍のレリーフと言っても良いかもしれません。

佐藤万絵子「Where the Catchers Are」2011年
ちなみに佐藤ではセロファンを素材とした「Where the Catchers Are」も見逃せません。体育館奥の一室のドア付近のみを用いた簡素な作品でしたが、少し中をのぞいてみると、光の乱反射するメタリックな空間が出現していました。

橋本聡「誰かの名前を一回言ってください」2011年
一方で来場者と作品との関わりを重視するのが橋本聡の一連のインスタレーションです。「誰かの名前を一回言ってください。」などと言ったように、実際の行為を来場者へ要求します。体育館横のゴミ箱には会期の前後半にてゴミを捨て、また持ち帰るようにするという指示までありました。一体どのようなゴミが今、そこに入っているかは、まさに観客のなす術にかかっているというわけです。
さて体育館を出て、少し奥へ進んだプール跡には、第一会場で最も印象深かった遠藤利克の作品が待ち構えていました。

第一会場・プール跡
この「Trieb-ハウス」を発見した時の感動は未だ忘れられません。写真にもあるように一見、作品がどこにあるか分からないほど空間に溶けこんでいますが、逆に見つけた後、そこから立ち上がる存在感は並大抵のものではありませんでした。

遠藤利克「Trieb-ハウス」2011年
プールサイドに構えた木のフレームは、それこそタイトルの如く家の残骸のようではないでしょうか。使われなくなったプールの側で寡黙に佇む作品を見ていると、何とも言えない喪失感に襲われてなりませんでした。

高見澤文雄「たゆたい」2011年
またプール横の更衣室にも2名の作家、山路紘子と高見澤文雄のペイントが展示されています。高見澤の「たゆたい」はそれこそ水の斑紋です。また空間自体も天井の半円状のスペース、そして中央に区切られた採光窓の効果もあってか、どこか教会のように見えたのも不思議でした。

山本麻璃絵・公開制作
入口付近では山本麻璃絵の公開制作(制作は不定期。見学自由。)を実施中でした。扇風機や郵便ポストの木彫がお見送りしてくれます。
第一会場は以上です。面積がさほど広くないせいか、思ってたよりもすんなりと見終えました。なおここより歩いて15分超、旧給食センターの第二会場については次のエントリでまとめたいと思います。
*追記:以下のリンク先にまとめました。
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 旧所沢市立第2学校給食センター(第二会場)
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」(@tokorozawa_2011) 所沢市生涯学習推進センター(第一会場)
会期:8月27日(土)~9月18日(日)
休館:8月31日(水)・9月7日(水)・9月12日(月)
時間:10:00~17:00
住所:埼玉県所沢市並木6-4-1 所沢市生涯学習推進センター
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩15分。航空公園駅東口1番乗り場「西武バス航空公園駅」より所20-3系統「並木通り団地行き」、または新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「文化センターミューズ前」下車徒歩5分。
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」
8/27-9/18

「所沢ビエンナーレ引込線 2011」へ行ってきました。
2008年のプレ展、また翌2009年の第一回展と、いずれも所沢の西武鉄道旧車両工場跡地にて見応えのある展示を繰り広げた所沢ビエンナーレですが、今年は場所を大きく変え、同市内の生涯学習センターと旧給食センターの二箇所で開催されています。

西武新宿線航空公園駅東口
最寄り駅は市の中心駅の所沢駅ではなく、その隣の航空公園駅です。第一会場の学習センターは駅から15分、また第二会場の旧給食センターはそこからさらに15分超と、前回までの駅至近のアクセスと比べると難がありますが、ともかくまず駅により近い第一会場の方から歩いて廻ってみることにしました。

航空公園駅より生涯学習センターへの道
航空公園駅は所沢の行政の拠点と言うべき場所かもしれません。繁華街こそありませんが、駅からのびる道路は歩道も広く、市役所などを横目に並木道を歩いていくと、約15分ほどで第一会場の生涯学習推進センターに到着しました。駅からは一本道です。緑色の「引込線」の旗を目印にすればまず迷うことはありません。

