都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「草間彌生 わが永遠の魂」 国立新美術館
国立新美術館
「草間彌生 わが永遠の魂」
2/22~5/22

国立新美術館で開催中の「草間彌生 わが永遠の魂」を見てきました。

ともかく入口先からして圧巻です。たくさんの絵画が広大な展示室の壁を所狭しと埋め尽くしています。その名こそ本展のタイトルでもある「わが永遠の魂」でした。

描き始めたのは2009年。多数が120号の正方形のキャンバスです。人の顔や動物などの具象的なモチーフと、抽象的なパターンを行き来させては、壮大なスケールの絵画世界を現出させています。草間は既に500点を完成。まだ制作が続いています。うち132点が揃いました。いずれも日本初公開でした。

色彩に多様、またモチーフは細微であり、時に大胆です。さらには有機性や抽象性云々など、連作を一言で括るのはもはや困難でした。率直なところ、この展示室に入った瞬間、うまく作品を受け止めることが出来ませんでした。多くの人が絵画を興味深げに覗き込んでいると同時に、作中の人らしきモチーフが、こちらを時に笑いながら見やっています。

ドット、ないしアメーバのような生き物は、キャンバスの中で繁殖、ないし増殖していました。自己生成を繰り返しているのでしょうか。際限がありません。思わず足がすくんでしまいました。

その「わが永遠の魂」に囲まれるのが立体作品です。「真夜中に咲く花」でした。草間得意の水玉に象られた花々です。まるで熱帯植物のように生命感に満ち溢れています。そして絵画に比べればやや親しみやすい。この空間を祝福するかのように咲き誇っていました。

さて展覧会の見どころは、何も近年の制作、つまり「わが永遠の魂」だけではありません。
会場は二部構成です。「わが永遠の魂」を一つとすれば、もう一方は草間の制作史でした。初期の1950年代からニューヨークでの滞在を経て、80年代以降、2000年頃までの活動を時代を踏まえて追っています。

「残夢」 1949年
「残夢」は20歳の頃の作品です。青い空と赤い地平。そこに植物とも人体とも形状のし難い何かが触手を伸ばしています。相応しい言葉ではないかもしれませんが、毒々しい。何やら魔物でも現れたかのようでした。

「太陽」 1953年 東京国立近代美術館
1950年代の「太陽」に水玉のドットが現れました。この頃から批評家の瀧口修造らに評価されます。何度か個展を開催しました。初期作品が網羅的です。あまり知られていない作品も多いかもしれません。

「The Man」 1963年 広島市現代美術館
ニューヨークへ渡った草間が最初に評価を受けたのがネットペインティングでした。小さな網目が画面を埋め尽くします。その網がドットのようにも見えました。そして突起物を家具などに貼り付けたソフト・スカルプチュアへと続きます。例えば「The Man」です。ニョキニョキとキノコのように生える突起物がヤカンを吊り下げています。一面の白でした。ともすると草間、鮮やかな色彩を特徴としますが、先のネットペインティングしかり、この時期はモノトーンの作品も少なくありません。
そして代名詞とも言えるかぼちゃも登場。草間は種苗業を営む家で育ちました。かぼちゃは身近な存在だったのでしょうか。かぼちゃの逞しさに魅せられたそうです。またハプニングのパフォーマンスでも一世を風靡します。ヒッピーカルチャーにも巻き込まれ、反戦や平和運動にも参加。「前衛の女王」と称されることもありました。代表作が映像の「草間の自己消滅」でした。何ともおどろおどろしい。草間が、植物や動物、さらに人間の全てを水玉で埋め尽くそうとしています。まるで儀式のようでした。

「黄樹」 1992年 フォーエバー現代美術館
1973年に体調を崩して帰国。入院生活を送りながら制作を続けます。70年代はやや小さなコラージュが目立ちました。イソギンチャクや鳥の目、それにナチスの国章などの多様なモチーフを取り込みます。いずれも内省的です。当時の心境、ないし体調が反映しているのでしょうか。また小説家としての活動にも言及がありました。さらに体験型インスタレーションの「ミラー・ルーム」や近年のコラボレーション作品へと展開します。ともかく草間の活動の領域は幅広い。シュールレアリスム、前衛、ミニマル、そしてポップへと新たな世界を切り開いています。
最後に会場内の情報です。早くも会期は1ヶ月以上経過。当初より人出が増しています。平日でもチケットの購入のための待ち時間が発生。土日を中心に入場への待機列も出来ています。
よって金曜の夜間開館を利用することにしました。乃木坂駅に到着したのは3月31日の18時30分前。券売所にも会場入口にも列はありませんでした。

