都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿
法隆寺夢殿
「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」
4/11~5/18
「救世観音菩薩立像」の春の特別公開が法隆寺の夢殿で行われています。
八角の円堂でも知られる夢殿が位置するのは東院伽藍です。739年、僧の行信が聖徳太子一族の住居であった斑鳩宮の跡に建てました。夢殿も同時期の建築です。鎌倉時代の修理により、当初の様式は一部変えられましたが、既に8世紀の頃から夢殿と呼ばれてきました。
「救世観音菩薩立像」は夢殿の本尊です。造仏の推定年代は飛鳥時代です。ただ良く知られるように、非常に長きに渡り、秘仏とされていたため、人の目に触れることがありませんでした。江戸時代に至っては僧侶さえ拝むことがなかったとも伝えられています。
転機は明治時代です。美術史家のアーネスト・フェノロサは研究のために法隆寺を訪問。「救世観音菩薩立像」を納めた厨子の開帳を迫ります。しかし寺は拒絶。一説では僧侶は「救世観音菩薩立像」は聖徳太子の等身であるのため、封印を解けば、罰が下ると信じていたそうです。しかしフェノロサの意見が通ります。厨子は解かれました。仏像は木綿の白い布でぐるぐる巻きにされていました。
以来、いつしか法隆寺では期間を限定して夢殿を開帳。現在では春の秋の各1ヶ月間のみ「救世観音菩薩立像」を公開しています。
夢殿だけの拝観も可能です。ただこの日は西院伽藍、大宝蔵院、そして夢殿の全てを巡ることにしました。
西院伽藍の中門は長期修理中です。伽藍内を取り囲む回廊の先には大講堂があり、回廊内の左に五重塔、そして右に金堂が建っています。中門、五重塔、金堂は飛鳥時代、回廊は奈良時代、大講堂は平安時代の建築です。いわゆる現存する世界最古の木造建築物として知られています。
回廊のエンタシス様式の柱が目を引きます。柱の中央より下部がやや太くなっていました。かつては古代ギリシャの神殿にも用いられた技法です。国内でも珍しい。法隆寺内でもこの回廊のみにしか使われていません。
金堂の内部に安置されるのがいわゆる本尊こと「釈迦三尊像」です。銘によれば鞍作止利の作。飛鳥時代の仏像です。飛鳥仏らしい面長の顔をしています。また日本最古の「四天王像」のも静かな佇まいを見せていました。
金堂から五重塔の内部を見学した後は、回廊から東へ抜け、東室、綱封蔵、食堂のある方向へ歩きました。いずれも奈良時代の建築物です。東室はかつての僧房でした。綱封蔵は文字通りの蔵です。寺宝などが保管されていました。食堂はもともと寺務所だったそうです。それが平安時代に食堂として使われるようになりました。
大宝蔵院がまさしくお宝尽しです。「玉虫厨子」や「夢違観音像」などはじめ、「百済観音」などの寺宝が展示されています。とりわけすらりと立つ「百済観音」の姿が美しい。8頭身で極めて華奢です。右腕をほぼ直角に曲げて立っています。もはや幽玄です。飛鳥時代の作とされていますが、伝来は不明。いつどこから法隆寺に納められたも分かっていません。
西院伽藍、大宝蔵院からさらに東院伽藍へ。目的地は「救世観音菩薩立像」の安置されている夢殿です。
大宝蔵院より数分。夢殿に到着しました。実は私も法隆寺は何度か訪ねたことがあり、夢殿の建物は見学したことはありますが、中を拝むのは初めてでした。
「救世観音菩薩立像」
「救世観音菩薩立像」はお堂の正面を向いて安置されています。事前に「中が暗いのでよく見えない。」と聞いていましたが、たまたま晴れていたからか、思ったよりも明るく感じました。飛鳥仏にも関わらず、金色の輝きを失ってはいません。表情は随分、穏やかでした。「救世観音菩薩立像」というと、土門拳の写真など、やや不気味なイメージもあるやもしれませんが、そうした様相は殆ど感じられません。素朴です。にこりと笑みとたたえています。風に吹かれて気持ち良さそうでした。
団体客などの多客時は混雑することもあるそうですが、この日は特段の行列なども一切ありませんでした。ほかの方を気にすることなく、じっくりと拝めました。
最後は夢殿の裏手の中宮寺へ回り、「半跏思惟像」も拝観してきました。同像は現地だけでなく、東京国立博物館の特別展などでも拝む機会がありましたが、不思議と凝った照明などの設営がない中宮寺での姿が最も美しく見えます。あるべき場所でのあるべき姿を目に焼き付けては斑鳩を後にしました。
夢殿のご開帳は毎年春と秋の2回です。以下のスケジュールで公開されます。
春の公開:4月11日~5月18日
秋の公開:10月22日~11月22日
「救世観音菩薩立像」の春の特別公開は5月18日まで開催されています。
「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿
会期:4月11日(火)~5月18日(木)
休館:会期中無休。
時間:8:00~17:00
拝観料:一般1500円、小学生750円。
*団体料金(30名以上):一般1200円、大学・高校生1050円、中学生900円、小学生600円。
*西院伽藍、大宝蔵院、東院伽藍共通。
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1
交通:JR法隆寺駅より奈良交通バス「法隆寺門前」行きに乗り約10分。法隆寺門前下車すぐ。
