都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「モノの力・ヒトの力」 國學院大學博物館
國學院大學博物館
「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」
7/28~10/9
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國學院大學博物館で開催中の「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」を見てきました。
縄文から現代に至るまで、人はモノを次々と生み出しつつ、多様に利用し、また愛でて来ました。
主に工芸を中心としたモノを集めた展覧会です。後期旧石器時代の尖頭器にはじまり、縄文土器、さらに時代を超えて朝鮮の白磁や日本の根来のほか、現代作家による作品までが展示されています。
冒頭の第1章、「原始工芸の力」とありますが、必ずしもモノは年代別に並んでいません。むしろ時代も地域も混在した、それこそ「点と点をつなぐように」(解説より)モノが入り混じっているのが特徴でした。
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右から3点目:「御子柴型石斧」 神奈川県綾瀬市吉岡遺跡 縄文時代草創期 神奈川県埋蔵文化財センター
左から2点目:「磨製石斧」 パプアニューギニア 19〜20世紀 個人蔵
例えば石斧です。一つが神奈川県の吉岡遺跡より発掘された「御子柴型」と呼ばれる石斧で、時代は縄文草創期の約15000年前です。それと隣合うのがパプアニューギニアの「磨製石斧」でした。こちらは19~20世紀に制作されています。これほど時間も地域も異なるにも関わらず、目を凝らさなければ、さも同じような時代のモノに思えてしまうのではないでしょうか。不思議な気持ちにさせられました。
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右:「火焔型土器」 新潟県津南町道尻手遺跡 縄文時代中期 津南町教育委員会
力強いのは土器です。特にデコラティブな突起が独特な「火焔型土器」の迫力は並大抵ではありません。
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「深鉢(真脇式)」 神奈川県相模原市田名塩田遺跡 縄文時代前期 相模原市立博物館
また相模原出土の真脇式と呼ばれる「深鉢」も興味深いのではないでしょうか。4つの突起がまるで人の腕のように伸びています。ヒトデのようにも見えました。
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「鍋島色絵花籠文皿」 江戸時代 個人蔵
神仏や権力者に献上されたモノに、人はより絶対的な力を見出しました。そうした献上品には「精緻を極めたモノ」(解説より)が多く見受けられるそうです。まさに力を象徴する刀剣や、有田や景徳鎮の優品などが目立っていました。
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左:「根来大鉢」 安土桃山時代〜江戸時代 個人蔵
一方で古くから使い込まれ、ともすると本来的にあまり価値を置かれなかったモノにも、美を見出すことも少なくありません。その一つが根来でした。言わずとした、黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねた漆器です。元々は仏具や什器として使われた実用品でしたが、いつしか人々の鑑賞の対象にもなりました。使い古しによる傷跡、ないし剥落した漆などにも深い味わいが感じられます。かつて多くて大倉集古館で見た根来展を思い出しました。
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中央:「古信楽大壺」 室町時代 個人蔵
アップルの創業者で、故スティーヴ・ジョブズが愛でた古信楽などの珍しいモノも出ています。渋い色味も美しい。どこか原初的で、素朴でかつ野性味のある趣きをたたえていました。
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奥:堀江武史「玉抱三叉文汚漆面」 現代
手前:「深鉢(勝坂式)」 埼玉県富士見市羽沢遺跡 縄文時代中期 水子貝塚資料館
ラストは原始工芸と現代の協働です。修復家であり、縄文アーティストとしても知られる堀江武史は、縄文の深鉢からインスピレーションを受けた漆の仮面を出展しています。鉢の突起から引用したのでしょうか。狐の顔のようにも見えました。
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右:「石棒」 新潟県十日町市芋川原遺跡 縄文時代中期 個人蔵
左:赤木明登「黒漆棒」 現代
同じく縄文の「石棒」を、漆作家の赤木明登による「黒漆棒」と並べて展示しています。時代を超えた2つの造形がシンクロナイズしていました。
