「トーマス・デマンド Model Studies(Koto-ku)」 タカ・イシイギャラリー東京

タカ・イシイギャラリー東京
「トーマス・デマンド Model Studies(Koto-ku)」
5/22-6/27

ドイツ現代美術を代表する作家としても知られるトーマス・デマンド。ともかく東京都現代美術館で行われた日本での初個展(2012年。美術館として。)の鮮烈な印象が未だ忘れられません。



「トーマス・デマンド展」@東京都現代美術館 2012年5月19日~7月8日

タカ・イシイギャラリーとしては8年ぶり、3度目の個展だそうです。展示は写真。モチーフは建築模型です。江東区にあるSANNAの事務所にあった模型を撮影しています。

ただしそれらは模型と言っても、まだ建築になりきっていないような原初的なもの。時に模型の断面、また無造作に置かれた傾いたものまでを写し出します。ただしギミック的な要素は殆どありません。あくまでも模型は模型です。必ずしもリアルに見えません。しかしながら得意とする写真の「均一な質感」(東京都現代美術館サイトより)にて、どこか虚実ない交ぜとなった風景が表されてもいます。

建築模型はもはや一種の彫刻です。デマンドといえば紙で出来たセットを、さも本物の現場のように写して見せますが、そもそもデマンド自身も作品において常にセット、ようは模型を制作しているわけです。一方で今回はモデル自体が模型です。自作の模型を写しては作品を生み出すデマンドが、建築模型に関心を覚えるのも当然のことなのでしょう。その意味でも確かに「デマンドと建築家の模型には共通点がある」(ギャラリーサイトより)と言えるのかもしれません。

最後にギャラリーの情報です。タカ・イシイギャラリーは本展初日に清澄白河より千駄ヶ谷へと移転しました。


タカ・イシイギャラリー東京

最寄駅は東京メトロ副都心線の北参道駅です。案内には徒歩4分とありますが、実際に歩くともっと近く感じました。かなり駅近です。


タカ・イシイギャラリー東京の入居するビル

建物自体はマンションなのでしょうか。その地下1階フロアにタカ・イシイギャラリーが入居しています。かつての清澄時代に広さこそ及びませんが、駅からのアクセスを鑑みれば、便利になったと言えるかもしれません。

なおタカ・イシイの入居する建物へは、6月13日(土)に、同じく清澄から小山登美夫ギャラリーが移転してきます。


GAギャラリー。道の向かい側です。

また建物の目の前には建築専門のGAギャラリーもあります。ビル取り壊しのためとはいえ、清澄のコンプレックスが無くなったのは寂しいところですが、今後はタカ・イシイ、小山登美夫、GAと集まる北参道界隈にも足繁く通いたいものです。


タカ・イシイギャラリー東京の入口

ちなみに清澄のコンプレックスに入居していたキドプレスは末広町の3331へ移転。シュウゴアーツ、及びミヤケファインアートも近々、都内への移転を予定しているそうです。そちらのアナウンスも追って出るのではないでしょうか。

「Thomas Demand Museum of Contemporary Art Tokyo/講談社」

6月27日まで開催されています。

「トーマス・デマンド Model Studies(Koto-ku)」 タカ・イシイギャラリー東京
会期:5月22日(金)~6月27日(土)
休館:日・月・祝日。
時間:11:00~19:00
料金:無料。
住所:渋谷区千駄ヶ谷3-10-11 B1
交通:東京メトロ副都心線北参道駅2番出口より徒歩4分。JR線千駄ヶ谷駅より徒歩10分。
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「鴨居玲展 踊り候え」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」
5/30-7/20



東京ステーションギャラリーで開催中の「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」を見てきました。

1928年に金沢で生まれ、日本のみならず、南米やパリ、スペインなどを渡り歩いては絵を描き続けた洋画家、鴨居玲。今年没後30年です。

出品は資料含めて約100点。デッサンを除くと、基本的には時系列に鴨居の画業を辿っています。

始まりは二十歳頃の自画像でした。こちらの気配を伺うような視線は、何やら人を捉えて離さないものがあります。

ともかく鴨居というと酔っぱらいや老婆のモチーフが有名ですが、初期の画風は意外と多様です。師の洋画家、宮本三郎に影響された「婦人像」や、矩形の並ぶ地平に頭部が浮かぶという、まるでシュルレアリスム絵画を見るかのような「月と男」など、後の展開からは連想もし得ない作品を描いています。