写真は19時半前の状況です。草間展は「わが永遠の魂」のほか、ロビーの「オブリタレーションルーム」、そして野外の「南瓜」の展示については、携帯電話、およびスマートフォンでのみ撮影が可能です。カメラでの撮影は出来ません。

一通り、ほかの展示を見終え、再び「わが永遠の魂」のコーナーに来ると、入場時より人が減っていました。この日の最終入館は19時半です。係の方によればやはり金曜の夜間が一番空いているとのことでした。やはり狙い目は夜間開館のようです。

ちなみに券売所はミュシャ展と共通です。事前にコンビニやオンラインで確保しておくのが良さそうです。

「オブリタレーションルーム」 2002年〜現在
ロビーの「オブリタレーションルーム」は参加型のインスタレーションでした。入場時に半券を提示すると、一人一枚、水玉のシールがもらえます。それを部屋の中の好きなところに貼ることが出来ます。ただしシールの持ち帰りは許されません。
元は白一色のリビングルームだったそうです。しかしながらご覧の通り、もはや余白が探すのが難しいほどにシールで埋もれていました。オブリタレーションとは自己消滅です。確かに水玉のシールで壁も椅子もテーブルも消えていました。

「南瓜」 2007年 フォーエバー現代美術館
かぼちゃの巨大なオブジェが乃木坂方向の野外展示場に設置されています。こちらは観覧無料です。スマホを片手に記念撮影を楽しんでいる方も目立ちました。
「芸術新潮2017年4月号/草間彌生/新潮社」
草間の創作は未だ衰えることはありません。そのエネルギッシュな作品群に圧倒されました。

5月22日まで開催されています。おすすめします。
「国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂」(@kusama2017) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2月22日(水)~5月22日(月)
休館:火曜日。但し5月2日(火)は開館。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日は20時まで開館。
*4月29日(土)~5月7日(日)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
*3月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)は高校生無料観覧日。(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
「草間彌生 わが永遠の魂」
2/22~5/22

国立新美術館で開催中の「草間彌生 わが永遠の魂」を見てきました。

ともかく入口先からして圧巻です。たくさんの絵画が広大な展示室の壁を所狭しと埋め尽くしています。その名こそ本展のタイトルでもある「わが永遠の魂」でした。

描き始めたのは2009年。多数が120号の正方形のキャンバスです。人の顔や動物などの具象的なモチーフと、抽象的なパターンを行き来させては、壮大なスケールの絵画世界を現出させています。草間は既に500点を完成。まだ制作が続いています。うち132点が揃いました。いずれも日本初公開でした。

色彩に多様、またモチーフは細微であり、時に大胆です。さらには有機性や抽象性云々など、連作を一言で括るのはもはや困難でした。率直なところ、この展示室に入った瞬間、うまく作品を受け止めることが出来ませんでした。多くの人が絵画を興味深げに覗き込んでいると同時に、作中の人らしきモチーフが、こちらを時に笑いながら見やっています。

ドット、ないしアメーバのような生き物は、キャンバスの中で繁殖、ないし増殖していました。自己生成を繰り返しているのでしょうか。際限がありません。思わず足がすくんでしまいました。

その「わが永遠の魂」に囲まれるのが立体作品です。「真夜中に咲く花」でした。草間得意の水玉に象られた花々です。まるで熱帯植物のように生命感に満ち溢れています。そして絵画に比べればやや親しみやすい。この空間を祝福するかのように咲き誇っていました。

さて展覧会の見どころは、何も近年の制作、つまり「わが永遠の魂」だけではありません。
会場は二部構成です。「わが永遠の魂」を一つとすれば、もう一方は草間の制作史でした。初期の1950年代からニューヨークでの滞在を経て、80年代以降、2000年頃までの活動を時代を踏まえて追っています。

「残夢」 1949年
「残夢」は20歳の頃の作品です。青い空と赤い地平。そこに植物とも人体とも形状のし難い何かが触手を伸ばしています。相応しい言葉ではないかもしれませんが、毒々しい。何やら魔物でも現れたかのようでした。

「太陽」 1953年 東京国立近代美術館
1950年代の「太陽」に水玉のドットが現れました。この頃から批評家の瀧口修造らに評価されます。何度か個展を開催しました。初期作品が網羅的です。あまり知られていない作品も多いかもしれません。

