「渡邉良重展 絵をつくること」 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
「第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 絵をつくること」 
4/4~5/20



クリエイションギャラリーG8で開催中の「第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 絵をつくること」を見てきました。

2012年、植原亮輔と共に2012年にキギを設立し、アートディレクションやグラフィックの分野で活動する渡邉良重。今年の優れたグラフィックデザインを表彰する「第19回亀倉雄策賞」を受賞しました。

受賞作は洋菓子ブランド「AUDREY」のパッケージデザインです。「AUDREY(オードリー)」はイチゴやチョコを組み合わせたスイーツの専門店。一店舗目は横浜、二店舗目は日本橋の高島屋にオープンしました。



デザインの経緯が独特です。というのも、渡邉は元々、パッケージを植物から発想。発売元に提案します。しかしなかなか受け入れられません。一時はやめようとも考えたそうです。しかしさらに7〜8案を提示し、結果、基本になる今のデザインが決まりました。そこでブランド名の「AUDREY」も決定します。つまりデザイン先行であったわけです。



渡邉は受賞に際し、「飴玉やチョコレートの包み紙、デパートの包装紙や箱は、子どもの頃に触れた大切なデザインで、それを宝物にしました。」(受賞のことばより)と述べています。確かにデザインは愛おしいものばかりです。利用した後も手元に残したくなるかもしれません。



「余白の白が印象的」とは選考時の評です。白い雪の部分が効果的でした。トナカイにサンタも可愛らしい。まるで切り絵を見ているかのようです。



リボンも特徴的です。赤いドレスを着た女性がプレゼントを抱えています。さらにイチゴや草花に蝶も登場。花びらをトリミングしたデザインも華やかです。ポップでかつカジュアル。ウォーホルの作品を思い出しました。



なお展示は何も「AUDREY」だけではありません。渡邉がかつて手掛けたイラストレーションなどもあわせて紹介されています。



衣服に縫いぐるみにグラス、そして装丁と盛りだくさんです。渡邉の幅広い制作を知ることが出来ました。


5月20日まで開催されています。

「第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 絵をつくること」 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:4月4日(火)~5月20日(土)
休館:日・祝日。
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「大英自然史博物館展」 国立科学博物館

国立科学博物館
「大英自然史博物館展」
3/18~6/11



国立科学博物館で開催中の「大英自然史博物館展」のプレスプレビューに参加してきました。

大英自然史博物館のコレクションが初めてまとまった形で日本へやって来ました。

中でも最大の目玉は始祖鳥です。今から1億4000万年前の化石。ダーウィンが種の起源を著した2年後の1861年、ドイツのバイエルン州より第1標本が発見されました。現在、確認されている最古の鳥の祖先と言われています。


「始祖鳥」 ドイツ ジュラ紀後期 1億4000万年前

発見当時は直ぐさま鳥類として分類されました。何故なら翼と羽を持つことが分かったからです。しかしその後、幾つか標本が発掘されると、顎や爪などに爬虫類的な特徴があることが判明。さらに近年、いわゆる「羽毛恐竜」の発見により、鳥類以前の恐竜にも羽毛があったことが確認されました。飛べたのか、飛べなかったのかも良く分かっていません。よって厳密には現在の鳥類と直接関係あったとは考えられていないそうです。実際、解説には「鳥類なのか、恐竜なのか?まだ答えは出ていない。」とありました。


「始祖鳥」 ドイツ ジュラ紀後期 1億4000万年前

もちろん日本初公開です。発見や研究の経緯を記したパネル、ないし骨格を復元した映像も用意されています。標本から始祖鳥の謎を考えるのも面白いかもしれません。

さて展示の構成が秀逸でした。というのも、コレクションの形成過程、ないし研究の歴史に関わったコレクターや科学者に焦点を当てているからです。


「ハンス・スローンの肖像画の模作(画家、ステファン・スローターによる)」 18世紀中頃
 
例えば18世紀のロンドンの医師であったハンス・スローンです。ともかく収集に熱心。数多くの自然史分野の標本をコレクションします。のちに一括して国へ遺贈され、大英自然史博物館の創設につながりました。