またガッシュやパステルを用いるなど、素材に変化を加えているのもポイントです。「蠢く」の激しい筆致はさもアクションペインティングのよう。時には抽象画を描きながら自己の画風を探っていました。

鴨居が画家として一つの成功を得たのが「静止した刻」。1969年に安井賞を受賞した作品です。


「静止した刻」 1968年 東京国立近代美術館

サイコロを転がしては遊ぶ男たち。賭けごとでしょうか。年老いた彼らは身振りを交えてはやりとりしています。サイコロの落ちる瞬間、まさにその刻を捉えたのでしょう。右奥はストーブです。そして左には深い霧の立ち込めたような白が広がっています。

本作の別バージョンもあわせて展示されていました。こちらにはストーブはありません。また「りんご」ではりんごの皮を剥く人物を描いています。手は皺くちゃで年季が入っています。ただ不思議と表情は恍惚としていました。

1971年、鴨居はスペインに渡ります。そしてこの頃に画業の「絶頂期」(キャプションより)を迎えたそうです。


「おっかさん」 1973年 個人蔵

ここで画風を特徴付ける酔っぱらい、老婆、傷を負った軍人などのモチーフを獲得しました。

「私の村の酔っぱらい」はどうでしょうか。大きく反り返っては歩く男の姿。まさしく酔っぱらい、眠くて欠伸をしているのか、それとも気分良く歌っているのか、大口を開けています。暗がりの色彩、絵具の塗りこまれた画肌は重く、ともすると暗鬱に見えますが、男の表情自体は酒の力もあってか楽し気で、機嫌よく軽やかなステップを踏んでいるようにも映ります。

「おばあさん」ではモデルとなった女性の写真も出ていました。深い皺を露わにした老婆。キャプションには伎楽面とも記載がありましたが、確かにそうした形相にも見えます。

ただモデルの写真と比較すると一目瞭然、何も鴨居のデフォルメではありません。

と言うのも良く似ているのです。写実的とするには語弊があるやもしれませんが、年齢を重ねた人間の姿を有り体に捉えていることがわかります。

鴨居はこうしたモデルをスペインやイタリアなどで見つけては描いたそうですが、再び酔っぱらい捉えた表題作、「踊り候え」など、劇的ながらも、対象の深くの心情をも抉り出すかのような姿勢は、人の可笑しみやら微笑ましさまでも表していてはいないでしょうか。必ずしも暗部のみを取り出しているわけではありません。


「教会」 1976年 ひろしま美術館

教会を描いた何点かの作品に目が留まりました。鴨居が画風を確立してからは珍しい建物のみを捉えたもの。教会は荒野の中でぽつんと建ち、次第に傾き、さらには宙に浮いていきます。彼は一体、教会に何を見ていたのでしょうか。

1977年に帰国、神戸にアトリエを構えた鴨居ですが、もはやスペインで見た酔っぱらいも老婆もここにはいません。だからなのでしょうか。新たな画題を探すのに大いに苦労したそうです。

裸婦像に取り組みます。それが2点の「ETUDE」です。ともに画家は出来に納得しなかったそうですが、実に優美で、細かな線描は肉体の質感も巧みに表現しています。

結果的には自画像に立ち戻りました。それは何れも口を半開きにしては、どこか人生を達観、乃至は諦念にとらわれては佇んでいるような「出を待つ(道化師)」や「勲章」、そして「ミスターXの来た日 1982.2.17」などに結実します。

ちなみにミスターXとは心臓発作を起こした時に現れた人物なのだそうです。もちろん錯覚でしょう。睡眠薬をウイスキーで飲んだとも伝えられる鴨居。晩年は相当に健康を害していたそうです。


「1982年 私」 1982年 石川県立美術館

一際目を引くのが「1982年2月3日 私」でした。他と比べてもかなり大きなサイズの作品、中央には白いキャンバス、その前に画家自身が座っています。口をぼんやり開けては、途方に暮れたような表情が印象的です。もちろん筆は全く進んでいません。