「The Man」 1963年 広島市現代美術館
ニューヨークへ渡った草間が最初に評価を受けたのがネットペインティングでした。小さな網目が画面を埋め尽くします。その網がドットのようにも見えました。そして突起物を家具などに貼り付けたソフト・スカルプチュアへと続きます。例えば「The Man」です。ニョキニョキとキノコのように生える突起物がヤカンを吊り下げています。一面の白でした。ともすると草間、鮮やかな色彩を特徴としますが、先のネットペインティングしかり、この時期はモノトーンの作品も少なくありません。
そして代名詞とも言えるかぼちゃも登場。草間は種苗業を営む家で育ちました。かぼちゃは身近な存在だったのでしょうか。かぼちゃの逞しさに魅せられたそうです。またハプニングのパフォーマンスでも一世を風靡します。ヒッピーカルチャーにも巻き込まれ、反戦や平和運動にも参加。「前衛の女王」と称されることもありました。代表作が映像の「草間の自己消滅」でした。何ともおどろおどろしい。草間が、植物や動物、さらに人間の全てを水玉で埋め尽くそうとしています。まるで儀式のようでした。

「黄樹」 1992年 フォーエバー現代美術館
1973年に体調を崩して帰国。入院生活を送りながら制作を続けます。70年代はやや小さなコラージュが目立ちました。イソギンチャクや鳥の目、それにナチスの国章などの多様なモチーフを取り込みます。いずれも内省的です。当時の心境、ないし体調が反映しているのでしょうか。また小説家としての活動にも言及がありました。さらに体験型インスタレーションの「ミラー・ルーム」や近年のコラボレーション作品へと展開します。ともかく草間の活動の領域は幅広い。シュールレアリスム、前衛、ミニマル、そしてポップへと新たな世界を切り開いています。
最後に会場内の情報です。早くも会期は1ヶ月以上経過。当初より人出が増しています。平日でもチケットの購入のための待ち時間が発生。土日を中心に入場への待機列も出来ています。
よって金曜の夜間開館を利用することにしました。乃木坂駅に到着したのは3月31日の18時30分前。券売所にも会場入口にも列はありませんでした。

写真は19時半前の状況です。草間展は「わが永遠の魂」のほか、ロビーの「オブリタレーションルーム」、そして野外の「南瓜」の展示については、携帯電話、およびスマートフォンでのみ撮影が可能です。カメラでの撮影は出来ません。

一通り、ほかの展示を見終え、再び「わが永遠の魂」のコーナーに来ると、入場時より人が減っていました。この日の最終入館は19時半です。係の方によればやはり金曜の夜間が一番空いているとのことでした。やはり狙い目は夜間開館のようです。

ちなみに券売所はミュシャ展と共通です。事前にコンビニやオンラインで確保しておくのが良さそうです。

「オブリタレーションルーム」 2002年〜現在
ロビーの「オブリタレーションルーム」は参加型のインスタレーションでした。入場時に半券を提示すると、一人一枚、水玉のシールがもらえます。それを部屋の中の好きなところに貼ることが出来ます。ただしシールの持ち帰りは許されません。
【「オブリタレーションルーム」タイムラプス動画!】真っ白な部屋に鑑賞者が水玉シールを貼りどんどん変化する様子を定点撮影、早回しの動画にしました! 撮影期間は2/22~27です。 #草間彌生 #わが永遠の魂https://t.co/aV8u2zotOD pic.twitter.com/hPmientILV
— 「草間彌生 わが永遠の魂」展(公式) (@kusama2017) 2017年3月9日
元は白一色のリビングルームだったそうです。しかしながらご覧の通り、もはや余白が探すのが難しいほどにシールで埋もれていました。オブリタレーションとは自己消滅です。確かに水玉のシールで壁も椅子もテーブルも消えていました。

「南瓜」 2007年 フォーエバー現代美術館
かぼちゃの巨大なオブジェが乃木坂方向の野外展示場に設置されています。こちらは観覧無料です。スマホを片手に記念撮影を楽しんでいる方も目立ちました。

草間の創作は未だ衰えることはありません。そのエネルギッシュな作品群に圧倒されました。

5月22日まで開催されています。おすすめします。
「国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂」(@kusama2017) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2月22日(水)~5月22日(月)
休館:火曜日。但し5月2日(火)は開館。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日は20時まで開館。
*4月29日(土)~5月7日(日)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
*3月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)は高校生無料観覧日。(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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