「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」
4/11~5/18
「救世観音菩薩立像」の春の特別公開が法隆寺の夢殿で行われています。
八角の円堂でも知られる夢殿が位置するのは東院伽藍です。739年、僧の行信が聖徳太子一族の住居であった斑鳩宮の跡に建てました。夢殿も同時期の建築です。鎌倉時代の修理により、当初の様式は一部変えられましたが、既に8世紀の頃から夢殿と呼ばれてきました。
「救世観音菩薩立像」は夢殿の本尊です。造仏の推定年代は飛鳥時代です。ただ良く知られるように、非常に長きに渡り、秘仏とされていたため、人の目に触れることがありませんでした。江戸時代に至っては僧侶さえ拝むことがなかったとも伝えられています。
転機は明治時代です。美術史家のアーネスト・フェノロサは研究のために法隆寺を訪問。「救世観音菩薩立像」を納めた厨子の開帳を迫ります。しかし寺は拒絶。一説では僧侶は「救世観音菩薩立像」は聖徳太子の等身であるのため、封印を解けば、罰が下ると信じていたそうです。しかしフェノロサの意見が通ります。厨子は解かれました。仏像は木綿の白い布でぐるぐる巻きにされていました。
以来、いつしか法隆寺では期間を限定して夢殿を開帳。現在では春の秋の各1ヶ月間のみ「救世観音菩薩立像」を公開しています。
夢殿だけの拝観も可能です。ただこの日は西院伽藍、大宝蔵院、そして夢殿の全てを巡ることにしました。
西院伽藍の中門は長期修理中です。伽藍内を取り囲む回廊の先には大講堂があり、回廊内の左に五重塔、そして右に金堂が建っています。中門、五重塔、金堂は飛鳥時代、回廊は奈良時代、大講堂は平安時代の建築です。いわゆる現存する世界最古の木造建築物として知られています。
回廊のエンタシス様式の柱が目を引きます。柱の中央より下部がやや太くなっていました。かつては古代ギリシャの神殿にも用いられた技法です。国内でも珍しい。法隆寺内でもこの回廊のみにしか使われていません。
金堂の内部に安置されるのがいわゆる本尊こと「釈迦三尊像」です。銘によれば鞍作止利の作。飛鳥時代の仏像です。飛鳥仏らしい面長の顔をしています。また日本最古の「四天王像」のも静かな佇まいを見せていました。
金堂から五重塔の内部を見学した後は、回廊から東へ抜け、東室、綱封蔵、食堂のある方向へ歩きました。いずれも奈良時代の建築物です。東室はかつての僧房でした。綱封蔵は文字通りの蔵です。寺宝などが保管されていました。食堂はもともと寺務所だったそうです。それが平安時代に食堂として使われるようになりました。
大宝蔵院がまさしくお宝尽しです。「玉虫厨子」や「夢違観音像」などはじめ、「百済観音」などの寺宝が展示されています。とりわけすらりと立つ「百済観音」の姿が美しい。8頭身で極めて華奢です。右腕をほぼ直角に曲げて立っています。もはや幽玄です。飛鳥時代の作とされていますが、伝来は不明。いつどこから法隆寺に納められたも分かっていません。
西院伽藍、大宝蔵院からさらに東院伽藍へ。目的地は「救世観音菩薩立像」の安置されている夢殿です。
大宝蔵院より数分。夢殿に到着しました。実は私も法隆寺は何度か訪ねたことがあり、夢殿の建物は見学したことはありますが、中を拝むのは初めてでした。
「救世観音菩薩立像」
「救世観音菩薩立像」はお堂の正面を向いて安置されています。事前に「中が暗いのでよく見えない。」と聞いていましたが、たまたま晴れていたからか、思ったよりも明るく感じました。飛鳥仏にも関わらず、金色の輝きを失ってはいません。表情は随分、穏やかでした。「救世観音菩薩立像」というと、土門拳の写真など、やや不気味なイメージもあるやもしれませんが、そうした様相は殆ど感じられません。素朴です。にこりと笑みとたたえています。風に吹かれて気持ち良さそうでした。
団体客などの多客時は混雑することもあるそうですが、この日は特段の行列なども一切ありませんでした。ほかの方を気にすることなく、じっくりと拝めました。
最後は夢殿の裏手の中宮寺へ回り、「半跏思惟像」も拝観してきました。同像は現地だけでなく、東京国立博物館の特別展などでも拝む機会がありましたが、不思議と凝った照明などの設営がない中宮寺での姿が最も美しく見えます。あるべき場所でのあるべき姿を目に焼き付けては斑鳩を後にしました。
夢殿のご開帳は毎年春と秋の2回です。以下のスケジュールで公開されます。
春の公開:4月11日~5月18日
秋の公開:10月22日~11月22日
「救世観音菩薩立像」の春の特別公開は5月18日まで開催されています。
「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿
会期:4月11日(火)~5月18日(木)
休館:会期中無休。
時間:8:00~17:00
拝観料:一般1500円、小学生750円。
*団体料金(30名以上):一般1200円、大学・高校生1050円、中学生900円、小学生600円。
*西院伽藍、大宝蔵院、東院伽藍共通。
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1
交通:JR法隆寺駅より奈良交通バス「法隆寺門前」行きに乗り約10分。法隆寺門前下車すぐ。
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