「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 旧所沢市立第2学校給食センター(第二会場)

旧所沢市立第2学校給食センター(第二会場)
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」
8/27-9/19



第一会場「所沢市生涯学習推進センター」のエントリに続きます。「所沢ビエンナーレ引込線 2011」へ行ってきました。

ともかくこれまでの所沢ビエンナーレでは作品と並んで会場そのもの、ようは西武鉄道の旧車両工場跡地の独特な空間が深く印象に残っていましたが、今回はここ第二会場こそ、その場所の面白さを存分に味わえると言っても間違いありません。


第二会場建物全景

会場は市の旧学校給食センターです。かつては同市内の学校へ給食を提供していた施設が、その面影をかなり残したままに、現代アートの競演の場へと生まれ変わりました。

さて展示の様子の前に、まずアクセスに触れないわけにはいきません。場所は第一会場の生涯学習センターよりおおよそ道なりで1.2キロ、最寄の航空公園駅から同じく2.5キロほど離れています。辺りには農地と住居の混在した、東京郊外の典型的な風景が広がっていました。


第一会場より第二会場へのルート

ビエンナーレ公式サイトではバスの案内が記されていますが、私は第一会場を見終えた後、ここ第二会場までも歩いて向かうことにしました。目印となる「引込線」の緑の旗もあまりなく、大通りからも一本入った地点にあるのであまり目立たないのは事実ですが、思っていたほどの時間はかかからず、第一会場からおおよそ20分強で辿り着くことが出来ました。

ただし地図はあった方が良いかもしれません。また近隣にはショッピングセンターなどもあり、それほど不便という印象はありませんでした。


旧所沢市立第2学校給食センター(第二会場)入口

それでは会場です。入口は旧給食センターの奥、つまりは道路から裏手へ廻った部分にあります。ここは第一会場同様、受付で作品の配置図をいただいて、展示の観覧へと進むという流れでした。


第二会場・旧給食センター内部

しかしながらここでおすすめ致したいのは、この配置図をまずは横に置き、まずは自由気侭に会場を彷徨ってみるということです。この会場風景の写真をご覧になって下さい。かつての給食センターの設備等の残る空間は大変に個性的ではないでしょうか。

繰り返しになりますが、かつての所沢ビエンナーレにおける旧車両工場を彷彿させるような空間、つまり色濃い場所性は、いわゆる体育館の第一会場よりも、ここ旧給食センターの第二会場にあります。


第二会場・旧給食センター内部

その空間としての強さは、もはやアートを飲み込み、また一体化しているとしても間違いではありません。それこそ既存の設備をかきわけるかのように歩き、半ば空間に隠れている作品を見つけ出すという作業は、おおよそ他の展覧会では味わえないのではないでしょうか。これぞ今回の所沢ビエンナーレの醍醐味でもありました。


田中七星「不可解な今との対話」2010年-2011年

作品でまず印象に残ったのは田中七星の「不可解な今との対話」です。2階の廊下部分の壁面に約30センチ四方のドローイングが所狭しとひしめきあっています。何やら古代の壁画などを思わせるモチーフからは、何か迸る原初的なエネルギーを感じさせてなりませんでした。


戸谷成雄「ミニマルバロック10」2011年

所沢ビエンナーレの主要メンバーでもある戸谷成雄の作品ももちろん登場します。この混沌とした空間に楔を打ち込むかのように横たわっているのは、お馴染みの「ミニマルバロック」シリーズの新作でした。


前野智彦「無人/島」2011年

また前野智彦の「無人/島」も忘れられない作品の一つです。パイプなどで組み上がった「島」の上にはいくつもの方位磁針が置かれています。白く塗られた「島」はどこか無機質でかつメタリックな印象も与えるこの空間の中で、独自の存在感を発揮していました。また素材のパイプと、半ば借景としての会場のパイプ管が呼応して見えるのも面白いかもしれません。


中崎透「十万年後の誰かが、プレイボーイを注意深く観察したとせよ」2011年

会場はおろか、元々あった備品までを取り込んで壮大なインスタレーションを展開したのは中崎透です。無数のシンクや調理台、また洗濯機や金属ケースなどが、一見無造作に積み上がっています。ここで来場者は足場を確保しながら前へと進まなくはなりません。この旧給食センターに一つのラビリンスが生み出されました。


利部志穂「水位」2011年

なお第二会場でも屋外に作品が展示されています。これまた給食センターの備品、それこそ昔懐かしい金属製の給食カゴを重ねた利部志穂の「水位」は、屋外の開放的なスペースを巧みに利用していました。

ちなみに利部志穂は次の土曜、9月10日(土)の午後3時より、「給食テクノ」と題したパフォーマンスの開催を予定しています。そちらにあわせてお出かけされるのも良いかもしれません。

「給食テクノ 利部志穂 皮(SONTON)」
日時:9月10日(土)午後3時~5時
会場:旧所沢市立第2学校給食センター
出演:利部志穂・皮(SONTON) 無料



山下香里「覚悟のない歯型」2011年

第一、第二会場とも、これまでの車両工場のような大きなスペースではありません。スケール感にかけては前回展に及ばないかもしれませんが、「引込線」ならではの独特の空間を活かした展示の妙味は存分に楽しむことが出来ました。


清岡正彦「Light Dive」2011年

帰りは最寄のバス停よりバスで駅へ向かいました。なお公式サイトでも案内のある「並木通り団地入口」バス停は、会場のすぐ前ではありません。数百メートル離れたショッピングセンターの先にあります。ご注意下さい。(バスは平日昼間で毎時4本、土日は3本程度でした。)


海老塚耕一「そして、水の皮膚の裏側からそっと」2011年

また同じく公式サイトにも記載がありますが、車で来場されている方も少なからずおられるようでした。台数には限りがありますが、両会場とも駐車スペースが用意されています。関越道の所沢インターからもさほど遠くありません。車で廻るのも良いのではないでしょうか。

会期はあと残り10日ほどです。9月18日まで開催されています。入場は無料でした。

*関連エントリ
「所沢ビエンナーレ引込線 2011」 所沢市生涯学習推進センター(第一会場)

「所沢ビエンナーレ引込線 2011」@tokorozawa_2011) 旧所沢市立第2給食センター(第二会場)
会期:8月27日(土)~9月18日(日)
休館:8/31(水)、9/7(水)、9/12(月)
時間:10:00~17:00
住所:埼玉県所沢市中富1862-1 旧所沢市立第2給食センター
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩40分。航空公園駅東口より1番乗り場「西武バス航空公園駅」より所20-3系統「並木通り団地行き」または、新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「並木通り団地入口」下車。バス停から約400m。
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