「リチャード・オーウェンの肖像画(画家、ヘンリーピッカースギルによる)」 イギリス 1844年

自然史博物館は大英博物館の一部門からはじまりました。独立した施設にするべく尽力したのがリチャード・オーウェンです。大英博物館の自然史部門の部門長を務めていました。彼は多く収蔵されていた自然史の標本や資料を収めるため、新たな博物館の建設を主張。国に認められます。その結果、いわゆる分館として現在の地に1881年に開設されました。名は「大英博物館(自然史)」でした。


「モア全身骨格」 ニュージーランド 完新世 約500年前

オーウェンは比較解剖学者でもありました。何百種類の動物の命名や記述を行います。科学において「恐竜」という言葉も発案しました。また絶滅したモアを飛べない鳥として学名を付けます。そのモアの巨大な全身骨格も登場。同じく彼の同定したサメの化石などとあわせて展示されています。


「ジョゼフ・バンクスのタカラガイコレクション」 ブラジル、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリア

探検と冒険は大英自然史博物館に宝をもたらしました。一例が植物学者のジョゼフ・バンクスです。1768年、クック率いるエンデバー号に乗り、4年にも及ぶ探検航海で地球を一周します。数多くの植物や動物の標本を持ち帰りました。


「南極探検 氷点下の科学」展示風景

ディスカバリー号で南極点を目指したのがロバート・スコットです。現地で地形や地質に関する調査を行います。しかし帰途に悪天候で遭難。スコットは亡くなってしまいます。その遠征で集められた標本は、のちに妻の遺言を経て大英自然史博物館へと収められました。


「ニホンアシカ」 日本

日本に関する資料もありました。絶滅した「ニホンアシカ」です。また19世紀のチャレンジャー号が東京湾で採取したアンコウなどの海洋生物なども展示。佐賀県に落下した隕石も収集しています。20世紀においてはイギリス人と日本人の科学者による植物や菌類に関する共同研究も行われたそうです。


「オオツノジカ頭骨」 アイルランド 更新世後期 約1万3000年前

絶滅した動物の骨格も見どころの一つです。堂々たるはオオツノジカの頭骨です。かつての陸上で最大の鹿でした。気候変動の影響を受け、約8000年前に絶滅します。標本を大英自然史博物館が分析したところ、現在のタマジカに近い種であることが分かりました。


「サーベルタイガー」 アメリカ 更新世 1万2000年前

獰猛なのがサーベルタイガーでした。1万2000年前に生息。マンモスなどを狩って食料としていたそうです。また成体で1500グラムにも及ぶオオナマケモノなども大きい。変わり種ではドードーの成体模型です。意外なことに完全な剥製が一体も存在しません。よって解剖学の見地から復元されました。


「三葉虫」 モロッコ カンブリア紀後期 約4億8700万年前

三葉虫の化石も面白い。たくさん群れていますが、これは集団で交尾していた最中に窒息死したと考えられているそうです。


「ガラスケースのハチドリ」 南アメリカ

会場内の標本資料は約370点。大英自然史博物館のコレクションは8000万点にも及びます。全体からすればごく僅かに過ぎませんが、内容は動植物、化石、鉱石と多岐に渡っていました。現地でも一般に公開されていない貴重な資料も少なくありません。

なお展覧会は大英自然史博物館史上初の世界巡回展です。その最初の開催地に国立科学博物館が選ばれました。



最後に混雑の情報です。初日から多くの方が詰めかけました。3月18日で70分、翌19日に至っては100分もの待ち時間が発生しました。実際、私が春分の日の夕方に博物館前を通った際も、30分待ちの案内が出ていました。

主催者側の対応は迅速でした。というのも、3月22日より入場を整理券方式に変更。入口で整理券を配布し、そこに記載された時間帯に入場出来るシステムに変わりました。 

以降、少なくとも長時間の行列は解消しました。待ち時間は科博館内で自由に過ごすことが出来ます。整理券の記載の時間の少し前に特別展入場口に向かえば良いわけです。

整理券の待ち時間が最も長いのは土日の朝です。最大で40~50分です。午後から時間が縮小し、夕方前には解消します。一方で最も空いているのは金曜、土曜の夜間開館です。待ち時間はありません。


