「池田学展 誕生」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「池田学展 誕生」 
7/26~9/9



ミヅマアートギャラリーで開催中の「池田学展 誕生」を見てきました。



かの「誕生」を前にして、しばし言葉を失ったのは、私だけではないかもしれません。

「誕生」の制作の切っ掛けになったのが東日本大震災でした。当時、バンクーバーに住んでいた池田は、現地での報道を見聞きし、衝撃を受け、何とか絵にしたいと考えたそうです。



画面左下で渦巻くのがガレキでした。道路は引きちぎられて波打ち、建物は壊れ、車も何もかもがぐちゃぐちゃになって積み上がっています。驚くべきほどに緻密な表現は、否応なしに震災の光景を生々しいまでに思い起こさせました。中には観覧車に車が突き刺さり、骸骨のようなモチーフが浮き上がっている様子も見えます。ひたすらに惨たらしい。池田も当初はこのガレキばかりを描いていたそうです。



全体を目にすると下から大波が迫り、ガレキから大きな木がのびて、無数の花を付けていることが分かります。破壊から再生、いわば復興への意図も込められているのかもしれません。



とはいえ、細部を見れば見るほど、それほど単純ではありませんでした。花かと思い目ををこらすと、放射性のマークであったり、船のスクリューであったり、実はガレキでもあったりします。葉や実のようなモチーフもテントのように見えました。さらに幹には黒い袋、おそらくは除染袋が、まるで虫の卵のように固まり、「CONTAMINATED」の文字を示しています。つまり大半が人工物で、自然の花が見当たりません。



絵の中にはたくさんの人がシルエット状に表されていました。池田は本作で「震災との共生」をテーマにしたと語っています。自然に対峙するのではなく、自然の中でどう生きていくのかを問うているのかもしてません。



一つのエピソードを聞いてさらに驚きました。池田は制作中、花を描き始めた頃、利き腕の右手を怪我してしまいます。しかし3年間で完成させることを目標としていたため、完治を待たず、約3か月間、反対側の左手で描き続けたそうです。確かに花の一部のタッチがほかと異なっても見えました。



この作品のモチーフなり意図なり情報を受け止めるには、1度や2度の鑑賞では難しいかもしれません。ともかく圧倒的な迫力の前にただただ見入るばかりでした。


佐賀、石川と巡回し、人気を博した「池田学The Penー凝縮の宇宙」が、いよいよ今月末から日本橋高島屋へやって来ます。

「池田学The Penー凝縮の宇宙」@日本橋高島屋
会期:9月27日(水)~10月9日(月・祝)

そちらにも「誕生」が出展されるそうです。また話題を集めるのではないでしょうか。

「『誕生』が誕生するまで The Birth of Rebirth/青幻舎」

9月9日まで行われています。

「池田学展」 ミヅマアートギャラリー@MizumaGallery
会期:7月26日(水)~9月9日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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