都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 武蔵野美術大学美術館
武蔵野美術大学美術館
「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」
5/26-8/17
武蔵野美術大学美術館で開催中の「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 を見て来ました。
西洋近代絵画コレクションで名高い倉敷の大原美術館。例えば都内近辺の西洋絵画展でも同館の作品を見かけることは少なくない。その充実した作品群は既に良く知られるところかもしれません。
一方で大原美術館は日本の美術作家の作品もコレクションしていた。ひょっとするとさほど知られていないのではないでしょうか。
やなぎみわ「寓話シリーズ 無題1」 2004年
その大原美術館による日本の現代美術コレクションを紹介します。作家は30名、出品は47件です。一部、立体や写真に映像を含みます。それ以外はほぼ平面、絵画の展示でした。
さて館内には大小あわせて5つの展示室があり、そこに作品が並んでいるわけですが、見せ方なり構成に一工夫があるのも重要なところです。
というのも大原美術館は単に作品の収集しているだけではない。ようは若手作家支援、普及プログラムの一貫として作品をコレクションしているわけです。
うち顕彰活動として最も身近なのがVOCA展ではないでしょうか。同展における大原美術館賞の授与。受賞作を同館は買い上げている。そして会場ではこの同賞授与作を一つのグループにまとめて展示しています。
その他には、滞在型のアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARKO(Artist in Residence Kurashiki, Ohara)」や、「AM倉敷(Artist Meets Kurashiki)」と呼ばれる若手作家を定期的に取り上げるプログラムなども紹介している。ようはそれぞれの参加作家毎に作品を展示しているのです。
つまり大原美術館の主に教育普及活動に着目しての現代美術コレクション展示。教育機関である武蔵野美術大学ならではの視点と言えるかもしれません。
浅井裕介「人」 2008年
いくつか簡単に作品を追ってみます。まずは浅井裕介。「植物/オオハラコンテンポラリー・アット・ムサビ」です。例のマスキングテープを用いた壁面のドローイング、自作だけでなく上田暁子の絵画も取り込んで行く。共作、合作ということかもしれません。ドローイングには上田の絵画からさも飛び出して来たような少女の姿も描かれています。
奥村美佳「隠れ里」 2011年
日本画家の奥村美佳が3点、うち「洞窟」に惹かれました。遠目では殆ど黒一色に包まれた画面、洞窟の闇ということでしょうか。右下には人影が見える。上方には白い明かり。洞窟の出口かもしれません。そこにも人が見える。同じ人物が移動した姿なのか、それとも別なのか。画面で揺らぐ絵具の色味も美しい。ニュアンスに富んでいることが分かります。
押江千衣子「こだま」 2009年
レジデンスプログラムに参加した浅見貴子や押江千衣子も見逃せません。ともに樹木を素材にした作品。しかしながらアプローチは全く異なる。浅見は墨に日本画の技法、滲みを用いてのどこか抽象的ともいえる画面を表す。押江は瑞々しい油絵具の色彩が光る。鮮烈なグリーン。目に染みます。
ヤノベケンジ「幻燈夜会ー倉敷」(部分) 2010年
また大原家の別邸として知られる名建築、有隣荘のプログラムに参加したヤノベケンジの展示も見どころの一つではないでしょうか。もちろんかの和風建築を望むべくもなく、ここ武蔵美のホワイトキューブですが、暗室でのインスタレーションが独特の雰囲気を醸し出している。2010年に行われた「幻燈夜会」を一部再現します。中央には大きなガラス玉を抱えた龍のオブジェが鎮座する。そして放射線感知スーツを着た「トラやん」が数体取り囲んでいました。
町田久美「来客」 2006年
その他には松井えり菜に町田久美も出展。目利きという言葉はあまり相応しくないかもしれませんが、大原美術館の充実したコレクション。若手から既にキャリアを重ねた画家まで幅広い。なかなか楽しめました。
ヤノベケンジ「Sun Sister」 2014年
アトリウムにはヤノベケンジの「Sun Sister」(2014)が特別出品。関東では初めての公開、可動式の大掛かりなインスタレーションです。(所定の時間で動きます。)この作品のみ撮影も出来ました。
なお展示室1のジュン=グエン=ハツシバの映像作品ですが、少し場所が分かりにくいかもしれません。エントランスの外、正面に向かって左の部屋です。うっかりすると通り過ぎてしまいます。お見逃しなきようご注意下さい。
武蔵野美術大学
最後に美術館へのアクセスです。現地は東京西郊、小平に位置する武蔵野美術大学内の施設。最寄駅は西武国分寺線の鷹の台駅ですが、そこから歩いて20分弱。必ずしも行きやすいとは言えません。
私は国分寺駅北口より西武バスを利用しました。こちらは毎時3~4本、所要は20分。途中、やや道路が混み合う箇所もあり、実際には20分超かかりましたが、大学の門の前までバスで行くことが出来る。おそらく鷹の台駅から歩くよりはスムーズだと思います。*西武バス「国分寺駅北入口」時刻表
武蔵野美術大学図書館
また同美術館に隣接する図書館は藤本壮介の設計です。オープンは2010年。書棚を外観に取り込んだ独特のデザインが目を引く。一見の価値があります。
武蔵野美術大学図書館
図書館へは基本的に立ち入れませんが、外から見学するのはOK。ガラスの壁面に映り込むのは桜でしょうか。構内の木立を取り込む。個性的な構えに反して違和感なく周囲に溶け込んでいます。また外の窓からは内部も少し伺えました。場所は美術館のちょうど裏手です。お時間のある方は廻っても良いかもしれません。
会期中無休。無料です。8月17日まで開催されています。
「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:5月26日(月)~8月17日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~18:00
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約20分)