整理券の配布状況については大英自然史博物館混雑情報のアカウント(@nhm_konzatsu)がこまめに情報を発信しています。そちらも参考になりそうです。


「深海への探索」展示風景

会場内は原則撮影が可能です。ただしフラッシュ、三脚を使っての撮影は出来ません。ご注意下さい。


「大英自然史博物館展」展示風景

6月11日まで開催されています。おすすめします。

「大英自然史博物館展」@treasures2017) 国立科学博物館
会期:3月18日(土)~6月11日(日)
休館:3月21日(火)、4月10日(月)、17日(月)、24日(月)、5月8日(月)、15日(月)、22日(月)、29日(月)
時間:9:00~17:00。
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *4月28日(金)、29日(土)、30日(日)、5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)、7日(日)は21時まで開館。5月1日(月)、5月2日(火)は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生1600円、小・中・高校生500円。
 *金曜限定ペア得ナイト券2000円。(2名同時入場。17時以降有効。)
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「草間彌生 わが永遠の魂」 国立新美術館

国立新美術館
「草間彌生 わが永遠の魂」
2/22~5/22



国立新美術館で開催中の「草間彌生 わが永遠の魂」を見てきました。



ともかく入口先からして圧巻です。たくさんの絵画が広大な展示室の壁を所狭しと埋め尽くしています。その名こそ本展のタイトルでもある「わが永遠の魂」でした。



描き始めたのは2009年。多数が120号の正方形のキャンバスです。人の顔や動物などの具象的なモチーフと、抽象的なパターンを行き来させては、壮大なスケールの絵画世界を現出させています。草間は既に500点を完成。まだ制作が続いています。うち132点が揃いました。いずれも日本初公開でした。



色彩に多様、またモチーフは細微であり、時に大胆です。さらには有機性や抽象性云々など、連作を一言で括るのはもはや困難でした。率直なところ、この展示室に入った瞬間、うまく作品を受け止めることが出来ませんでした。多くの人が絵画を興味深げに覗き込んでいると同時に、作中の人らしきモチーフが、こちらを時に笑いながら見やっています。



ドット、ないしアメーバのような生き物は、キャンバスの中で繁殖、ないし増殖していました。自己生成を繰り返しているのでしょうか。際限がありません。思わず足がすくんでしまいました。



その「わが永遠の魂」に囲まれるのが立体作品です。「真夜中に咲く花」でした。草間得意の水玉に象られた花々です。まるで熱帯植物のように生命感に満ち溢れています。そして絵画に比べればやや親しみやすい。この空間を祝福するかのように咲き誇っていました。



さて展覧会の見どころは、何も近年の制作、つまり「わが永遠の魂」だけではありません。

会場は二部構成です。「わが永遠の魂」を一つとすれば、もう一方は草間の制作史でした。初期の1950年代からニューヨークでの滞在を経て、80年代以降、2000年頃までの活動を時代を踏まえて追っています。


「残夢」 1949年

「残夢」は20歳の頃の作品です。青い空と赤い地平。そこに植物とも人体とも形状のし難い何かが触手を伸ばしています。相応しい言葉ではないかもしれませんが、毒々しい。何やら魔物でも現れたかのようでした。


「太陽」 1953年 東京国立近代美術館

1950年代の「太陽」に水玉のドットが現れました。この頃から批評家の瀧口修造らに評価されます。何度か個展を開催しました。初期作品が網羅的です。あまり知られていない作品も多いかもしれません。


「The Man」 1963年 広島市現代美術館

ニューヨークへ渡った草間が最初に評価を受けたのがネットペインティングでした。小さな網目が画面を埋め尽くします。その網がドットのようにも見えました。そして突起物を家具などに貼り付けたソフト・スカルプチュアへと続きます。例えば「The Man」です。ニョキニョキとキノコのように生える突起物がヤカンを吊り下げています。一面の白でした。ともすると草間、鮮やかな色彩を特徴としますが、先のネットペインティングしかり、この時期はモノトーンの作品も少なくありません。



そして代名詞とも言えるかぼちゃも登場。草間は種苗業を営む家で育ちました。かぼちゃは身近な存在だったのでしょうか。かぼちゃの逞しさに魅せられたそうです。またハプニングのパフォーマンスでも一世を風靡します。ヒッピーカルチャーにも巻き込まれ、反戦や平和運動にも参加。「前衛の女王」と称されることもありました。代表作が映像の「草間の自己消滅」でした。何ともおどろおどろしい。草間が、植物や動物、さらに人間の全てを水玉で埋め尽くそうとしています。まるで儀式のようでした。