最後に面白かったのが「銀製籠入り牙彫野菜」でした。明治時代に作られた有栖川宮家への伝来品です。籠は竹製かと思うほどにリアルで、野菜も驚くほど精巧に作られています。
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手前:「銀製籠入り牙彫野菜」 明治時代 國學院大學
奥:「クリス柄」 インドネシア・マドラ島 19〜20世紀 個人蔵
その向こうに見えるのが、インドネシアの「クリス柄」でした。クリスとはインドネシアを中心に、マレーシアからタイ、フィリピン南部に見られる短剣で、男性の正装に欠かせない武器とされ、神威を宿すと言われています。つまりその柄です。象牙や骨、医師などにより、花や動物などを象っています。確かに表面に小さな花がたくさん彫られていました。その造形は互いに通じているのではないでしょうか。
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「顔面把手(勝坂式)」 東京都八王子市寺田遺跡 縄文時代中期 個人蔵
あえて深いストーリーを設定せず、古今東西、多様なモノを併置した「モノの力・ヒトの力」。その造形の魅力を自由に味わうのが良さそうです。
お盆前後に約10日間ほどのお休み(8/13~24)があります。お出かけの際はご注意下さい。
入場は無料です。10月9日まで開催されています。
「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」 國學院大學博物館(@Kokugakuin_Muse)
会期:7月28日(金)~10月9日(月・祝)
休館:8月13日(日)~24日(木)、9月11日(月)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス内。
交通:JR線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、東急東横線・田園都市線渋谷駅より徒歩15分。渋谷駅東口バスターミナル54番乗り場より都営バス「学03日赤医療センター行き」で「国学院大学前」下車すぐ。JR線、東京メトロ日比谷線恵比寿駅西口ロータリー1番乗り場より都営バス「学06日赤医療センター行き」で「東四丁目」下車。徒歩5分。
「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」
7/28~10/9
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國學院大學博物館で開催中の「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」を見てきました。
縄文から現代に至るまで、人はモノを次々と生み出しつつ、多様に利用し、また愛でて来ました。
主に工芸を中心としたモノを集めた展覧会です。後期旧石器時代の尖頭器にはじまり、縄文土器、さらに時代を超えて朝鮮の白磁や日本の根来のほか、現代作家による作品までが展示されています。
冒頭の第1章、「原始工芸の力」とありますが、必ずしもモノは年代別に並んでいません。むしろ時代も地域も混在した、それこそ「点と点をつなぐように」(解説より)モノが入り混じっているのが特徴でした。
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右から3点目:「御子柴型石斧」 神奈川県綾瀬市吉岡遺跡 縄文時代草創期 神奈川県埋蔵文化財センター
左から2点目:「磨製石斧」 パプアニューギニア 19〜20世紀 個人蔵
例えば石斧です。一つが神奈川県の吉岡遺跡より発掘された「御子柴型」と呼ばれる石斧で、時代は縄文草創期の約15000年前です。それと隣合うのがパプアニューギニアの「磨製石斧」でした。こちらは19~20世紀に制作されています。これほど時間も地域も異なるにも関わらず、目を凝らさなければ、さも同じような時代のモノに思えてしまうのではないでしょうか。不思議な気持ちにさせられました。
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右:「火焔型土器」 新潟県津南町道尻手遺跡 縄文時代中期 津南町教育委員会
力強いのは土器です。特にデコラティブな突起が独特な「火焔型土器」の迫力は並大抵ではありません。
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「深鉢(真脇式)」 神奈川県相模原市田名塩田遺跡 縄文時代前期 相模原市立博物館
また相模原出土の真脇式と呼ばれる「深鉢」も興味深いのではないでしょうか。4つの突起がまるで人の腕のように伸びています。ヒトデのようにも見えました。
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「鍋島色絵花籠文皿」 江戸時代 個人蔵