周囲を囲むのは酔っぱらいや老人たち、鴨居がこれまでに描き続けた人物です。クールベの「画家のアトリエ」を彷彿させるものの、もはや「描けない」ということを宣言したような一枚。実際にも鴨居は自らの手で命を断ってします。その激しい悩みと苦しみ、容易には想像もつきません。


「勲章」 1985年 笠間日動美術館

絶筆の「自画像」が油彩の展示のラストに控えていました。以降、画家の用いた絵筆などの遺品、そしてデッサンと続きます。鴨居は1枚の絵を完成させるのに100枚のデッサンを描いたとも言われているそうです。このデッサンの線が思いがけないほど生き生きしていました。

鴨居玲、根強い人気のある画家と言えるかもしれません。没後、ほぼ5年間隔にて回顧展が開催されています。

今回の展示は東京では25年ぶりとありますが、つい隣の横浜では5年前にそごう美術館で回顧展もありました。ゆえに必ずしも見る機会の少ない画家とは言えません。

[没後30年 鴨居玲展 踊り候え 巡回予定]
北海道立函館美術館:2015年7月26日(日)~9月6日(日)
石川県立美術館:9月12日(土)~10月25日(日)
伊丹市立美術館:10月31日(土)~12月23日(水)

しかしながら今度は何か異様な迫力がさらに増しているようにも見えました。何故でしょうか。ひょっとすると、特に階下、レンガ壁の展示室に鴨居の作品が驚くほど良く似合っているからかもしれません。

「鴨居玲 死を見つめる男/講談社」

ステーションギャラリーという個性的な場所の力を借りての鴨居の回顧展。私もそごう美術館以来の展示でしたが、改めて作品の放つ不思議な魔力に吸い込まれるものを感じました。



7月20日まで開催されています。

「北陸新幹線開業記念 没後30年 鴨居玲展 踊り候え」 東京ステーションギャラリー
会期:5月30日(土)~7月20日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/20は開館。
料金:一般900円、高校・大学生700円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は100円引。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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「ルドゥーテ美花選展」 日比谷図書文化館

日比谷図書文化館
「マリー・アントワネット、ジョゼフィーヌに仕えた宮廷画家 ルドゥーテ美花選展」
4/18-6/19



日比谷図書文化館で開催中の「ルドゥーテ美花選展」を見てきました。

フランス革命の動乱期、「花のラファエロ」とも称された画家、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759-1840)。その集大成とも言える版画集、「美花選」を紹介する展覧会です。

会場内には、色も艶やか、瑞々しいまでの草花を描いた版画がずらり。その数90点です。ほかにも肉筆画2点や関連資料も出品されています。

ルドゥーテの美花選、描かれたのは画家晩年の1827~33年。出版は全36分冊です。合計144枚の植物画が収められています。

注目すべきは「スティップル法」と呼ばれる凸版の版画技法です。「輪郭線を彫らずに針で銅版に点刻、点の集散で図像を表現した」(解説冊子より)という技術。元々、ルドゥーテは輪郭線を用いる伝統的な技法を使っていたそうですが、イタリアの地でスティップルに出会い、取り入れるようになりました。


ルドゥーテ「美花選」チューリップ

ともかく細部の至る箇所まで緻密です。花弁の質感はもちろん、葉脈、茎の小さな棘までが表現されています。時には肉眼で確認するのも難しいほど。虫眼鏡で覗き込まないと分かりません。そして彩色の妙味です。手彩色を加えた美しさと言ったら比類がありません。


ルドゥーテ「美花選」アジサイ

花の表情も様々です。バラの豊潤さ、スミレの可憐さ、そしてスイセンの透明感。今の季節の花、アジサイにも目を引かれました。

肉筆は2点、うち一点はルドゥーテの出世作とされる「ユリ科植物図譜」でした。かつては原画をナポレオン皇妃であるジョセフィーヌが所有していたという一枚。素材は羊皮紙ことベラムです。乳白色を背景に色も鮮やかな花が浮き上がっています。