「黄樹」 1992年 フォーエバー現代美術館

1973年に体調を崩して帰国。入院生活を送りながら制作を続けます。70年代はやや小さなコラージュが目立ちました。イソギンチャクや鳥の目、それにナチスの国章などの多様なモチーフを取り込みます。いずれも内省的です。当時の心境、ないし体調が反映しているのでしょうか。また小説家としての活動にも言及がありました。さらに体験型インスタレーションの「ミラー・ルーム」や近年のコラボレーション作品へと展開します。ともかく草間の活動の領域は幅広い。シュールレアリスム、前衛、ミニマル、そしてポップへと新たな世界を切り開いています。

最後に会場内の情報です。早くも会期は1ヶ月以上経過。当初より人出が増しています。平日でもチケットの購入のための待ち時間が発生。土日を中心に入場への待機列も出来ています。

よって金曜の夜間開館を利用することにしました。乃木坂駅に到着したのは3月31日の18時30分前。券売所にも会場入口にも列はありませんでした。



写真は19時半前の状況です。草間展は「わが永遠の魂」のほか、ロビーの「オブリタレーションルーム」、そして野外の「南瓜」の展示については、携帯電話、およびスマートフォンでのみ撮影が可能です。カメラでの撮影は出来ません。



一通り、ほかの展示を見終え、再び「わが永遠の魂」のコーナーに来ると、入場時より人が減っていました。この日の最終入館は19時半です。係の方によればやはり金曜の夜間が一番空いているとのことでした。やはり狙い目は夜間開館のようです。



ちなみに券売所はミュシャ展と共通です。事前にコンビニやオンラインで確保しておくのが良さそうです。


「オブリタレーションルーム」 2002年〜現在

ロビーの「オブリタレーションルーム」は参加型のインスタレーションでした。入場時に半券を提示すると、一人一枚、水玉のシールがもらえます。それを部屋の中の好きなところに貼ることが出来ます。ただしシールの持ち帰りは許されません。


元は白一色のリビングルームだったそうです。しかしながらご覧の通り、もはや余白が探すのが難しいほどにシールで埋もれていました。オブリタレーションとは自己消滅です。確かに水玉のシールで壁も椅子もテーブルも消えていました。


「南瓜」 2007年 フォーエバー現代美術館

かぼちゃの巨大なオブジェが乃木坂方向の野外展示場に設置されています。こちらは観覧無料です。スマホを片手に記念撮影を楽しんでいる方も目立ちました。

「芸術新潮2017年4月号/草間彌生/新潮社」

草間の創作は未だ衰えることはありません。そのエネルギッシュな作品群に圧倒されました。



5月22日まで開催されています。おすすめします。

「国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂」@kusama2017) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2月22日(水)~5月22日(月)
休館:火曜日。但し5月2日(火)は開館。
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *4月29日(土)~5月7日(日)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
 *3月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)は高校生無料観覧日。(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

東京・ミュージアム「ぐるっとパス2017」が発売中です

東京の美術館や博物館を巡るのに便利な「ぐるっとパス」。4月1日より2017年度版が発売されました。



[東京・ミュージアム ぐるっとパス2017](@gruttopass
https://www.rekibun.or.jp/grutto/

対象は全80施設です。都内の主な美術館、博物館だけでなく、上野や多摩の動物園、それに葛西臨海水族園なども含まれます。

[ぐるっとパス概要]
価格:一冊2000円。
使用:各施設の入場券・割引券が綴られたチケットブック。
対象施設:都内の美術館や博物館など80施設。
有効期限:最初の利用日より2ヶ月。

価格は例年同様の1冊2000円。美術館や博物館などの入場券、割引券がセットになったチケットブックです。最初の利用日より2ヶ月有効です。それぞれ指定の展示に一回ずつ利用することが出来ます。

各施設によって割引形態が異なります。詳細は「ぐるっとパス」の公式サイトをご覧ください。

「ぐるっとパス2017」全80対象施設(東京都歴史文化財団)

今年度の最大の変更点は初めて都外に対象施設が出来たことです。横浜美術館、千葉市美術館、埼玉県立近代美術館が加わりました。



横浜美術館と千葉市美術館は常設展示がフリーです。(企画展は割引。)一方で埼玉県立近代美術館は企画展に入場することが可能です。ただしコレクション展は観覧出来ません。別途料金が必要となります。

