世界経済減速でも高止まりの原油価格
昨年11月に原油価格は50%しか実需を反映しておらず、30%はヘッジファンド等の短期資金、20%は年金等の機関投資資金の流入により押し上げられたもので、100㌦を越えると世界経済が必然的に減速して、徐々に実需を反映した価格に戻ると予測する記事を書いた。
その後原油価格は80㌦台まで下がったが、現在は90㌦前半まで戻し私の仮説どおりに原油市場は動いていない。ここに来て世界経済成長のスローダウンは避けられない情勢になったのは明らかなのに何故だろうか。この問いに対する答えとして、03年以降事情が変わったという仮説を見つけたので紹介したい。
石油は財か資産か
昨日東京に戻る飛行機の中で、日本経済新聞に伴金美教授の石油価格と経済の関係を分析した解説を見つけた。先ず現下の世界経済減速は米国のサブプライム問題が原因であり、原油価格高騰は直接要因ではないという。その上で石油等の枯渇資源は財であるとともに資産の性質を持ち、原油価格は他の金融資産と同様に収益率を最大にする裁定が働き採掘量が決まっているという。
言い換えると通常の商品の需給と異なり、バブルが生じることもあるということである。思い起こせば、約20年前頃に半導体メモリー(DRAM)がショートした時、商社などが買占め価格高騰した。半導体の場合リードタイムが長いといっても時間をかければ生産増が可能なので一時的な現象で終ったが、当時は半導体が投機の対象になるとは全くの不測の事態であった。
化石燃料依存度は価格決定要因か
マクロで見ると世界経済はこの状況に対応している。11月に書いた記事では、75年から04年までの日本の石油使用量が全く増えず、増加分は代替エネルギー源で賄ってきたと書いた。上記解説の引用(IEA)によると世界のエネルギー供給源の石油依存度は75年の44.4%から2005年の35%に減少、差分は天然ガスと原子力が代替している。
石炭・石油・ガスの化石燃料依存度は、75年日本が91.8%、世界は85.6%だったが、2005年は夫々82.1%、81.1%となっている。日本のエネルギー転換は世界の倍の速度で進み、化石燃料依存度から見るとやっと世界と同レベルになった。勿論その過程で日本の省エネ化が進んだのだが。いずれにしても世界も原油価格変動に対する調整能力を高めた。
石油価格不感症時代の到来?
伴教授は過去10年の動向を分析して、相対的な石油依存度の低下と原油価格高騰が新たなビジネス機会を生んだこと、これに加えて堅調な世界経済を反映して原油高騰に需給が余り反応しない構図になった、つまり原油価格が高騰しても需要が減らなくなったと説いている。確かにこの仮説は今までの状況をよく説明しているように見える。
しかし、まだ結論は出てないと私は思う。確かにサブプライムが世界経済減速の原因だとしても状況はもっと悪化すると、石油需要の低下は避けられないだろう。遠くない時期に投機資金はより安全な国債などに流出し、結果として需給の変化が原油価格に大きく影響するほうに賭けたい(あるべき姿として)。■