ほかにはルドゥーテの挿絵の初版本やルソーの植物学、また花のモチーフを描いた切手なども展示されていました。

チェンバロが一台置かれていました。装飾は美花選から取られた花のモチーフです。



このチェンバロを利用して毎週土・日にはミニコンサートも開催されているそうです。そちらにあわせて出かけても良さそうです。

[チェンバロミニコンサート]
日 時:毎週土曜・日曜および祝日13:00、15:00(各15分)
場 所:日比谷図書文化館 1階 特別展示室
参加費:無料(特別展の当日利用券を購入のこと)
申込み:不要

ところで日比谷図書文化館、都立日比谷図書館から千代田区へ移管され、2011年に全面リニューアルオープンしました。


常設展示室「千代田にみる都市の成立と展開」

館内は一新。もちろん核となるのは都立時代を引き継ぐ図書館ですが、千代田の歴史を紹介するミュージアムも併設。あわせてライブラリーショップ&カフェ日比谷も開設されています。私も利用しましたが、なかなか居心地の良いスペースでした。


ライブラリーショップ&カフェ日比谷

ルドゥーテといえば2011年に文化村でも展示がありました。さすがにスペースの違いもあり、スケールこそ及びませんが、90点の美花選を一揃えで見られる機会です。これで観覧料は300円。お得感のある展示と言えるのではないでしょうか。


「ルドゥーテ美花選展」入口

会期中の展示替えは既に終了しています。以降の入れ替えはありません。


日比谷図書文化館(外観)

6月19日まで開催されています。

「マリー・アントワネット、ジョゼフィーヌに仕えた宮廷画家 ルドゥーテ美花選展」 日比谷図書文化館
会期:4月18日(土)~6月19日(金) *5月18日(月)展示替え 
休館:4月20日(月)、5月18日(月)、6月15日(月)。
時間:10:00~20:00(平日)、10:00~19:00(土曜)、10:00~17:00(日祝)。
料金:一般300円、大学・高校生200円、中学生以下無料。
住所:千代田区日比谷公園1-4
交通:東京メトロ丸の内線・日比谷線霞ヶ関駅B2出口より徒歩約3分。東京メトロ 千代田線霞ヶ関駅C4出口より徒歩約3分。都営三田線内幸町駅A7出口より徒歩約3分。
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「虎屋文庫のお菓子な展示77」 虎屋ギャラリー

虎屋ギャラリー
「休館前の特別企画 虎屋文庫のお菓子な展示77」
5/20-6/16



虎屋ギャラリーで開催中の「休館前の特別企画 虎屋文庫のお菓子な展示77」を見てきました。

創業は室町時代に遡るという老舗和菓子メーカーのとらや。赤坂の現本店は1973年に建てられたそうです。(ちなみに赤坂に店を構えたのは1879年です。)

ビル老朽化ということでしょうか。このほど建て替えが決定。よって本店内のギャラリーも一時、休館することになりました。



まさしく休館前の最後の展示です。タイトルは「虎屋文庫のお菓子な展示77」。ラストの77とは本展が77回目であることを示します。これまで虎屋ギャラリーにて数多く行われてきた展示を振り返っていました。

記念すべき第1回展はビルの竣工した1973年。「富岡鉄斎と虎屋展」です。何故に鉄斎と思ってしまいましたが、実は彼、虎屋と深い縁を持っていたとか。何でも生前、京都の虎屋の支配人と親しかったそうです。

続くのは同年の「虎屋の古文書展」。最近でこそ和菓子の展示も目立つ虎屋ギャラリーですが、初めは必ずしもそうではありませんでした。かつてはこうした古文書なり、歴代の店主を今も務める黒川家にまつわる資料展が多かったそうです。

和菓子文化に目が向けられるようになったのは1980年代に入ってからのこと。1983年の「和菓子の歴史展」に始まります。翌年には「虎屋と菓銘と由来展」を開催。江戸以降、近代に至る和菓子の名の由来についての展示を行いました。

1987年には「和菓子と甘み展」が開催されます。それまでの展示では集客に苦労し、少ない日では来場者が1桁の時もあったそうですが、この回は新聞にも取り上げられ、結果的に1000名を超える人で賑わいました。

さらに翌年の「慶びと寿ぎの和菓子展」からは限定菓子の発売もスタート。同年の「源氏物語と和菓子展」では源氏物語の世界を料紙とともに和菓子で再現する試みもなされたそうです。