横浜美術館:コレクション展入場、企画展割引。(一般料金から100円引き)
千葉市美術館:所蔵作品展入場、企画展割引。(一般料金から50%引き)
埼玉県立近代美術館:企画展入場。

横浜美術館の企画展割引は100円ですが、千葉市美術館は5割引です。ほか静嘉堂文庫美術館も「ぐるっとパス」に参加しました。

4月から様々な展覧会もスタートします。そこで今月中に「ぐるっとパス」で見られる主な企画展をリストアップしてみました。

[ぐるっとパス2017で4月中に観覧出来る主な企画展]

「特別展 奈良 西大寺展」@三井記念美術館(4/15〜6/11)
「ニッポンの住宅デザイン展」@パナソニック汐留ミュージアム(4/8〜6/25)
「今様ー昔と今をつなぐ」@渋谷区立松濤美術館(4/5〜5/21)
「開館30周年記念特別展 柿右衛門展」@戸栗美術館(4/1〜5/14)
「山崎博 計画と偶然」@東京都写真美術館(3/7〜5/10)
「板倉鼎・須美子展」@目黒区美術館(4/8〜6/4)
「挿絵本の楽しみ」@静嘉堂文庫美術館(4/15〜5/28)
「片山正通的百科全書」@東京オペラシティアートギャラリー(4/8〜6/25)
「川原慶賀の植物図譜」@埼玉県立近代美術館(4/8〜5/21)

上記の9展示の一般観覧料を合わせると8200円です。その全てが「ぐるっとパス」1冊で見ることが出来ます。これだけで6200円もお得になります。

なお東京都庭園美術館は4月10日以降、エレベーター設置工事のため、約半年間休館します。その間は「ぐるっとパス」の利用が出来ません。ご注意ください。



さてもう一歩踏み込んでお得なのが、東京メトロ、もしくは東京都交通局が発売している、一日乗車券付きの「ぐるっとパス」です。

2017年度版「メトロ&ぐるっとパス」を発売します(東京メトロ)
「都営deぐるっとパス」を発売します(東京都交通局)

「ぐるっとパス」1冊に一日乗車券が2枚付いて2700円です。各一日乗車券の値段を考慮すると、東京メトロで500円、東京都交通局で700円ほどお得となります。私も都営ユーザーのため、毎年「都営deぐるっとパス」を購入しています。

「東京のちいさな美術館めぐり/浦島茂世」

小規模の美術館や博物館を網羅しているのも特徴です。「ぐるっとパス」で初めて訪ね歩く施設も少なくありません。実際、私もかつてこの「ぐるっとパス」を利用して、朝倉彫塑館、松岡美術館、五島美術館、たばこと塩の博物館などへ初めて行きました。美術館へ行く一つの動機付けにもなり得ます。


今年もぐるっとパスを片手に展覧会を巡り歩いては如何でしょうか。

[実券販売窓口]
「ぐるっとパス2016」全80対象施設のチケット販売窓口
東京観光情報センター(都庁第一本庁舎1階)
リブロ汐留シオサイト店・調布店、パルコブックセンター吉祥寺店、上野公園案内所、浅草文化観光センター、/TIC TOKYO(東京駅日本橋口)/中央区観光情報センター(京橋エドグラン内)ほか
「メトロ&ぐるっとパス」と「都営deぐるっとパス」は主要駅の定期券販売所などで発売。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「ふたしかなその日展」 東京藝術大学大学美術館・陳列館

東京藝術大学大学美術館・陳列館
「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」
3/18〜4/5



幅広い世代の現代美術家を交えた展覧会が、東京藝術大学大学美術館の陳列館にて開催されています。



はじまりは「夜」。一面の暗室です。正面に掲げられたのが森山大道の「新宿」でした。お馴染みの新宿の雑踏の光や闇を捉えた一枚です。そして側面を見れば荒木経惟の「センチメンタルな旅」も控えていました。



より視点はプライベートです。同じモノクロームながらも両者の個性は全く異なります。その邂逅です。かつてオペラシティーで行われた「森山・新宿・荒木」展を思い起こさせました。