神仏や権力者に献上されたモノに、人はより絶対的な力を見出しました。そうした献上品には「精緻を極めたモノ」(解説より)が多く見受けられるそうです。まさに力を象徴する刀剣や、有田や景徳鎮の優品などが目立っていました。
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左:「根来大鉢」 安土桃山時代〜江戸時代 個人蔵
一方で古くから使い込まれ、ともすると本来的にあまり価値を置かれなかったモノにも、美を見出すことも少なくありません。その一つが根来でした。言わずとした、黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねた漆器です。元々は仏具や什器として使われた実用品でしたが、いつしか人々の鑑賞の対象にもなりました。使い古しによる傷跡、ないし剥落した漆などにも深い味わいが感じられます。かつて多くて大倉集古館で見た根来展を思い出しました。
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中央:「古信楽大壺」 室町時代 個人蔵
アップルの創業者で、故スティーヴ・ジョブズが愛でた古信楽などの珍しいモノも出ています。渋い色味も美しい。どこか原初的で、素朴でかつ野性味のある趣きをたたえていました。
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奥:堀江武史「玉抱三叉文汚漆面」 現代
手前:「深鉢(勝坂式)」 埼玉県富士見市羽沢遺跡 縄文時代中期 水子貝塚資料館
ラストは原始工芸と現代の協働です。修復家であり、縄文アーティストとしても知られる堀江武史は、縄文の深鉢からインスピレーションを受けた漆の仮面を出展しています。鉢の突起から引用したのでしょうか。狐の顔のようにも見えました。
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右:「石棒」 新潟県十日町市芋川原遺跡 縄文時代中期 個人蔵
左:赤木明登「黒漆棒」 現代
同じく縄文の「石棒」を、漆作家の赤木明登による「黒漆棒」と並べて展示しています。時代を超えた2つの造形がシンクロナイズしていました。
最後に面白かったのが「銀製籠入り牙彫野菜」でした。明治時代に作られた有栖川宮家への伝来品です。籠は竹製かと思うほどにリアルで、野菜も驚くほど精巧に作られています。
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手前:「銀製籠入り牙彫野菜」 明治時代 國學院大學
奥:「クリス柄」 インドネシア・マドラ島 19〜20世紀 個人蔵
その向こうに見えるのが、インドネシアの「クリス柄」でした。クリスとはインドネシアを中心に、マレーシアからタイ、フィリピン南部に見られる短剣で、男性の正装に欠かせない武器とされ、神威を宿すと言われています。つまりその柄です。象牙や骨、医師などにより、花や動物などを象っています。確かに表面に小さな花がたくさん彫られていました。その造形は互いに通じているのではないでしょうか。
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「顔面把手(勝坂式)」 東京都八王子市寺田遺跡 縄文時代中期 個人蔵
あえて深いストーリーを設定せず、古今東西、多様なモノを併置した「モノの力・ヒトの力」。その造形の魅力を自由に味わうのが良さそうです。
お盆前後に約10日間ほどのお休み(8/13~24)があります。お出かけの際はご注意下さい。
ついに本日より新企画展がスタートしました!本展は、ほとんどの資料が写真撮影可となっております☆ぜひお越しください。#撮影OK #博物館 #無料 #明日はミュージアムトークhttps://t.co/9jcI044CRV pic.twitter.com/Geg8C4Xk3l
— 國學院大學博物館 (@Kokugakuin_Muse) 2017年7月28日
入場は無料です。10月9日まで開催されています。
「モノの力・ヒトの力ー縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ」 國學院大學博物館(@Kokugakuin_Muse)
会期:7月28日(金)~10月9日(月・祝)
休館:8月13日(日)~24日(木)、9月11日(月)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス内。
交通:JR線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、東急東横線・田園都市線渋谷駅より徒歩15分。渋谷駅東口バスターミナル54番乗り場より都営バス「学03日赤医療センター行き」で「国学院大学前」下車すぐ。JR線、東京メトロ日比谷線恵比寿駅西口ロータリー1番乗り場より都営バス「学06日赤医療センター行き」で「東四丁目」下車。徒歩5分。
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