都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「テオ・ヤンセン展」 三重県立美術館
三重県立美術館
「テオ・ヤンセン展」
7/15~9/18
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三重県立美術館で開催中の「テオ・ヤンセン展」を見てきました。
オランダ出身の彫刻家、テオ・ヤンセンは、「ストランドビースト」と呼ばれる造形物を作り、世界各地にて活動し続けています。
さて人工生命体とも称される「ストランドビースト」とは如何なる存在なのでしょうか。
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「アニマリス・ユメラス・セグンダス」 スイシディーム期 2009〜2011年
その1つが「アニマリス・ユメラス・セグンダス」です。高さは3メートル弱、横幅12メートルほどの構造物で、プラスチックのチューブを複雑に組み合わせて制作しています。チューブ同士の接続部には結束バンドなども用いられ、一部にはペットボトルも使われていました。恐竜の骨格のようにも見えるのではないでしょうか。実際、ヤンセンは、これらを生き物と位置づけ、独自の体系に基づき、多様に進化したストランドビーストを生み出しました。
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「ストランドビースト進化系統樹」(パネル)
その世界観が徹底しています。例えば「アニマリス・ユメラス・セグンダス」が作られたのは、スイシディーム期と呼ぶ、2009年から2011年にあたります。ヤンセンは、初期作の1990年をグルトン期、その後の1991年から1993年の間をコルダ期、さらに1993年から1994年をカリダム期とするなど、いわば地質年代まで構築した上、各々のストランドビーストの進化形態を位置付けているわけです。
また「ユメラス」とはラテン語で肩を意味します。ヤンセンは接合部、すなわち「肩にある風を、圧縮空気にして、貯め込んだ筋肉が動き出して歩行を行う」(解説より)駆動システムを作り上げました。
これほどの大きな構造物です。俄かに空気だけで動くとは信じられません。そこで映像です。ご覧の通り、確かに風を受けて「アニマリス・ユメラス・セグンダス」が歩行しています。まさに新たな生命体が砂浜に上陸したかのようでした。
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「アニマリス・ユメラス・セグンダス」(部分) スイシディーム期 2009〜2011年
なお展示品は何も模造ではなく、現実に歩行した作品です。よって細部を見ると、おそらくは浜で浴びたであろう砂がたくさん付いていました。チューブは時に汚れ、また動きによる歪みなども見られます。これぞビーストの生きている証なのかもしれません。
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「アニマリス・シアメシス」 スイシディーム期 2009〜2011年
現存する最大級のビーストが「アニマリス・シアメシス」でした。重さは約250キログラムにも及びます。「シアメシス」とは2つの類似した部分が結合していることを指し、実際に2頭のビーストが接合されていました。脚は全部で72もあり、その全てがプラスチックで作られているそうです。先の「アニマリス・ユメラス・セグンダス」と同様に、風で命が吹き込まれ、歩くことが出来ます。
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「アニマリス・アポディアキュラ」 アウルム期 2013〜2015年
まるで帆船のように美しいのが「アニマリス・アポディアキュラ」でした。比較的近年のアウルム期、つまり2013年から2015年の間の作品で、突き梁と呼ばれるアウトリガーを初めてつけたビーストでした。これにより強風によって倒れない安定性を身につけたそうです。
現在は化石です。ようは動きません。しかし構造はさらに新たなビーストへと受け継がれます。これぞ進化と言ったところなのかもしれません。
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「アニマリス・トゥルゼンティア・ヴェーラ」 アウルム期 2013〜2015年
風を受けるための帆もビーストにとって重要なパーツの1つです。「アニマリス・トゥルゼンティア・ヴェーラ」も帆をつけたビーストでした。「トゥルゼンティア・ヴェーラ」の名は膨らむ帆を意味します。帆は全部で3枚あり、全てが可変で、秒速4メートルほどの風で動くことも可能です。先の「アニマリス・アポディアキュラ」より引き継いだアウトリガーを装着することで、強い風でも倒れずに推進出来るようになりました。
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「アニマリス・プロボシス」 アウルム期 2013〜2015年
ちょうどビーストの一部を動かすデモンストレーションが行われていました。2体1組の「アニマリス・プロボシス」です。ラテン語で「鼻」を意味し、その鼻のみが上下左右に動きます。
手元のスマホでかつ後方からの観覧のため、手振れが多くて恐縮ですが、ビーストの動く姿を撮影しました。思いがけないほど機敏に動きます。またどこか人懐っこくも見えるのではないでしょうか。将来的にヤンセンは、ビースト同士にコミュニケーションの機能を持たせることを考えているそうです。そのアイデアは留まることを知りません。