白い台の上に「畳」と思しき板がのっています。弓削真由子です。タイトルは「畳図」。初めは本物の畳だと見間違えてしまいました。



実は鉛筆画でした。細かな畳の目地までをリアルに写し取っています。しかも目をこらすと、所々に髪の毛や埃らしき汚れも見えました。モチーフの畳は作家の弓削が実際に使用したものだそうです。よってゴミも生活の痕跡なのでしょう。それを残さず描き取っています。

展覧会の概要に「極私的ドキュメンタリー」との言葉がありました。これぞまさしく極私的ではないでしょうか。日常に集積した欠片を包み隠さずに提示していました。



さらに米田知子の写真や中平卓馬のスライドも展示。篠田太郎は自作の望遠鏡で月を追っています。いずれもテイストの異なる作家を「夜」という空間へ巧みに落とし込んでいました。

1階の「夜」に対するのが2階です。「朝ー昼」でした。今度は光の満ちた空間が広がっています。



東日本大震災の被災地に向き合ったのが小森はるかと瀬尾夏美でした。単にテキストで記録するだけに留まらず、ドローイングや写真、そして絵画に起こして表現しています。陸前高田市の造成地の下に埋もれた声を紡いだ映像も興味深い。「被災と復興」(解説より)の様々な問題について触れています。



同じく震災に関するのが川久保ジョイでした。黄、緑、紫の3色からなるプリントの作品です。美しいグラデーションを描いています。舞台は福島第一原子力発電所から800メートルの地中です。そこに一時的にフィルムを埋め込み、焼きついた色を取り出しました。



水面から陸上を捉えます。楢橋朝子です。水面とはいえ、画面の何割かは水中です。波打つ水そのものも写されています。船の動きによるのでしょうか。景色が歪んで見えます。まるで水が地上を飲み込もうとしているかのようでした。

一際目立っていたのが、城戸みゆきの「忘れたことさえ覚えていない」でした。屋根を模したインスタレーションです。2010年に韓国の滞在時に作られた作品の再制作。会津の芸術祭に出品されました。



一体、何面の屋根があるのでしょうか。その全てが腰の高さほどの位置に吊られています。青、黄色、緑、そして茶色と様々です。素材は紙でした。僅かな振動、ないし館内の風を受けているのでしょうか。微妙に揺れていました。家屋の連なる町の光景のようにも見えます。ただし屋根の下は何もありません。

本企画は同大の教授である長谷川祐子氏による「アートプロデュース演習」授業の一環。キュレーションを東京藝術大学大学大学院のアートプロデュース選考の修士1年生が担当しています。


会場は芸大美術館入口左手の陳列館です。入場は無料でした。



4月5日まで開催されています。

「Seize the Uncertain Dayーふたしかなその日」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
会期:3月18日(土) 〜4月5日(水)
休館:月曜日。但し3月20日(月・祝)は開館し、翌21日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *入館は17時半まで。
料金:無料。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

2017年4月に見たい展覧会

東京では桜の開花も進み、春の展覧会シーズンもたけなわです。4月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「歌川国芳 21世紀の絵画力」 府中市美術館(~5/7)
・「藤森照信展ー自然を生かした建築と路上観察」 水戸芸術館(~5/14)
・「絵巻マニア列伝」 サントリー美術館(~5/14)
・「燕子花図と夏秋渓流図」 根津美術館(4/12~5/14)
・「ロシア科学アカデミー図書館所蔵 川原慶賀の植物図譜」 埼玉県立近代美術館(4/8~5/21)
・「特別展覧会 海北友松」 京都国立博物館(4/11~5/21)
・「絵本はここからはじまった ウォルター・クレインの本の仕事」 千葉市美術館(4/5~5/28)
・「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」 奈良国立博物館(4/8~6/4)
・「茶の湯」 東京国立博物館(4/11~6/4)
・「茶の湯のうつわー和漢の世界」 出光美術館(4/15~6/4)
・「19世紀パリ時間旅行ー失われた街を求めて」 練馬区立美術館(4/16~6/4)
・「奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」 三井記念美術館(4/15~6/11)
・「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」 森アーツセンターギャラリー(~6/18)
・「花*Flower*華 琳派から現代へ」 山種美術館(4/22~6/18)
・「没後150年 坂本龍馬」 江戸東京博物館(4/29~6/18)
・「アドルフ・ヴェルフリ展」 東京ステーションギャラリー(4/29〜6/18)
・「日本、家の列島ーフランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン」 パナソニック汐留ミュージアム(4/8~6/25)
・「ファッションとアート 麗しき東西交流」 横浜美術館(4/15~6/25)
・「ランス美術館展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(4/22~6/25)
・「ニューヨークが生んだ伝説 ソール・ライター展」 Bunkamura ザ・ミュージアム(4/29~6/25)
・「ヴォルスー路上から宇宙へ」 DIC川村記念美術館(4/1~7/2)
・「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」 東京都美術館(4/18~7/2)