和菓子を入れるための容器、お通箱こと井籠が大変に立派なのには驚きました。井籠を取り上げたのは1989年の「お通箱と和菓子展」です。江戸時代に制作された井籠を並べて展示しました。

「竹虎青貝井籠」は螺鈿です。生前は1698年、5段の重箱でしょうか。実に艶やかです。蓋にも側面にも虎が螺鈿で描かれています。サイズはかなり大きい。重さはどのくらいあるのでしょうか。また持ち運びの方法にも興味が湧きます。

光琳も登場しました。第45回展、1995年の「歴史上の人物と和菓子展(その2)」でのことです。光琳が友人の中村内蔵助に贈ったのは10種類の和菓子。注文の内容が「緒方御用留書」に記録されています。

清長の「名代干菓子山殿」に目を引かれました。いわゆる黄表紙の読み物、何でも茶碗を探しにいくという物語だそうですが、中には擬人化されたお菓子がたくさん描かれています。それを2000年の「江戸おもしろお菓子展」で紹介したそうです。また2006年の「和菓子アート展」では文字通り現代アートとコラボレーション。かの森村泰昌が参加しては作り文字のモチーフを手がけました。

本店2階の小さな小さな展示スペースこと、虎屋ギャラリー。しかしながらそこには和菓子に関する文化を伝えてきた虎屋の長きに渡る伝統があります。



キャプションやパネルの随所に記載されていたスタッフの方の苦労話なども興味深いのではないでしょうか。また職人さんによる和菓子制作についての展示もあります。単に歴史だけでなく、虎屋の和菓子にかける熱意のようなものも伝わる内容でした。

「虎屋ー和菓子と歩んだ五百年/新潮新書/新潮社」

「虎屋文庫資料展のあゆみ」と題した小冊子もいただきました。次回、ビル建て替えを経て、3年後に予定されている第78回展にも期待したいと思います。

「和菓子 (NHK美の壺)/日本放送出版協会」

会期中無休、入場は無料です。6月16日まで開催されています。

「休館前の特別企画 虎屋文庫のお菓子な展示77」 虎屋ギャラリー
会期:5月20日(水)~6月16日(火)
休館:会期中無休。
時間:10:00~17:30。
料金:無料。
住所:港区赤坂4-9-22
交通:東京メトロ銀座線・丸の内線赤坂見附駅A出口より徒歩7分。
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「新潟市美術館の名品たち」 目黒区美術館

目黒区美術館
「有朋自遠方来(ともありえんぽうよりきたる) 新潟市美術館の名品たちーピカソとクレーもやってきた」
4/11-6/7



目黒区美術館で開催中の「新潟市美術館の名品たちーピカソとクレーもやってきた」を見てきました。

サブタイトルの「有朋自遠方来 (ともありえんぽうよりきたる)」とは、「論語」から「友人が遠くから訪ねてくる。」、すなわち「同じ学を志すものが出会うというのは、なんと喜ばしいことか。」という意味なのだそうです。

友人とはまさしく新潟市美術館のコレクションということでしょう。会場内には同館のコレクションがずらり。その数は60点です。表題のピカソやクレーといった西洋美術だけでなく、瑛九、山口長男らの近代日本美術、さらには布川勝三、佐藤哲三郎、矢部友衛といった新潟に所縁のある作家までを網羅しています。


阿部展也「作品」 1950年 新潟市美術館

1.新潟市美術館の名品たち
2.新潟に息づく作家たち
3.二つの美術館、二つのコレクション

冒頭は「名品たち」。つまり館を代表する作品ということかもしれません。ルドン、カリエールにはじまり、ザッキン、クレー、エルンスト、ニコルソンへ。またあわせて瑛九、李、中西夏之、難波田龍起、辰野登恵子らの作品も展示されています。

作品の配置に工夫がありました。例えばピカソの「ギターとオレンジの果物鉢」とニコルソンの「1932年(ギターと頭像)」はともにギターを両通のモチーフとした静物画。ピカソでは左に見えるのがギターでしょうか。まさしくキュビズム、さも解体したかのように描かれています。一方でニコルソンはキャンバスをくり抜いては板をはめ込み、さらに板を載せているという凝った支持体です。そこにギターと頭像を等しく描いています。それ自体は具象的です。ベージュの色彩には統一感も感じられます。

