「浅川伯教・巧兄弟の心と眼 朝鮮時代の美」 千葉市美術館

千葉市美術館
「浅川伯教・巧兄弟の心と眼」
8/9-10/2



朝鮮陶磁に傾倒し、民藝運動とも深い関わりを持った浅川伯教(1884-1964)、巧(1891-1931)兄弟の事跡を辿ります。千葉市美術館で開催中の「浅川巧生誕120年記念 浅川伯教・巧兄弟の心と眼 朝鮮時代の美」へ行ってきました。


「青花鉄砂葡萄文壺」 朝鮮時代・18世紀前半 大和文華館

日本統治下において、朝鮮の工芸品などの『美』と向かい合った人物としては、それこそ民藝運動の第一人者である柳宗悦が知られていますが、とりわけ陶磁に関して最も深く関わりあったのが、他ならぬこの浅川伯教と巧の兄弟でした。

日韓併合の3年後、1913年に朝鮮へと渡った兄の伯教は、現地で教員として生業をたてながら、朝鮮陶磁の美しさにひかれ、その研究などをはじめます。

1年後に同じく朝鮮へ赴いた弟の巧も同様です。彼は朝鮮総督府の職員として働きながら、それまで一段低く見られていた白磁に価値を見出し、その美を広める活動につとめていきました。


「粉青粉引碗 粉引茶わん 銘ミンクンドン」 朝鮮時代・16世紀後半 大阪市立東洋陶磁美術

展示ではそうした浅川兄弟の見出した朝鮮陶磁と工芸品が紹介されています。私自身、前々より惹かれる白磁の名品はもちろん、刷毛目茶碗、また壺などがずらりと揃う様子には、思わず息をのんでしまいました。(出品リスト

また浅川兄弟は宗悦やリーチとも交流を深めながら「朝鮮陶磁研究会」を立ち上げ、朝鮮半島における陶磁の蒐集の他、窯の調査までを手がけていきました。

中でも重要なのは「朝鮮陶磁名考」や巧が著した「朝鮮の膳」です。後者では跋に柳宗悦を据えています。朝鮮の白磁に対して「素朴なあたたかみ」(キャプションより引用)を見出した彼らの思いは、そうした資料からもひしひしと伝わってきました。


「白磁壺」 朝鮮時代・17世紀後半~18世紀前半 大阪市立東洋陶磁美術館

東洋陶磁コレクションでは国内随一と言える大阪の東洋陶磁美術館よりもかなりの数の作品がやってきています。世界的にも珍しいという高さ50センチほどの巨大な「白磁壺」なども見どころの一つでした。


「粉青刷毛目碗 鶏龍山茶わん 銘東鶴寺」 朝鮮時代・15世紀硬軟~16世紀前半 大阪市立東洋陶磁美術館

弟の巧は残念ながら若くして肺炎で亡くなりますが、兄の伯教は終戦後に日本へ引き上げ、千葉市内に居を構えていたそうです。言わばご当地の人物の展覧会といえるかもしれません。

松屋銀座で柳宗悦、また汐留のパナソニック電工ミュージアムで濱田庄司の展示がそれぞれ開催されていましたが、この浅川兄弟展を見ることで、改めて民藝運動の横の軸が繋がったような気がしました。そういう意味ではタイムリーな展示です。

10月2日まで開催されています。なお千葉展終了後、山梨県立美術館(11/19-12/25)と栃木県立美術館(2012/1/14-3/20)へと巡回します。

「浅川巧生誕120年記念 浅川伯教・巧兄弟の心と眼 朝鮮時代の美」 千葉市美術館
会期:8月9日(火)~10月2日(日)
休館:9月5日
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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