所沢市生涯学習推進センター(第一会場)入口
生涯学習センターとありますが、建物自体はかつての小学校跡地です。うちビエンナーレではその全てを用いるわけではなく、メインの体育館とプール周辺のみが会場となっています。

第一会場・体育館内部
がらんとした体育館のスペースを展示に用いるのはかなり難しいのではないかと思いますが、それでも場所性を意識した作品がかなり目立っていました。

吉雄介「On the Line」2000~2011年
体育館でよく見るラインテープ上に亜鉛のオブジェを配したのが吉雄介です。円状になったテープの上に並ぶその姿は、まるで都市に立ち並ぶビル群です。視線を低くして見ると迫力がありました。

荻野遼介「w1665×h1861×d61」2011年
また体育館の壇上には荻野遼介のペイントが鎮座します。そのモニュメンタルな様子は、まるで何らかの「的」のようにも見えるのではないでしょうか。

佐藤万絵子「curtain」2011年
窓越しのネットを利用した佐藤万絵子のインスタレーションもまた美感に秀でています。写真では分かりにくいですが、ネットに布、それにビーズを絡ませ、あたかもレースのカーテンのようなドレープを作り出しました。窓の一面の刺繍のレリーフと言っても良いかもしれません。

佐藤万絵子「Where the Catchers Are」2011年
ちなみに佐藤ではセロファンを素材とした「Where the Catchers Are」も見逃せません。体育館奥の一室のドア付近のみを用いた簡素な作品でしたが、少し中をのぞいてみると、光の乱反射するメタリックな空間が出現していました。

橋本聡「誰かの名前を一回言ってください」2011年
一方で来場者と作品との関わりを重視するのが橋本聡の一連のインスタレーションです。「誰かの名前を一回言ってください。」などと言ったように、実際の行為を来場者へ要求します。体育館横のゴミ箱には会期の前後半にてゴミを捨て、また持ち帰るようにするという指示までありました。一体どのようなゴミが今、そこに入っているかは、まさに観客のなす術にかかっているというわけです。
さて体育館を出て、少し奥へ進んだプール跡には、第一会場で最も印象深かった遠藤利克の作品が待ち構えていました。

第一会場・プール跡
この「Trieb-ハウス」を発見した時の感動は未だ忘れられません。写真にもあるように一見、作品がどこにあるか分からないほど空間に溶けこんでいますが、逆に見つけた後、そこから立ち上がる存在感は並大抵のものではありませんでした。

遠藤利克「Trieb-ハウス」2011年
プールサイドに構えた木のフレームは、それこそタイトルの如く家の残骸のようではないでしょうか。使われなくなったプールの側で寡黙に佇む作品を見ていると、何とも言えない喪失感に襲われてなりませんでした。

高見澤文雄「たゆたい」2011年
またプール横の更衣室にも2名の作家、山路紘子と高見澤文雄のペイントが展示されています。高見澤の「たゆたい」はそれこそ水の斑紋です。また空間自体も天井の半円状のスペース、そして中央に区切られた採光窓の効果もあってか、どこか教会のように見えたのも不思議でした。

山本麻璃絵・公開制作
入口付近では山本麻璃絵の公開制作(制作は不定期。見学自由。)を実施中でした。扇風機や郵便ポストの木彫がお見送りしてくれます。
第一会場は以上です。面積がさほど広くないせいか、思ってたよりもすんなりと見終えました。なおここより歩いて15分超、旧給食センターの第二会場については次のエントリでまとめたいと思います。
*追記:以下のリンク先にまとめました。
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 旧所沢市立第2学校給食センター(第二会場)
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」(@tokorozawa_2011) 所沢市生涯学習推進センター(第一会場)
会期:8月27日(土)~9月18日(日)
休館:8月31日(水)・9月7日(水)・9月12日(月)
時間:10:00~17:00
住所:埼玉県所沢市並木6-4-1 所沢市生涯学習推進センター
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩15分。航空公園駅東口1番乗り場「西武バス航空公園駅」より所20-3系統「並木通り団地行き」、または新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「文化センターミューズ前」下車徒歩5分。
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