チラシ表紙に掲載されたクレーの「プルンのモザイク」、思いの外に小さな作品でした。縦60センチ、横1メートル超の画面に広がる色鮮やかなモザイク。ビザンティンのそれを参照したのだそうです。モザイクには赤や青の円や半円、線などのモチーフが差し込まれます。画面は幾何学的ですが、しばらく見ていると不思議にも人の顔が浮かび上がってきました。どことなく可愛らしい作品でもあります。

エーリヒ・ブラウアーの「かぐわしき夜」に魅せられました。青や緑の色面に包まれた小さな人々。星屑のような光が散っています。何かのお祭りを描いたのでしょうか。その様子は幻想的、シャガールを見るようでもあります。絵具には油だけでなく、一部にテンペラを利用していました。

日本の画家はどうでしょうか。ここでも配置に一工夫あります。例えば李禹煥の「点より」と中西夏之の「紫・むらさき13」です。対になって置かれていましたが、李では群青のストロークが画面一杯に広がります。一方、中西の作品では紫や白の粒状の筆致が広がっていました。心地よいざわめきと軽快なまでのリズム感。もちろん表現は異なりますが、どこか共通した印象を感じてなりません。

ご当地の画家を丹念に紹介しています。布川勝三の「北の海(しけ)」は日本海のしけを描いた一枚です。手前には茶色にくすんだ家屋が立ち並び、彼方には白波を立ててはうねる海が表されています。海の随所に引かれた線が屋根を象る線と重なって見えました。闇夜でしょうか。海は深く黒く、溢れ出て、さも街を飲み尽くすかのように荒れ狂っていました。

美術館へ270点もの絵画を寄贈した小林力三のコレクションも目を引きます。彼と交流があったのは矢部友衛、大正の前衛美術活動に参加した画家です。畑仕事に勤しむ農夫を描いた「野良」が出品されています。陽光眩しい大地、健康的な人物の姿。明るい色彩が印象に残りました。

また矢部の盟友だったのが岡本唐貴です。作品は2点、「野菜静物」と「先端にたつ女三態」。うち後者は目黒区美術館のコレクションでした。


末松正樹「群像」 1950年 新潟市美術館

実は本展、作品の全てが新潟市美術館のコレクションではなく、随所に目黒区美術館のコレクションが差し込まれているのもポイントです。新潟市美術館が開館したのは1985年、目黒区美術館は1987年。ともに公立美術館としての歴史を30年ほど有します。二つの美術館のコレクションを特に見比べることで、両館の歴史ないし、コレクションの「意義」(解説より)を振り返ってもいるわけです。

よってラスト、3章の「二つの美術館、二つのコレクション」では、各出展作家を両館のコレクションで紹介しています。


安宅安五郎「ベルサイユ郊外」 1921年 新潟市美術館

ここに並ぶのが安宅安五郎、阿部展也、三上誠に相笠昌義、さらには草間彌生に篠原有司男などです。これが時代が時に異なり、作風もまた違っていたりします。思いの外に多様です。安易に作家の個性なりを表すことは出来ません。

先にも触れたように構成や配置にも一工夫があり、さらに目黒の作品を参照することで、展示全体に奥行きも生まれています。なかなか読ませる展覧会でした。



6月7日まで開催されています。

「有朋自遠方来(ともありえんぽうよりきたる) 新潟市美術館の名品たちーピカソとクレーもやってきた」 目黒区美術館
会期:4月11日(土)~6月7日(日)
休館:月曜日。但し5/4(月)は開館し、5/7(木)は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般700(550)円、大高生・65歳以上550(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
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6月の展覧会・ギャラリーetc

