「届かない場所 高松明日香展」 三鷹市美術ギャラリー

三鷹市美術ギャラリー
「届かない場所 高松明日香展」 
8/11~10/22



画家の高松明日香による、都内初の大規模な個展が、三鷹市美術ギャラリーにて開催されています。

主たるモチーフは「身近な風景や映画のワンシーン」です。アクリル画の作品、全27シリーズが出展されていました。

シリーズとするには理由があります。というのも、1点が1つの作品、つまり1枚のキャンバスではないからです。


「呼び声」 2017年

例えば「呼び声」です。大小で7枚あるキャンバスを、1つの作品としてまとめて展示しています。まず目を引くのは、牡蠣などの殻の散乱する中、レモンを切る人物を捉えた場面でした。ほかにも毛皮、動物の群れ、さらにはシャンデリア風の花や、少女が地面に手をつく光景などが描かれています。人物、風景を問わず、モチーフも多様です。一見するところ、各々には明確な関連性は伺えません。

実際、一連の作品は、過去に高松が別々に描いたもので、今回の個展の際し、自らの選定で27通りに組み合わせました。音楽のリミックスに近いかもしれません。


「はやすぎて」 2017年

とは言え、不思議と何らかのストーリーが進行しているように感じられるのが面白いところです。まるで複数の物語を断片的に絵画に置き換えているかのようでした。それらを自由に紡ぎながら、物語を作り上げていくのも良いかもしれません。


「青く光る」 2017年

しばらく見ていると、作品同士の同質性に目が向いている自分に気がつきました。氷山を捉えた「青く光る」はほぼ同一のモチーフと呼んでも差し支えありません。海に浮かぶ巨大な氷山の一大パノラマが広がっていました。


「動き出す」 2017年

さらに「動き出す」では、同じ人物が明らかに別のパネルに描かれています。これぞ映画のワンシーンなのでしょうか。少年らが海に向かって走り出していました。中には1人の少年の後ろ姿だけをクローズアップした作品もありました。場面、時間の関係こそ明らかではありませんが、映像的な動きも感じられるのではないでしょうか。


「私しか」 2017年

「不死身」や「照応」、「たったひとつの」や「私しか」などのタイトルも、どこか詩的な物語をイメージを喚起させるかもしれません。1点目の「ここではない」から27点目の「触れる」までのタイトルが、一編の散文詩のように繋がっていきます。2巡、3巡するうちに、絵画世界の中にどっぷりと入り込むことが出来ました。


「弟のため池」(部分) 2017年

「高松明日香は、描かれていない、画面の外に広がる世界をこそ描きたいと思ったのかもしれません。しかしそのトリミングを多用した画面は、結果的にそれ以上のことを見るものに予感させます。」(展覧会公式サイトより)

「画面の外」の世界は鑑賞者の想像力に委ねられているのかもしれません。これほど絵から様々な物語を思い起こされたのも久しぶりでした。


「かっさらい」 2017年

人気投票のコーナーがありました。気に入った1つの作品をシールで投票出来ます。私は作品番号12の「かっさらい」を選びました。とあるサングラスをかけた若い男の物語です。ふと思い立っては愛車に乗り、ガソリンスタンドに寄っては、夜の海へドライブする情景を空想しました。横になって酒を飲んでいるのは帰宅した後かもしれません。氷を手にしているのはロックで楽しむためのものでしょうか。色々と物語が膨らみました。


「届かない場所 高松明日香展」会場風景

柔らかでざわついた筆触と、青みを帯びた色彩感覚も魅惑的でした。確かに写実的ではありますが、細部はかなり大胆に表現しています。


撮影も可能です。10月22日まで開催されています。

「届かない場所 高松明日香展」 三鷹市美術ギャラリー
会期:8月11日(金・祝)~10月22日(日)
休館:月曜日。但し9/18、10/9は開館。9/19、10/10は休館。
時間:10:00~20:00(入館は30分前まで)
料金:一般600円、65歳以上・大学・高校生300円。中学生以下無料。
住所:東京都三鷹市下連雀3-35-1 CORAL(コラル)5階
交通:JR線三鷹駅南口デッキと直結。徒歩1分。
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