「松岡コレクション 美しい人びと」 松岡美術館

松岡美術館
「松岡コレクション 美しい人びと」
1/24~5/14



加島美術の回顧展で話題を集めた渡辺省亭の作品が、松岡美術館でも展示されています。

「孤高の神絵師 渡辺省亭」 加島美術(はろるど)

それが「松岡コレクション 美しい人びと」です。全て同館の所蔵品です。計5点でした。


渡辺省亭「桜にやまどりの図」

まずは「桜にやまどりの図」です。上から垂れる桜の枝にやまどりが止まっています。枝は薄い墨で表現しているのでしょうか。滲みや塗り残しを用いて即興的に描いています。一方でのやまどりの羽は緻密です。僅かにワイン色を帯びています。さらに脚も写実性が高い。立体的な表現は西洋画を摂取しているからかもしれません。


渡辺省亭「藤花游鯉之図」

「藤花游鯉之図」も佳品でした。藤が白い花をたくさん咲かせています。そしてやはり即興的なツタが絡んでいました。その下で泳ぐのが鯉です。全部で5匹。上下に群れていました。


「特別展示 渡辺省亭」会場風景

ほかは「寒菊図」と「青梅に雀の図」に「游鯉図」の3点です。青梅の色彩も瑞々しい。いずれも充実していました。

さて「美しい人びと」の見どころは省亭だけではありません。清方、深水、松園、伊藤小坡の美人画がまとまって展示されています。


伊藤小坡「ほととぎす」 1941年

あえて主役に挙げたいのが伊藤小坡です。「ほとどぎす」が魅惑的でした。雨上がりでしょうか。傘を閉じて立つ女性が立っています。後方の空を見上げていました。口が僅かに開いています。しかし視線の先には何もありません。一体、何を見ているのでしょうか。

白い花が重要です。この卯の花こそが奈良の時代からほととぎすともに和歌に詠まれてきました。それを小坡は表現しています。つまり女性はほとどぎすの鳴き声に反応しているわけです。何と心憎い演出ではないしょうか。卯の花でほととぎすの存在を暗示させています。鳴き声が画中から響いてくるかのようでした。


伊藤小坡「秋の夕」

さらに「秋の夕」も美しい。藤色の着物を着た女性が簾越しに立っています。藤袴が足元で咲いていました。とすれば季節は夏の終わりから秋の初めの頃かもしれません。夕涼みでしょうか。扇子を持っては涼しげな様子を見せています。小坡は制作に際し、上村松園の「夕べ」に倣いました。何でも松園画の寸法までを研究しつつ、藤袴や帯の柄などを僅かに変えて表現したそうです。確かに松園の画風を見ることが出来ます。


上村松園「春宵」 1936年

その松園では「春宵」が出ていました。桜の花びらの舞う中、1人の女性がもう1人の女性に耳打ちしています。首に手を当てては楽しそうです。そして身をやや屈めては聞き入る女性もゆとりが感じられます。頬は僅かに赤い。気位の高さを思わせます。これぞ美人画の名手、松園ならではの作品と言えるのではないでしょうか。

さて現在の松岡美術館のコレクションは3本立てです。「美しい人びと」のほかに、「松岡清次郎が愛した画家たち」と「館蔵 東洋陶磁展」が行われています。


「松岡清次郎が愛した画家たち」展示風景

松岡清次郎は同館の創設者です。上野の公募団体展に通っては気に入った作品を収集しました。うち松岡が最晩年に収蔵した4名の画家を紹介。一部には白金台では初公開の作品も含みます。


「館蔵 東洋陶磁展」展示風景

「館蔵 東洋陶磁展」も充実していました、日本、中国、朝鮮からベトナムの陶磁器がおおよそ50点ほど展示されています。


「色絵岩牡丹図皿」 江戸時代 17〜18世紀

「色絵岩牡丹図皿」は鍋島です。輪郭を染付で描き、彩色で牡丹を表します。青い染付と牡丹の紅、ないし白のコントラストも美しい。典雅な世界が広がっています。


「五彩花籠図瓶」 明時代(1573〜1620)

中国の景徳鎮の「五彩花籠図瓶」も華やかです。色とりどりの草花が表現されています。まるで万華鏡の中を覗き込んでいるかのようでした。


「古代東洋彫刻」展示風景

さらに1階ではおなじみのエジプトからインド、中国にガンダーラの彫刻作品もずらりと並んでいます。実のところ、数年ぶりに松岡美術館に行きましたが、その層の厚いコレクションに改めて感心させられました。


館内の全ての撮影が可能です。ただし携帯電話やフラッシュ、またシャッター音の鳴るスマートフォンでは撮影出来ません。スマートフォンに関してはいわゆる消音のアプリを使用する必要があります。ご注意下さい。



お庭の桜も見事でした。5月14日まで開催されています。

「松岡コレクション 美しい人びと」 松岡美術館@matsu_bi
会期:1月24日(火)~5月14日(日)
休館:月曜日。但し祝日の場合は翌平日。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800円、65歳以上700円、大学・高校・中学生500円。
 *20名以上の団体は各100円引。
住所:港区白金台5-12-6
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金台1番出口から徒歩7分。
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