6月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「ルオーとフォーヴの陶磁器」 パナソニック汐留ミュージアム(~6/21)
・「松園と華麗なる女性画家たち」 山種美術館(~6/21)
・「第4回 新鋭作家展 堀口泰代・對木裕里」 川口市立アートギャラリー・アトリア(6/6~6/21)
・「日本の妖美 橘小夢展~幻の作品を初公開」 弥生美術館(~6/28)
・「フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展」 東京都庭園美術館(~6/30)
・「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」 森美術館(~7/5)
・「着想のマエストロ 乾山見参!」 サントリー美術館(~7/20)
・「江戸のダンディズム 刀から印籠まで」 根津美術館(~7/20)
・「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」 東京ステーションギャラリー(~7/20)
・「フィンランドを生きた女性画家の軌跡 ヘレン・シャルフベック」 東京藝術大学大学美術館(6/2~7/26)
・「フランス絵画の贈り物」 泉屋博古館分館(~8/2)
・「没後180年 田能村竹田」 出光美術館(6/20~8/2)
・「レオナルド・ダ・ヴィンチと『アンギアーリの戦い』展」 東京富士美術館(~8/9)
・「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」 三井記念美術館(6/20~8/16)
・「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 原美術館(~8/30)
・「あの歌麿が帰ってきた!ー『深川の雪』再公開」 岡田美術館(~8/31)
・「画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」 三菱一号館美術館(6/27~9/6)
・「特別展示 発掘!知られざる原爆の図」 丸木美術館(6/3~9/12)
・「No Museum, No Life?ーこれからの美術館事典」 東京国立近代美術館(6/16~9/13)
・「ボルドー展ー美と陶酔の都へ」 国立西洋美術館(6/23~9/23)
・「セザンヌー近代絵画の父になるまで」 ポーラ美術館(~9/27)

ギャラリー

・「牧田愛 それとしてふるまう」 ラディウムーレントゲンヴェルケ(~6/6)
・「半田真規 なかきよの円卓景」 オオタファインアーツ(~6/6)
・「荒木経惟展」 タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー(~6/20)
・「椛田ちひろ Following the Shadow」 アートフロントギャラリー(~6/21)
・「トーマス・デマンド Model Studies」 タカ・イシイギャラリー(~6/27)
・「資本空間ースリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸 Vol.2 村上華子」 ギャラリーαM(~7/4)
・「線を聴く展」 メゾンエルメス(~7/5)
・「鈴木崇展 Form-Philia」 IMA CONCEPT STORE(~7/12)
・「伊東豊雄 ライフスタイルを変えよう」 LIXILギャラリー(6/4~8/22)

まず今月の展覧会で一番に挙げたいのは芸大美術館です。「フィンランドを生きた女性画家の軌跡 ヘレン・シャルフベック」展が始まります。



「フィンランドを生きた女性画家の軌跡 ヘレン・シャルフベック」@東京藝術大学大学美術館(6/2~7/26)

タイトルにもあるようにシャルフベック、フィンランドの画家ですが、必ずしも良く知られているとは言えません。

それもそのはず、そもそも日本では初の大規模個展です。フライヤーの裏面に掲げられた、どこか人の気配を伺うような自画像も大変に心象深いもの。期待したいと思います。

実に目を引くフライヤーではないでしょうか。洋画家、鴨居玲の個展が東京ステーションギャラリーにて始まります。



「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」@東京ステーションギャラリー(~7/20)

私がこの画家の名を知ったのは今から5年前。没後25年に際してそごう美術館で行われた回顧展のことでした。

時におどろおどろしいまでの酔っ払いや廃兵や老婆の姿。重厚な色遣いと塗りこめられた画肌には大いに迫力があります。ともかくは異様なまでの存在感に強い印象を与えられたものでした。

今回も遺作100点を出品。鴨居玲の全体像に迫る展示となるそうです。レンガ壁のステーションギャラリーとどう反応を起こすのか。作品と空間の関係にも注目したいと思います。

最後にギャラリー移転の情報です。清澄白河のギャラリーコンプレックスがビル取り壊しのため閉鎖。うちタカ・イシイギャラリーと小山登美夫ギャラリーが北参道へ移転しました。(小山登美夫ギャラリーは6月中旬に移転。)

「タカ・イシイギャラリーが北参道に移転 オープニングはトーマス・デマンドの8年ぶり個展」(fashionsnap.com)

タカ・イシイのオープニングは都現美の回顧展の記憶も新しいデマンドの個展です。新スペース見学を兼ねて見に行きたいと思います。

それでは今月も宜しくお願いします。
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