都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「並河靖之七宝展」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」
1/14〜4/9
東京都庭園美術館で開催中の「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」を見てきました。
雅やかでかつ艶やかな有線七宝が、アール・デコの室内空間を美しく彩っています。
チラシ表紙の「藤花花文花瓶」からして魅力的です。漆黒の空間を背景に藤の房がほぼ直列に垂れています。花弁の一つ一つも大変に細やかです。たんぽぽも咲いていました。開口部の装飾も華麗です。イギリスの写真家、ハーバード・ポンティングは、並河の七宝を前にして、「珠玉のような美術品」(解説より)と語ったそうですが、それを体現する作品と言えるのではないでしょうか。
その並河、実のところ相当に努力の人です。一朝一夕に七宝を大成させたわけではありません。
並河靖之「菊唐草文細首小花瓶」 並河靖之七宝記念館
例えば釉薬です。明治初期までは不透明なものが一般的でしたが、並河は研究を重ね、透明な釉薬を開発します。それによって際立ったグラデーションを付けることが可能となりました。
また七宝の技術も改良。常に最先端を志向したそうです。それでも一筋縄ではいきません。紆余曲折ということでしょうか。一時は製品の不出来により、輸出業者との契約を破棄される事態に陥ります。しかし並河は高品質の七宝を目指して精力的に制作。パリ万博で受賞するなど、海外の市場で成功を収めました。
基本的に2部構成です。本館1階はいわばハイライト。名品セレクションです。そして2階から新館に並河の作品が時間を追って展示されています。並河以前の七宝にも言及がありました。初期作は光沢がありません。以降は洗練の極みです。煌びやかな花鳥風月の世界が広がります。滑らかでひたすらに眩い。そして晩年に風景のモチーフが現れました。一転して静謐です。まるで幽玄な水墨画です。作風は時代によって変化しています。
並河工房 七宝下図「桜花蝶文皿」 並河靖之七宝記念館
並河は「ディレクター」(解説より)でした。七宝の制作に際しては、下絵を描き、線を加え、釉薬を調合する職人らの協同作業が重要となります。下絵の参照もありました。色の指定でしょうか。事細かに指示を与えています。下絵と七宝を見比べるのも面白いかもしれません。
360度の角度から鑑賞出来る七宝が多いのも嬉しいところです。並河は器全体で一つの場面を表現することに苦心しました。花が開き、蝶や鳥が舞い、蔦が絡み合う様子は、まさに日本の四季の景色そのものなのかもしれません。
並河靖之「花鳥図飾壷」 清水三年坂美術館
花の蕊、葉脈などの細密描写を肉眼で捉えるのは不可能です。よって有用なのが単眼鏡でした。何と今回、ビクセン社の単眼鏡を無料でレンタルすることが出来ます。受付はウエルカムルームです。先着50台の限定。身分証明書の提示が必要でした。
もちろん私も借りました。単眼鏡を覗いた先に開かれる万華鏡のような世界。その美しさに改めて見惚れました。
全100点弱。さらに下図が加わります。また清水三年坂美術館や並河靖之七宝記念館のほか、ヴィクトリア&アルバート美術館などの海外のコレクションもやって来ています。そもそも当時、七宝は9割が輸出用でした。つまり里帰りです。作品に不足はありません。
なお前回のボルタンスキー展は平日の撮影が可能でしたが、今回の七宝展は一切出来ません。ご注意下さい。
「明治の細密工芸:驚異の超絶技巧/別冊太陽/平凡社」
4月9日まで開催されています。
「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:1月14日(土)〜4月9日(日)
休館:第2・第4水曜日(1/25、2/8、2/22、3/8、3/22)
時間:10:00~18:00。
*但し3/24、3/25、3/26、4/1、4/2、4/7、4/8、4/9は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生880(700)円、中・高校生・65歳以上550(440)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」
1/14〜4/9
東京都庭園美術館で開催中の「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」を見てきました。
雅やかでかつ艶やかな有線七宝が、アール・デコの室内空間を美しく彩っています。
チラシ表紙の「藤花花文花瓶」からして魅力的です。漆黒の空間を背景に藤の房がほぼ直列に垂れています。花弁の一つ一つも大変に細やかです。たんぽぽも咲いていました。開口部の装飾も華麗です。イギリスの写真家、ハーバード・ポンティングは、並河の七宝を前にして、「珠玉のような美術品」(解説より)と語ったそうですが、それを体現する作品と言えるのではないでしょうか。
その並河、実のところ相当に努力の人です。一朝一夕に七宝を大成させたわけではありません。
並河靖之「菊唐草文細首小花瓶」 並河靖之七宝記念館
例えば釉薬です。明治初期までは不透明なものが一般的でしたが、並河は研究を重ね、透明な釉薬を開発します。それによって際立ったグラデーションを付けることが可能となりました。
また七宝の技術も改良。常に最先端を志向したそうです。それでも一筋縄ではいきません。紆余曲折ということでしょうか。一時は製品の不出来により、輸出業者との契約を破棄される事態に陥ります。しかし並河は高品質の七宝を目指して精力的に制作。パリ万博で受賞するなど、海外の市場で成功を収めました。
基本的に2部構成です。本館1階はいわばハイライト。名品セレクションです。そして2階から新館に並河の作品が時間を追って展示されています。並河以前の七宝にも言及がありました。初期作は光沢がありません。以降は洗練の極みです。煌びやかな花鳥風月の世界が広がります。滑らかでひたすらに眩い。そして晩年に風景のモチーフが現れました。一転して静謐です。まるで幽玄な水墨画です。作風は時代によって変化しています。
並河工房 七宝下図「桜花蝶文皿」 並河靖之七宝記念館
並河は「ディレクター」(解説より)でした。七宝の制作に際しては、下絵を描き、線を加え、釉薬を調合する職人らの協同作業が重要となります。下絵の参照もありました。色の指定でしょうか。事細かに指示を与えています。下絵と七宝を見比べるのも面白いかもしれません。
360度の角度から鑑賞出来る七宝が多いのも嬉しいところです。並河は器全体で一つの場面を表現することに苦心しました。花が開き、蝶や鳥が舞い、蔦が絡み合う様子は、まさに日本の四季の景色そのものなのかもしれません。
並河靖之「花鳥図飾壷」 清水三年坂美術館
花の蕊、葉脈などの細密描写を肉眼で捉えるのは不可能です。よって有用なのが単眼鏡でした。何と今回、ビクセン社の単眼鏡を無料でレンタルすることが出来ます。受付はウエルカムルームです。先着50台の限定。身分証明書の提示が必要でした。
もちろん私も借りました。単眼鏡を覗いた先に開かれる万華鏡のような世界。その美しさに改めて見惚れました。
【トークイベント「並河七宝の息をのむ美しさの秘密」】担当学芸員が熱い思いで調査を重ね、5年がかりで実現した「並河靖之七宝展」。展覧会に関わった学芸員3人が熱く語ります。2/18(土)14:00-、会場:新館ギャラリー2。詳細はこちら→https://t.co/WU3AZ1UbKG pic.twitter.com/iZzNhaVZfO
— 東京都庭園美術館 (@teienartmuseum) 2017年1月25日
全100点弱。さらに下図が加わります。また清水三年坂美術館や並河靖之七宝記念館のほか、ヴィクトリア&アルバート美術館などの海外のコレクションもやって来ています。そもそも当時、七宝は9割が輸出用でした。つまり里帰りです。作品に不足はありません。
なお前回のボルタンスキー展は平日の撮影が可能でしたが、今回の七宝展は一切出来ません。ご注意下さい。
「明治の細密工芸:驚異の超絶技巧/別冊太陽/平凡社」
4月9日まで開催されています。
「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:1月14日(土)〜4月9日(日)
休館:第2・第4水曜日(1/25、2/8、2/22、3/8、3/22)
時間:10:00~18:00。
*但し3/24、3/25、3/26、4/1、4/2、4/7、4/8、4/9は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生880(700)円、中・高校生・65歳以上550(440)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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