かぶれの世界(新)

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サブプライム不安の世界連鎖の構図

2007-08-14 22:57:14 | 国際・政治

先月8日に「米国の信用力」で米国の影響力の陰りを、「米国がくしゃみしても元気な世界」と喩えた。しかし、その後これまた春から度々取り上げてきたサブ・プライム(低所得者向け住宅ローン)の焦げ付きが一向に治まらず、金融システムの安全を脅かすほどに深刻化した。

くしゃみと思ったら実は米国は肺炎になりそうなくらい悪性の風邪を引いていた、しかもその風邪は伝染病だったというわけだ。世界の市場は軒並み大幅に値を下げた。世界中に投資されたリスクマネーを回収し、最も安全とみなされる商品(米国債)に向かう、所謂「質への逃避」が起こった。

この不安の世界連鎖の構図はどう読み解くべきか、色々な場所で色々な症状が現れており、私には残念ながら解読できるほどの情報も能力も欠けている。しかし例によって大胆で当てずっぽうな分析をやってみる。

「見えない恐怖」が「質への逃避」を呼んだ

元々は低所得層向けの住宅ローン専門会社が住宅価格急騰を背景に、バブルの金儲けに参加できますよといって、ズブズブの貸出審査で規律に欠ける貸し出しをした。ところが住宅価格が下がったため返済見込みのないローンは現在35兆円程度と見られている。

住宅ローン会社が返済を証券化(極めてハイリスク・ハイリターン)し、ヘッジファンドはこれを組み込んだ金融商品を開発し、世界中の金融機関が購入した。具体的には大手の金融機関傘下のヘッジファンドへの投資した資産の価値が毀損した、損を出したというわけだ。

問題は今回ヘッジファンドが5-6倍のレバレッジを利かしていたので投資金額をはるかに越えるインパクトが生じた。しかもヘッジファンドの投資活動は透明度ゼロ、この後なにが出てくるか見えない恐怖で世界の株式市場から資金を引き上げ質への逃避、つまり米国債に資金が向かった。

端的に言うと、ヘッジファンドの不透明性が不安の増幅器になったといってよい。投資するときは不透明性がリスクを過小評価し、一旦問題が起こると見えない恐怖が必要以上の反応をした。その意味でもヘッジファンドの活動に規制をかけもう少し透明性を求めるべきというのが今回の教訓だと私は繰り返したい。

欧州の反応は過剰か?

今日の日本経済新聞によれば米欧日の中央銀行は過去1週間で合計42兆円もの資金を投入し、躍起になって市場の不安を沈静化しようと努めてきたが、依然市場は疑心暗鬼といってよい。中でも欧州の際立った巨額の投入は私には過剰に思える。

何故、欧州中央銀行(ECB)が米国よりも巨額を投入して市場の沈静化を図っているのか。欧州中央銀行が狼狽とも思える過剰介入をしたのは経験のなさとの指摘がある。きっかけはフランスの最大手銀行BNPパリバが参加のファンドの損失に動転し資金の出入りを凍結したことから一気に信用収縮の危機が生じ、ECBが急遽資金供給するにいたった。

その理由は損失が銀行に直接的な影響を与えた為だ。欧州の銀行はグローバル化戦略として米国の証券化されたサブプライムローンを直接購入していた為、一気に尻に火がついたと見られる。米英日の殆どの銀行はそんな高リスク商品をそのまま買うようなリスクは冒さなかったはずだ。

最終責任は米国、バーナンキ総裁の試練

サブプライム危機が世界に飛び火したのは、今や金融システムは世界中で繋がった一つのグローバルシステムであることを証明したといえる。原因を遠く辿れば、ITバブルを境にグリーンスパン元連銀議長がとった超低金利政策が住宅バブルを引き起こして今日に至ったという説が有力であると私は考える。

今回のグローバル信用収縮を引き起こしたグランドゼロ、つまり震源地はサブプライム問題を起こした米国である。米国が早急に問題の根を絶たない限り不安の連鎖を断ち切ることは出来ない。しかしまだあちこちに地雷が埋まったままであることは良く理解されている。

2,3年前に貸し出されたローンは最初の2年の返済を緩やかにし今年から来年にかけて高利の返済が始まる。しかし住宅価格が暴落した今返済の道が絶たれた人はかなりいると見られている。米国の潜在成長力が低下する中バーナンキ氏の取りうる選択は限られている。

米国経済は最大の武器である金利低下を簡単に行使できない情勢になりつつある。既に物価上昇の兆しがありインフレ耐力が減退している一方で、景気が軟化している兆しも出てきており、上手くバランスをとる必要がある。簡単に利下げできないというわけだ。

経済成長が徐々に速度を下げる中でインフレ懸念が生じているという難しいパズルをどう解明し、どう答えを出すかバーナンキ議長に出された就任後初の難問といってよい。しかも国内だけ考えれば好いともいえない。もしそういう職名があるとすれば「世界連銀議長」としての判断が求められる。■

コメント
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