14日に書き込みした「サブプライム不安の世界連鎖の構図」の続編です。2月に起こった中国発の世界同時株安と区別する意味で、「不安の世界連鎖」とか「見えない恐怖の世界連鎖」とか思いついたが、今朝方ニュースが報じていた「世界連鎖株安」を採用して今後議論することにしたい。
私の仮説「世界連鎖株安の構図」はほぼ妥当であったと思うが、世の中は必ずしも私と同じ見方をしていないので、誤解を避けるため仮説を修正し、関連して世の中の見方をいくつか紹介する。
不透明性の問題-誰が犯人か
サブプライム問題の震源地は規律のない貸し込みを続けた米国の住宅ローン会社と資金を提供した金融機関だが、それが何故世界に飛び火して信用不安を引き起こし、世界連鎖株安に波及したのか。
専門家は非常にリスクの高いサブプライムローンを細切れにして証券化する「金融技術」を最大の問題にしている。証券化の過程でリスクが希薄化され、それを十分理解しないで購入されリスクを世界にばら撒いたと。
リスクが見えなくなったもう一つの原因はリスク評価の「甘い格付け」が市場をミスリードしたことである。格付け専門会社をもっと厳しく監督すべきという説が出てきているようだ。
高度に発展した証券化技術に格付け機関を含む市場参加者がついていけなかった。しかし、何を買っているか知らずに巨額の投資をしたというのはプロの言い訳としては問題があると私は思う。リターンの大きさに目が眩みリスクを検証しなかった強欲さを棚に上げるのかと言いたい。
いずれにしても私が主張したヘッジファンドの不透明性よりも、今回商品そのものとそれを如何に正しく評価できなかったかの方に焦点が集まっているようだ。
中央銀行のアクションは概ね妥当
米国連銀が先週公定歩合を0.5%引き下げると発表すると、金曜日のNY市場は沈静化した。引き続き今週はアジア・欧州市場も大きく値を戻した。
私は欧州銀行の巨額の資金投入は過剰とみなしたが、概ね適切であったというのが大方の見方だ。市場は中央銀行の強い意思を見て取って反応したというべきだろう。
しかし、米国連銀の公定歩合(ディスカウントレートという)は言わば口先介入みたいなもので、このあとFFレートを下げるか否かが焦点になる。市場はFFレート下げを折込んで沈静化したが、バーナンキ議長は極力金利下げを避けたいと考えているのは明らかで、次のFOMCが注目される。
今日の日本経済新聞によると欧州は元々可能性が高いと見られていた金利上昇をやるべきか、様子を見るべきか、欧州の中でも意見が割れているらしい。インフレ懸念を抱える米国も難しい判断が迫られている。
まだ終っていない
東京証券市場の日経平均は前日比235円高で前場を引けた。しかし、昨日のNY証券市場は小幅高で不安心理から抜け切れてないように感じる。当局の強い意志は心強いが、上記の不透明性は何ら解決された訳ではなく、この後誰がババを掴まされるか誰もわかっていない。
しかも、爆心地であるサブプライムの爆発は終っていない。これから続々と高利の返済が始まるローンを控え、今後更に焦げ付きが増えると専門誌は報じている。カリフォルニア州などの大住宅市場の値下がりが続くと、優良住宅ローンの焦げ付きにまで発展し、傷跡がさらに広がる恐れがある。
そうなると、ある日突然日米欧のとある金融機関かその傘下のヘッジファンドが保有する証券の評価額が値崩れし、ニュースを聞いた顧客が支払いを求めても現金がない事態が起こり、金融不安が再発する恐れが十分にある。中央銀行の出動は間違いないにしても。
世界中がこの不安を抱えたまま何も出来ず見守っている。こうなると「実体経済は問題ない」という言葉も空しい。既にウォールマートはサブプライム問題で消費が落ちることを見込んだ業績下方修正をした。米国の消費が不調になると日本を含むアジアへのインパクトは半端じゃない。
蛇足: NYタイムズは今のところ「大負け三人組」はベアスターンズ、BNPパリバ、USBだといっているがある日突然ヒットチャートトップに誰かが躍り出ても不思議ではないという。ある金融会社CEOの言葉を引用して「投資家は市場から撤退することはない、安定している銘柄に変えろ。誰も買わないのを買うのがベスト、何故なら誰も売らない(?)」というオチに笑えるでしょうか。■