「THE フィギュア IN チバ」 千葉県立美術館

千葉県立美術館
「立体造形の現在・過去・未来 THE フィギュア IN チバ」
7/22~9/24



千葉県立美術館で開催中の「立体造形の現在・過去・未来 THE フィギュア IN チバ」を見てきました、

高い造形技術で知られる海洋堂のフィギュアが、3000体以上も千葉みなとへやって来ました。



それが「THE フィギュア IN チバ」です。海洋堂のフィギュアを中心に、古くは土偶、さらに最新のバーチャルアーティストまでを網羅し、「過去」、「現在」、「未来」の立体造形を紹介しています。



近年、ミュージアムショップでフィギュアが発売されることは少なくありませんが、その一つとも言えるのが、人気の「阿修羅像」でした。2017年の製作のマスターピースで、顔の表情などのディテールも極めて精巧に再現しています。これまでに海洋堂は、国内のみならず、大英博物館からもオファーを受けるなど、世界各地の博物館や美術館のフィギュアを作って来ました。



直近では「バベルの塔展」のブリューゲルのフィギュアもよく知られているのではないでしょうか。ほかにも東京国立博物館の「埴輪」や「風神雷神」など、考古、美術品に因むフィギュアに事欠きません。

海洋堂の歴史を丹念に追っているのも興味深いところです。そもそも国内でフィギュアなる製品ジャンルがはじまったのは1980年代の中ばでした。よって歴史は約30年ほどしかありません。



フィギュアに先行したのはプラモデルです。海洋堂は1964年、宮脇修によって大阪府守口市にプラモデル屋として操業します。宮脇は起業に際し、習い覚えたうどん屋か、当時、流行の兆しを見せていたプラモデル屋にするか悩んでいました。そこで一本の木刀に運命を託します。倒れた刀が指したのがプラモデル屋でした。もしこの時、別の向きに倒れていたら、今の海洋堂はなかったのかもしれません。店舗面積は僅か一坪半に過ぎませんでした。

70年代に入ると宮脇の読み通り、プラモデルが爆発的な広がりを見せます。ただしあくまでも子どもの趣味として扱われ、社会的な地位は高くありませんでした。



そこで「アートプラ」という概念を提唱します。プラモデルに絵画的な要素を注入し、個性や芸術性を持たせ、いわば工芸化する試みを取り入れました。ここにプラモデルに作家性が生じ、新たな造形作品としての地位を確立しはじめました。



プラモデル業界は80年代に低迷します。その一方で、自らの理想とする立体物を製作しようとする動きも進みました。既存の商品に飽き足りなくなった若者が海洋堂に集まり、好きなものを作っては、商品として販売するようになります。いわゆるマニアによるマニアのための模型でもある「ガレージキット」が生み出されました。またここに関わった人物が、のちにフィギュアの原型師としても活躍しました。



アメリカでは関節の可動するアクションフィギュアが登場し、日本へも輸入され、若者らの間でブームを巻き起こします。その完成度は海洋堂でも衝撃を受けるほどだったそうです。しかし職人は黙っていません。さらなる高いレベルのフィギュアを作り上げます。それが1998年に誕生した、和製アクションフィギュアの第1号、「北斗の拳」でした。



1999年に海洋堂は「チョコエッグ」ではじめて食玩に乗り出します。フルタ製菓のおまけ付き菓子の卵型チョコの中に、組立型のフィギュアを入れました。この動物フィギュアを入れた「日本の動物コレクション」は大変な人気を集め、結果的に1億個を超える販売を記録しました。以降、恐竜や戦車、キャラクターものなどが続々と作られました。



食玩により、販路が大きく広がったこともあるかもしれません。おまけフィギュアにより、フィギュア自体も広く一般に浸透するようになりました。



当初のおまけフィギュアブームから10年。近年は大人をターゲットにした食玩がコンビニなどに並び、決してマニアでなくとも購入、あるいは収集することが珍しくなくなりました。そのうちの一つでもあるのが、2013年に完成した「カプセルQシリーズ」でした。



三国志、ミュシャ、エヴァンゲリオン、進撃の巨人ほか、ともかくあらゆる領域のフィギュアが作られています。これほど幅広く展開されるなど当初は誰も予想しなかったかもしれません。



現在ではコレクター向けの高価格なシリーズと、ソフビによる低価格な「ソフビトイボックス」などを発売し、幅広い層に向けてフィギュアを提供し続けています。実際に店頭で見たことのあるフィギュアも少なくないかもしれません。



また各造形師の仕事にも注目しているのもポイントです。さらに「フィギュアができるまで」のコーナーでは、制作プロセスを解説付きで分かりやすく紹介していました。さりげなく手にするフィギュアも、複数の原型、ないしテストショットを得て生み出されていることが見て取れました。



動物日本地図も見どころの一つです。日本国内に生息する動物の分布図を、海洋堂のフィギュアを配置して再現しています。「全国制覇」とありましたが、確かに北は北海道から本州、四国に九州、南西諸島に沖縄までを網羅しています。さらに海の生き物までもいました。動物だけで何体あるのでしょうか。数えるのも困難なほどでした。

さて海洋堂で現在のフィギュアを追った次は、未来、テーマは「多様化する表現」です。



まずは地元の千葉に因んだ「千葉ットマン」のコスプレです。千葉在住で、バットマンの世界に共感した千葉ットマンは、愛車の千葉ットポッドに乗り、震災後、「人々に笑顔を与えたい」(解説より)として、全国各地を駆け巡りました。最近では、千葉市の成人式や市民マラソンなどに、出演、あるいは参加するなどして活動しているそうです。

まさに近未来です。ヴァーチャルアーティストのIA(イア)がライブパフォーマンスを行っていました。映像はホログラムで、過去に台湾やアメリカ、フランスなどでもライブも開催し、人気を得てきたそうです。



率直なところ、IAなる存在を私は初めて知りましたが、歌もステップも軽快で、映像自体は小さいものの、思いの外に臨場感がありました。公演時間や約37分で、各8分間の休憩を挟み、開館中に連続上演しています。ちょうど公演を終えると、たまたま居合わせた制服姿の高校生が大きな拍手を送っていました。こうしたヴァーチャルアーティストの活動も今後は増えていくのかもしれません。

ラストは一気に太古の昔に遡ります。立体造形の原点とも言える土偶や埴輪です。いずれも袖ヶ浦や成田などの千葉県内の出土品でした。さらに長南町に伝わる芝原人形なども展示し、フィギュアへ繋がる県内の民芸品などを紹介していました。



ラストの第3を除く展示室の撮影が可能です。第8展示室の等身大フィギュアはフラッシュを利用しての記念撮影も出来ました。



それにしても3000体超と凄まじき出展数です。右も左もフィギュア、見渡す限りにフィギュアです。一生分のフィギュアを1日で見たような気がしました。



カメラ片手にお気に入りのフィギュアを探して歩くのも良いかもしれません。会場内、空いてはいたもの、ファミリーで楽しんでいる方も見受けられました。



9月24日まで開催されています。

「立体造形の現在・過去・未来 THE フィギュア IN チバ」 千葉県立美術館
会期:7月22日(土)~9月24日(日)
休館:月曜日。ただし月曜が祝日の場合は開館し、翌日休館。
時間:9:00~16:30。7/22のみ11時に開場。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800(640)円、高校・大学生400(320)円、中学生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央港1-10-1
交通:JR線・千葉都市モノレール千葉みなと駅より徒歩約10分。
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