◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「~ていなく」について補足します。

2009-02-04 20:42:52 | めちゃくちゃな敬語
                     見えなく・・・はない
 「~ております」は謙譲語なので「~ておられる」という尊敬表現に違和感を持つ人がいるという話をNHKの番組でしていた、それ以来、「~ておられる」は誤用だ、「~ており」「~ておらず」も変だというふうに流れていき、あっという間に「~ていて」「~ていなく」に移っていった、ということを1月28日に書いたのですが、今日は「~ていなく」について補足説明をします。
 報道などで、本来「~ており」と言うところで「~ていて」と言うのはちょっと軟らかすぎないかなぁという感じはしますが、文法が間違っているわけではありません。ところが、「~ていなく」は日本語として成立していないのです。これを間抜けだと感じない人は要注意ですよ( ̄д ̄)! 例えば、「架線は切断されていなく」は、正しくは「架線は切断されておらず」ですね。
 例えば、「身支度をして出発した」を硬めに言うと「身支度をし、出発した」となり、接続助詞「て」を省くことになりますが、これと同じ感覚なのか、あるいは、「間違いではなく、正しい」の「なく」と混同しているのか。「身支度をし」の「し」は「する」という動詞(自立語)の連用形であり、「出発した」に連なっているわけで、「て」がなくても十分これで成立しています。「間違いではなく」の「なく」は形容詞(自立語)の連用形で、「正しい」に連なって成立しています。でも、助詞と助動詞は常に自立語の下に付いて文節を構成する付属語であり、その連用形を自立語の連用形と混同してはいけません。
 「切断されていない」の「ない」は打消の助動詞で、その連用形が「なく」ですが、「見えなくなる」「見えなくて」のように他の活用語や助詞に連なるから連用形と言うのであって、「なる」や「て」を省くことはできないのです。「なる」があるから結果が分かるわけで、「見えなく」だけだと分かりません。「て」が前後の意味上の関係を示しているのであり、これを省くと後が続かなくて意味不明になります。「切断されていなくて」まで言って初めて成立するのです。
 助動詞でも、「殴られ、蹴られ、転倒した」のような中止形というのがあって、それは耳に慣れた言い方ですが、「切断されていなく」はどうですか? 同じ打消の助動詞でも「ぬ」の連用形「ず」の中止形はずーっと使われており、「身動きもせず、ただ座っていた」「切断されておらず、大丈夫だと思った」というのは当たり前の言い方です。これがあったから「~ていなく」とは言わなかったのでしょう。「身動きもしなく、ただ座っていた」とはだれも言いませんね。
 「~ており」「~ておらず」は「~ていて」「~ていなくて」より硬めの表現というだけで、間違ってはいないのです。メディアもちょっと前までは「~ており」と言っていたのに、今は「~ていて」と言っていますよね。でも、さすがに「~ていなくて」とは言いにくいと見えて「~ておらず」は残っていたのですが、「~ていなく」が広まり、一般の人の文章でも見ることがあります。メディアは、正誤はさほど気にしない、一斉に同じような流れになる、という性質がありますからね、困ったものです。
 芸能人が変な言葉を乱発するのは単に流行のキーワードを盛り込みたいだけ。メディアは、正誤をじっくり考える暇がない、たとえ誤りであってもみんなで言えば怖くない、いつもそういう姿勢です。一般の人は、強制的に慣らされ、いつしか変だと思わなくなるのでしょうけれども、そうやってスーパースプレッダーが日本語をどんどん変えていってもいいのでしょうか? そんなものは変化として認める気にはなれませんよぉ~。
コメント
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