「花粉と花粉症の科学」 国立科学博物館

国立科学博物館
「花粉と花粉症の科学」 
2016/12/23~2017/3/20



関東でも本格的な花粉飛散シーズンが始まりました。

私も花粉症です。毎年、2月半ばからGW前あたりまでは、日によって差はあるものの、終始、目のかゆみ、そして鼻水やくしゃみなどの症状に悩まされています。

しかし花粉自体は「種子植物にとっての重要な細胞」(解説より)です。確かにこの時期は憂鬱ですが、何も悪者扱いすれば良いわけでもありません。

花粉を科学する展覧会です。花粉の形態や機能、そして人間との関係から、花粉症のメカニズムや対象法などの研究成果を紹介しています。



花粉の誕生は遥か昔に遡ります。今から2億9千万年前です。古生代の末期に出現した裸子植物でした。そして白亜紀には被子植物が繁栄し、花や花粉も多様に進化していきます。



一言に花粉といえども形態は様々です。写真はミョウガ、アカマツ、ヒメガマの花粉の模型です。ヒメガマは実物の6000倍。襞のある球形をしています。さらに6倍もあるのがミョウガでした。アーモンドの形と言っても良いかもしれません。太い線が渦を巻いています。



当然のことながら、自ら花粉は運動出来ません。そこで重要なのが送粉形式です。風、虫、水、鳥などを介す必要があります。スギは風媒です。風で大量に花粉を飛ばします。この風媒花こそが花粉症の殆どの原因でした。



花粉は媒介する動物にとっての貴重な栄養源です。しかもバランスが良い。何でも一般的な組成が学校の給食と似ているそうです。タンパク質、糖質、皮質、水分やビタミン、ミネラルなどの全てを摂取出来ます。



自然科学の研究にも花粉は有用でした。例えば気候変動です。古い地層から採取した花粉を分析。現在の組成と比較することによって、気候データを推定することが出来ます。さらには花粉の化石から植生、また活断層の活動も分かるそうです。

人類が花粉の存在を知ったのは紀元前4世紀です。ギリシャの植物学者が記述を残しています。17世紀にはドイツの科学者が実証。以来、今に至るまで花粉の研究が続いてきました。



花粉は食べられます。古くは蜂蜜です。10グラム当たり5万粒もの花粉が入っています。さらに生薬としても利用。現在でも花粉団子やサプリメントのほか、花粉の粉を塗り込んだ冷麺なども販売されています。



さて後半です。ここからが花粉症でした。原因となる植物の標本がずらりと並んでいます。しかも花粉の電子顕微鏡画像付きです。見るだけで思わず鼻が痒くなってしまいました。



世界で初めて花粉症が報告されたのは1819年でした。場所はイギリスです。当時はイネ科の干草が原因とされたことから、枯草熱と名付けられました。一方、日本では1938年、菌類学者の今関六也が花粉熱を報告します。さらに1961年に荒木英斉がブタクサによる花粉症を発見。日本での展開は基本的に戦後です。のちにスギの症例も見つかりました。



日本ではスギやヒノキが一般的ですが、ヨーロッパではイネ、アメリカではブタクサの花粉症が多く見られます。その地域と原因の植物の関係についてのパネルがありました。「花粉症を引き起こす世界の植物」です。各植物のボタンを押すと発症地域が光り、各言語のクシャミが音声で表現されます。ハクション、アチュー、アチムなど、日、英、仏語などに対応しています。



ラストは対策です。まず花粉を生成、飛散、曝露、発症の4段階に分類。各々の対処法を提示しています。



まず生成の段階で挙げられるのが品種改良です。現在も対策が進み、既に関東では小花粉のスギ苗木が8割ほど使われているそうです。効果を発するまでには相当の時間がかかりますが、根本的な原因を断つのも必要かもしれません。



曝露、発症の段階では個人でも対応が可能です。マスク、メガネから、花粉対策コートや空気清浄機などの事例を紹介。マスクは必需品ですが、私の感覚では清浄機も効果的です。基本は室内へ花粉を持ち込まないことです。もちろん内服薬や目薬も欠かせません。



乳酸菌での体質改善についての言及もありました。どの程度の実効性があるのでしょうか。また遺伝子組換え技術によるコメで、花粉症を抑え込む研究も行われているそうです。人は将来、花粉症を克服することが出来るのでしょうか。


会場は日本館1階の企画展示室です。特別展ではありません。常設展の入館料のみで観覧出来ます。また花粉展について準拠したリーフレットも配布中です。全20ページ超と充実していました。花粉について詳しくなれることは間違いありません。



3月20日まで開催されています。

「花粉と花粉症の科学」 国立科学博物館
会期:2016年12月23日(金・祝)~2017年3月20日(月・祝)
休館:月曜日。但し12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)、3月20日(月・祝)は開館。年末年始(12月28日~1月1日)、及び1月10日(火)。
時間:9:00~17:00。
 *金曜・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生620(310)円、高校生以下・65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
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