ネットに流れている情報を調べる限りソニーはバッテリー事故発表後も不具合のメカニズムと自主交換対策の決定が何故遅れたのか、明確に説明していない。しかし、パソコンが発火した事故写真を見ると一つ間違えば火災を起こし顧客の財産や生命に危険を与える恐れがあり、仮に事故の確率が低くともメーカーは説明責任がある。
この手の問題を起した時の対応で会社の危機管理力が問われる。人身事故を起した時三菱自動車の企業体質そのものが腐っていたと白日の下に曝された一方で、松下電器の徹底した取り組みはイメージ作りを含めその後の危機管理の手本となり寧ろブランドの信頼を高めた。
松下電器の発表に比べるとソニーの今回の対応は言い訳じみていて告知が徹底していない。発表を見てもユーザは何が問題で最悪何が起こるのか、素早く交換すべきなのか当座は使い続けても良いのか等明確な指針が示されてない、ある意味非常にポリティカルな内容になっている。
ソニーの曖昧な姿勢の理由は二つ考えられる。第一に、この後起こると思われる訴訟もしくは損害賠償交渉で不利益になる情報を公表しないと判断と考えられる。全責任を被ってパソコンメーカーのリコール費用まで負担するとなると膨大な費用になるのである。
松下電器がやったように年末商戦の最中全製品の広告を一旦中断しバッテリー交換の広告をぶち、顧客一人一人に告知する費用だけでも気が遠くなる。全世界の顧客が対象で、該当するパソコンを買ったかどうか分からなければ、960万の顧客の絞込みが出来ないので告知費用は松下の比ではない。バッテリーの材料費と交換作業だけがコストではないのである。
第二に、更に交換決定をしていないHPなどのパソコンメーカーに対する配慮が必要だ。下手に全て問題はバッテリーというと、交換しないというメーカーの根拠をなくし梯子を外すことになるのだ。これもまた危機管理の初動を誤ったつけだが他に選択はない。
ソニーの発表の裏側にはこのような事情が隠されているというのが私の「憶測」だ。そしてユーザ視点が欠けていると非難されるのを避けるため、原因を曖昧にしたまま自主交換すると言う判断に追い込まれたというシナリオとなった。憶測に次ぐ憶測だが、私が判断しなければならない立場に立っても今となってはこうするしかないだろう。■