「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」
5/26-8/17
武蔵野美術大学美術館で開催中の「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 を見て来ました。
西洋近代絵画コレクションで名高い倉敷の大原美術館。例えば都内近辺の西洋絵画展でも同館の作品を見かけることは少なくない。その充実した作品群は既に良く知られるところかもしれません。
一方で大原美術館は日本の美術作家の作品もコレクションしていた。ひょっとするとさほど知られていないのではないでしょうか。
やなぎみわ「寓話シリーズ 無題1」 2004年
その大原美術館による日本の現代美術コレクションを紹介します。作家は30名、出品は47件です。一部、立体や写真に映像を含みます。それ以外はほぼ平面、絵画の展示でした。
さて館内には大小あわせて5つの展示室があり、そこに作品が並んでいるわけですが、見せ方なり構成に一工夫があるのも重要なところです。
というのも大原美術館は単に作品の収集しているだけではない。ようは若手作家支援、普及プログラムの一貫として作品をコレクションしているわけです。
うち顕彰活動として最も身近なのがVOCA展ではないでしょうか。同展における大原美術館賞の授与。受賞作を同館は買い上げている。そして会場ではこの同賞授与作を一つのグループにまとめて展示しています。
その他には、滞在型のアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARKO(Artist in Residence Kurashiki, Ohara)」や、「AM倉敷(Artist Meets Kurashiki)」と呼ばれる若手作家を定期的に取り上げるプログラムなども紹介している。ようはそれぞれの参加作家毎に作品を展示しているのです。
つまり大原美術館の主に教育普及活動に着目しての現代美術コレクション展示。教育機関である武蔵野美術大学ならではの視点と言えるかもしれません。
浅井裕介「人」 2008年
いくつか簡単に作品を追ってみます。まずは浅井裕介。「植物/オオハラコンテンポラリー・アット・ムサビ」です。例のマスキングテープを用いた壁面のドローイング、自作だけでなく上田暁子の絵画も取り込んで行く。共作、合作ということかもしれません。ドローイングには上田の絵画からさも飛び出して来たような少女の姿も描かれています。
奥村美佳「隠れ里」 2011年
日本画家の奥村美佳が3点、うち「洞窟」に惹かれました。遠目では殆ど黒一色に包まれた画面、洞窟の闇ということでしょうか。右下には人影が見える。上方には白い明かり。洞窟の出口かもしれません。そこにも人が見える。同じ人物が移動した姿なのか、それとも別なのか。画面で揺らぐ絵具の色味も美しい。ニュアンスに富んでいることが分かります。
押江千衣子「こだま」 2009年
レジデンスプログラムに参加した浅見貴子や押江千衣子も見逃せません。ともに樹木を素材にした作品。しかしながらアプローチは全く異なる。浅見は墨に日本画の技法、滲みを用いてのどこか抽象的ともいえる画面を表す。押江は瑞々しい油絵具の色彩が光る。鮮烈なグリーン。目に染みます。
ヤノベケンジ「幻燈夜会ー倉敷」(部分) 2010年
また大原家の別邸として知られる名建築、有隣荘のプログラムに参加したヤノベケンジの展示も見どころの一つではないでしょうか。もちろんかの和風建築を望むべくもなく、ここ武蔵美のホワイトキューブですが、暗室でのインスタレーションが独特の雰囲気を醸し出している。2010年に行われた「幻燈夜会」を一部再現します。中央には大きなガラス玉を抱えた龍のオブジェが鎮座する。そして放射線感知スーツを着た「トラやん」が数体取り囲んでいました。
町田久美「来客」 2006年
その他には松井えり菜に町田久美も出展。目利きという言葉はあまり相応しくないかもしれませんが、大原美術館の充実したコレクション。若手から既にキャリアを重ねた画家まで幅広い。なかなか楽しめました。
ヤノベケンジ「Sun Sister」 2014年
アトリウムにはヤノベケンジの「Sun Sister」(2014)が特別出品。関東では初めての公開、可動式の大掛かりなインスタレーションです。(所定の時間で動きます。)この作品のみ撮影も出来ました。
なお展示室1のジュン=グエン=ハツシバの映像作品ですが、少し場所が分かりにくいかもしれません。エントランスの外、正面に向かって左の部屋です。うっかりすると通り過ぎてしまいます。お見逃しなきようご注意下さい。
武蔵野美術大学
最後に美術館へのアクセスです。現地は東京西郊、小平に位置する武蔵野美術大学内の施設。最寄駅は西武国分寺線の鷹の台駅ですが、そこから歩いて20分弱。必ずしも行きやすいとは言えません。
私は国分寺駅北口より西武バスを利用しました。こちらは毎時3~4本、所要は20分。途中、やや道路が混み合う箇所もあり、実際には20分超かかりましたが、大学の門の前までバスで行くことが出来る。おそらく鷹の台駅から歩くよりはスムーズだと思います。*西武バス「国分寺駅北入口」時刻表
武蔵野美術大学図書館
また同美術館に隣接する図書館は藤本壮介の設計です。オープンは2010年。書棚を外観に取り込んだ独特のデザインが目を引く。一見の価値があります。
武蔵野美術大学図書館
図書館へは基本的に立ち入れませんが、外から見学するのはOK。ガラスの壁面に映り込むのは桜でしょうか。構内の木立を取り込む。個性的な構えに反して違和感なく周囲に溶け込んでいます。また外の窓からは内部も少し伺えました。場所は美術館のちょうど裏手です。お時間のある方は廻っても良いかもしれません。
会期中無休。無料です。8月17日まで開催されています。
「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:5月26日(月)~8月17日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~18:00
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約20分)
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