ギャラリー

・「五木田智央 Holy Cow」 タカ・イシイギャラリー 東京(~4/15)
・「田村友一郎 G」 ユカ・ツルノ・ギャラリー(~4/22)
・「パウロ・モンテイロ展」 小山登美夫ギャラリー(~4/22)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2017ー繊細と躍動」 POLA MUSEUM ANNEX(〜4/23)
・「金子富之展 荒ぶる神々」 ミヅマアートギャラリー(4/5〜4/28)
・「TDC 2017」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(4/5〜4/28)
・「浅見貴子ー彼方/此方」 アートフロントギャラリー(4/7〜4/30)
・「ライゾマティクス創立10周年 Rhizomatiks 10」 スパイラルガーデン(4/19〜30)
・「鏡と穴ー彫刻と写真の界面 vol.1 高木こずえ」 ギャラリーαM(4/8~5/13)
・「ジョージェ・オズボルト展」 TARO NASU(4/8〜5/13)
・「渡邉良重展 絵をつくること」 クリエイションギャラリーG8(4/4〜5/20)
・「リー・キット展 Not untitled」 シュウゴアーツ(4/15〜5/20)
・「南極建築 1957-2016」 LIXILギャラリー(〜5/27)
・「椿会展2017」 資生堂ギャラリー(4/4〜5/28)
・「アブラハム・クルズヴィエイガス展」 メゾンエルメス(4/21〜7/2)
・「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」 TOTOギャラリー・間(4/19~7/16)

今月はまず京都、奈良に注目です。桃山時代の絵師、海北友松の回顧展が京都国立博物館ではじまります。



「特別展覧会 海北友松」@京都国立博物館(4/11~5/21)

出展は70点。チラシ表紙の「雲龍図」などの代表作のほか、絵画からの里帰りや新発見作も出品されます。(展示替えあり。)これまでにも東京国立博物館の「栄西と建仁寺」や「妙心寺」展などで、海北友松の作品が出ましたが、今回ほどのスケールでの展覧会はありませんでした。


永徳、等伯、山楽・山雪など、京都国立博物館で行われてきた桃山絵師シリーズの完結編です。京都の単独開催です。もちろん東京への巡回はありません。

慶派発祥の地での展覧会です。奈良国立博物館で「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」が開催されます。



「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」@奈良国立博物館(4/8~6/4)

初期作から晩年まで88件の作品で快慶の業績を辿ります。既に主な出陳品もWEBで公開中です。海外の所蔵品も含まれます。


秋には東京国立博物館で「運慶展」が行われます。あわせて見ておきたいところではないでしょうか。

一方での東京です。上野で大型の展覧会が控えています。東京都美術館で「ブリューゲル『バベルの塔』展」がはじまります。



「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」@東京都美術館(4/18~7/2)

ブリューゲルの「バベルの塔」が来日するのは約24年ぶりのことです。さらに現存する油彩が25点しかないボスも2点公開。16世紀のネーデルラントの芸術を俯瞰します。


ボス、ブリューゲルともに日本での展示機会は多くありません。さらに「バベル」の知名度は抜群です。ひょっとすると早々から混み合うかもしれません。

最後にギャラリーの展覧会で一つ、期待したいのが、TOTOギャラリ・間です。坂茂の個展が開催されます。



「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」@TOTOギャラリー・間(4/19~7/16)

坂茂は災害支援にも積極的に取り組む建築家です。一昨年には、世田谷文化生活情報センターで「紙の建築と災害支援」と題した展覧会が行われました。また2013年には水戸芸術館で初めての大規模な個展も開催されました。私もともに見に行きました。

今回は最新のプロジェクトを模型や映像を通して紹介するそうです。同ギャラリーとしては18年ぶりの展示です。注目を集めるのではないでしょうか。

それでは今月もよろしくお願いします。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »