都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「エリザベス・ペイトン:Still life 静/生」 原美術館
原美術館
「エリザベス・ペイトン:Still life 静/生」
1/21~5/7

アメリカのペインター、エリザベス・ペイトンの日本初の個展が、品川の原美術館で開催されています。
ペイトンは1965年生まれ。90年代初頭に新具象派の画家としてデビューします。ひたすらに人を見据え、友人や歴史上の人物などのポートレートを描き続けました。
チラシ表紙の一枚は「眠るカート」。比較的キャリア初期の1995年の作品です。文字通りに眠りこける人の姿を表しています。ちょうど読書をしていたのでしょう。手元にはオレンジ色の本が置かれています。手は添えたままです。赤い服も目映い。反面に白い肌の色が際立ちます。タッチは実に流麗です。素早く動いては対象を写しています。色を塗るというよりも、筆を滑らせているとも言えるかもしれません。光沢感のある色彩です。油彩ですが、まるでガラス絵を見ているかのような透明感がありました。
モデルのカート・ドナルド・コバーンはミュージシャンです。1994年にショットガンで頭を撃ち抜いて自殺。衝撃的な最期を遂げました。眠りとは死のメタファーを意味するのかもしれません。その死を悼み、さも「聖人画」(解説より)のように表現しました。

エリザベス・ペイトン「ジョージア・オキーフ 1918年のスティーグリッツにならって」 2006年
ペイトンの作品にはミュージシャンらのアーティストが多く登場します。例えば「シドと母親」のモデルはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスです。ペイント自身が音楽に関心があるゆえでしょうか。またアーティストではジョージア・オキーフもモデルの一人です。黒のスーツ姿。洗練された着こなしです。やや上目遣いで彼方を見据えています。気高い。意志の強さを感じました。
近年はオペラも重要なモチーフです。切っ掛けはメトロポリタン歌劇場です。ワーグナーを題材とした作品の制作が依頼されます。ペイトンは早速、オペラを聴き込んでは、いつしかその魅力に惹かれていきました。
「クンドリ」はパルジファルの登場人物です。演じるのはヴァルトラウト・マイアー。クンドリのほか、ワーグナーの歌い手でも知られる世界的なメゾソプラノ歌手です。ドイツのテノール、ヨナス・カウフマンをモデルにした作品が多いのも印象的でした。ローエングリンやパルジファルを演じた一コマです。まるで舞台上のワンシーンをそのまま切り取ったかのように描いています。臨場感も十分です。ペイトンの視点は被写体に限りなく近づいています。対象への愛が滲み出ていると言えるかもしれません。
メディウム自体にも関心があるようです。油彩だけでなく、パステルに水彩、中には色鉛筆を用いて描いています。一部には塗り残しも利用しているのでしょうか。中には手すきの紙を使ったものもありました。

エリザベス・ペイトン「花、ベルリン」 2010年
線や筆触は繊細ではありますが、時に分厚く絵具をたらしこむなど、画肌に力強さがあるのも特徴です。また肖像だけでなく静物も美しい。「花、ベルリン」の艶やかな深紅には見惚れました。花弁の中からうっすらと白い光が放たれています。
色と線はさも自ら生動するようにして人物や花々を象っています。それが心地良い。実のところ、見る前は全く未知でしたが、また一つ、魅惑的な画家と出会うことが出来ました。

カタログは3月頃に完成するそうです。5月7日まで開催されています。
「エリザベス・ペイトン:Still life 静/生」 原美術館(@haramuseum)
会期:1月21日(土)~5月7日(日)
休館:月曜日。(但し祝日にあたる3月21日は開館)、3月22日は休館。
時間:11:00~17:00。*水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
*原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
*20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
「エリザベス・ペイトン:Still life 静/生」
1/21~5/7

アメリカのペインター、エリザベス・ペイトンの日本初の個展が、品川の原美術館で開催されています。
ペイトンは1965年生まれ。90年代初頭に新具象派の画家としてデビューします。ひたすらに人を見据え、友人や歴史上の人物などのポートレートを描き続けました。
チラシ表紙の一枚は「眠るカート」。比較的キャリア初期の1995年の作品です。文字通りに眠りこける人の姿を表しています。ちょうど読書をしていたのでしょう。手元にはオレンジ色の本が置かれています。手は添えたままです。赤い服も目映い。反面に白い肌の色が際立ちます。タッチは実に流麗です。素早く動いては対象を写しています。色を塗るというよりも、筆を滑らせているとも言えるかもしれません。光沢感のある色彩です。油彩ですが、まるでガラス絵を見ているかのような透明感がありました。
モデルのカート・ドナルド・コバーンはミュージシャンです。1994年にショットガンで頭を撃ち抜いて自殺。衝撃的な最期を遂げました。眠りとは死のメタファーを意味するのかもしれません。その死を悼み、さも「聖人画」(解説より)のように表現しました。

エリザベス・ペイトン「ジョージア・オキーフ 1918年のスティーグリッツにならって」 2006年
ペイトンの作品にはミュージシャンらのアーティストが多く登場します。例えば「シドと母親」のモデルはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスです。ペイント自身が音楽に関心があるゆえでしょうか。またアーティストではジョージア・オキーフもモデルの一人です。黒のスーツ姿。洗練された着こなしです。やや上目遣いで彼方を見据えています。気高い。意志の強さを感じました。
近年はオペラも重要なモチーフです。切っ掛けはメトロポリタン歌劇場です。ワーグナーを題材とした作品の制作が依頼されます。ペイトンは早速、オペラを聴き込んでは、いつしかその魅力に惹かれていきました。
「クンドリ」はパルジファルの登場人物です。演じるのはヴァルトラウト・マイアー。クンドリのほか、ワーグナーの歌い手でも知られる世界的なメゾソプラノ歌手です。ドイツのテノール、ヨナス・カウフマンをモデルにした作品が多いのも印象的でした。ローエングリンやパルジファルを演じた一コマです。まるで舞台上のワンシーンをそのまま切り取ったかのように描いています。臨場感も十分です。ペイトンの視点は被写体に限りなく近づいています。対象への愛が滲み出ていると言えるかもしれません。
【インタビュー】エリザベス・ペイトンの親密な肖像画。原美術館で個展開催中!https://t.co/D0PLya0eCg
— Casa BRUTUS (@CasaBRUTUS) 2017年2月7日
メディウム自体にも関心があるようです。油彩だけでなく、パステルに水彩、中には色鉛筆を用いて描いています。一部には塗り残しも利用しているのでしょうか。中には手すきの紙を使ったものもありました。

エリザベス・ペイトン「花、ベルリン」 2010年
線や筆触は繊細ではありますが、時に分厚く絵具をたらしこむなど、画肌に力強さがあるのも特徴です。また肖像だけでなく静物も美しい。「花、ベルリン」の艶やかな深紅には見惚れました。花弁の中からうっすらと白い光が放たれています。
色と線はさも自ら生動するようにして人物や花々を象っています。それが心地良い。実のところ、見る前は全く未知でしたが、また一つ、魅惑的な画家と出会うことが出来ました。

カタログは3月頃に完成するそうです。5月7日まで開催されています。
「エリザベス・ペイトン:Still life 静/生」 原美術館(@haramuseum)
会期:1月21日(土)~5月7日(日)
休館:月曜日。(但し祝日にあたる3月21日は開館)、3月22日は休館。
時間:11:00~17:00。*水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
*原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
*20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
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