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「プラスチックチューブを加工するための木型」
会場内は新作を含むストランドビーストを約10体のほか、解説模型やスケッチ、パーツなども展示しています。一部は触れることも可能でした。
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「アニマリス・オルディス」 セレブラム期 2006〜2008年 *手押し可能
さらに実際に手で動かせるビーストもありました。まさに見て、触って、ヤンセンの世界観を体感出来るのではないでしょうか。
お盆休み前の平日に行きましたが、会場内はファミリーで賑わっていました。
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「アニマリス・ブルハス・セグンダス」 ブルハム期 2016年〜
土日は混み合い、駐車場が満車になることもあるそうです。8月中の土日には三重県庁前の大駐車場が臨時駐車場となり、13時以降は美術館との無料の巡回バスも運行されます。そちらを利用するのも良いかもしれません。
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「アニマリス・ペルシピエーレ・レクタス」 セレブラム期 2006〜2008年
*関連エントリ
三重県立美術館へ行ってきました
会場内の撮影も可能です。9月18日まで開催されています。
「テオ・ヤンセン展」 三重県立美術館(@mie_kenbi)
会期:7月15日(土)~9月18日(月・祝)
休館:月曜日。但し7月17日、9月18日は開館。7月18日(火)は休館。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(600)円、高校生以下無料。
*常設展示室、及び柳原義達記念館も観覧可。
*( )内は20名以上の団体料金。
*家庭の日(毎月第3日曜日)は団体割引料金を適用。
住所:三重県津市大谷町11
交通:JR線、近鉄線津駅西口から徒歩10分。津駅西口1番のりばより三重交通バス「西団地巡回」、「ハイタウン行き(東団地経由)」、「夢が丘団地行き(総合文化センター前経由)」、「総合文化センター行き」のいずれかに乗車し、「美術館前」下車。無料駐車場あり。
「テオ・ヤンセン展」
7/15~9/18
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三重県立美術館で開催中の「テオ・ヤンセン展」を見てきました。
オランダ出身の彫刻家、テオ・ヤンセンは、「ストランドビースト」と呼ばれる造形物を作り、世界各地にて活動し続けています。
さて人工生命体とも称される「ストランドビースト」とは如何なる存在なのでしょうか。
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「アニマリス・ユメラス・セグンダス」 スイシディーム期 2009〜2011年
その1つが「アニマリス・ユメラス・セグンダス」です。高さは3メートル弱、横幅12メートルほどの構造物で、プラスチックのチューブを複雑に組み合わせて制作しています。チューブ同士の接続部には結束バンドなども用いられ、一部にはペットボトルも使われていました。恐竜の骨格のようにも見えるのではないでしょうか。実際、ヤンセンは、これらを生き物と位置づけ、独自の体系に基づき、多様に進化したストランドビーストを生み出しました。
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「ストランドビースト進化系統樹」(パネル)
その世界観が徹底しています。例えば「アニマリス・ユメラス・セグンダス」が作られたのは、スイシディーム期と呼ぶ、2009年から2011年にあたります。ヤンセンは、初期作の1990年をグルトン期、その後の1991年から1993年の間をコルダ期、さらに1993年から1994年をカリダム期とするなど、いわば地質年代まで構築した上、各々のストランドビーストの進化形態を位置付けているわけです。
また「ユメラス」とはラテン語で肩を意味します。ヤンセンは接合部、すなわち「肩にある風を、圧縮空気にして、貯め込んだ筋肉が動き出して歩行を行う」(解説より)駆動システムを作り上げました。
これほどの大きな構造物です。俄かに空気だけで動くとは信じられません。そこで映像です。ご覧の通り、確かに風を受けて「アニマリス・ユメラス・セグンダス」が歩行しています。まさに新たな生命体が砂浜に上陸したかのようでした。
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「アニマリス・ユメラス・セグンダス」(部分) スイシディーム期 2009〜2011年
なお展示品は何も模造ではなく、現実に歩行した作品です。よって細部を見ると、おそらくは浜で浴びたであろう砂がたくさん付いていました。チューブは時に汚れ、また動きによる歪みなども見られます。これぞビーストの生きている証なのかもしれません。
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「アニマリス・シアメシス」 スイシディーム期 2009〜2011年
現存する最大級のビーストが「アニマリス・シアメシス」でした。重さは約250キログラムにも及びます。「シアメシス」とは2つの類似した部分が結合していることを指し、実際に2頭のビーストが接合されていました。脚は全部で72もあり、その全てがプラスチックで作られているそうです。先の「アニマリス・ユメラス・セグンダス」と同様に、風で命が吹き込まれ、歩くことが出来ます。
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「アニマリス・アポディアキュラ」 アウルム期 2013〜2015年
まるで帆船のように美しいのが「アニマリス・アポディアキュラ」でした。比較的近年のアウルム期、つまり2013年から2015年の間の作品で、突き梁と呼ばれるアウトリガーを初めてつけたビーストでした。これにより強風によって倒れない安定性を身につけたそうです。
現在は化石です。ようは動きません。しかし構造はさらに新たなビーストへと受け継がれます。これぞ進化と言ったところなのかもしれません。
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「アニマリス・トゥルゼンティア・ヴェーラ」 アウルム期 2013〜2015年
風を受けるための帆もビーストにとって重要なパーツの1つです。「アニマリス・トゥルゼンティア・ヴェーラ」も帆をつけたビーストでした。「トゥルゼンティア・ヴェーラ」の名は膨らむ帆を意味します。帆は全部で3枚あり、全てが可変で、秒速4メートルほどの風で動くことも可能です。先の「アニマリス・アポディアキュラ」より引き継いだアウトリガーを装着することで、強い風でも倒れずに推進出来るようになりました。
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「アニマリス・プロボシス」 アウルム期 2013〜2015年
ちょうどビーストの一部を動かすデモンストレーションが行われていました。2体1組の「アニマリス・プロボシス」です。ラテン語で「鼻」を意味し、その鼻のみが上下左右に動きます。
手元のスマホでかつ後方からの観覧のため、手振れが多くて恐縮ですが、ビーストの動く姿を撮影しました。思いがけないほど機敏に動きます。またどこか人懐っこくも見えるのではないでしょうか。将来的にヤンセンは、ビースト同士にコミュニケーションの機能を持たせることを考えているそうです。そのアイデアは留まることを知りません。
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「プラスチックチューブを加工するための木型」
会場内は新作を含むストランドビーストを約10体のほか、解説模型やスケッチ、パーツなども展示しています。一部は触れることも可能でした。
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「アニマリス・オルディス」 セレブラム期 2006〜2008年 *手押し可能
さらに実際に手で動かせるビーストもありました。まさに見て、触って、ヤンセンの世界観を体感出来るのではないでしょうか。
風を受け動物のように動くアート「ストランドビースト」で有名なテオ・ヤンセンの展覧会が9月18日まで三重県立美術館で開かれてます。長編動画→https://t.co/aUMLXre9aj #テオ・ヤンセン #三重県立美術館 pic.twitter.com/qKU7EBSu4C
— 時事通信映像ニュース (@jiji_images) 2017年7月19日
お盆休み前の平日に行きましたが、会場内はファミリーで賑わっていました。
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「アニマリス・ブルハス・セグンダス」 ブルハム期 2016年〜
土日は混み合い、駐車場が満車になることもあるそうです。8月中の土日には三重県庁前の大駐車場が臨時駐車場となり、13時以降は美術館との無料の巡回バスも運行されます。そちらを利用するのも良いかもしれません。
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「アニマリス・ペルシピエーレ・レクタス」 セレブラム期 2006〜2008年
*関連エントリ
三重県立美術館へ行ってきました
会場内の撮影も可能です。9月18日まで開催されています。
「テオ・ヤンセン展」 三重県立美術館(@mie_kenbi)
会期:7月15日(土)~9月18日(月・祝)
休館:月曜日。但し7月17日、9月18日は開館。7月18日(火)は休館。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(600)円、高校生以下無料。
*常設展示室、及び柳原義達記念館も観覧可。
*( )内は20名以上の団体料金。
*家庭の日(毎月第3日曜日)は団体割引料金を適用。
住所:三重県津市大谷町11
交通:JR線、近鉄線津駅西口から徒歩10分。津駅西口1番のりばより三重交通バス「西団地巡回」、「ハイタウン行き(東団地経由)」、「夢が丘団地行き(総合文化センター前経由)」、「総合文化センター行き」のいずれかに乗車し、「美術館前」下車。無料駐車場あり。
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