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ドイツが絶対にギリシャを救済しなければならない理由

2012-05-18 11:51:38 | 国際・政治

ギリシャ再選挙の衝撃

総選挙後に新政権の枠組みが決められなかったギリシャは、来月17日に再選挙が決定し16日から事実上の選挙戦に突入したと報じられた。緊縮財政路線に反対する急進左派連合が議席数を伸ばし連立政権をリードすると、ユーロ圏からの離脱が現実味を帯びてくると見られている。

既に市場はギリシャのユーロ離脱をある程度折込み始めたかのように動いている。昨日の日本経済新聞は欧州不安がアジアに波及したと報じた。一昨日のアジア株が今年最大の下げを記録、リスクを嫌うマネーは日本国債に流入し長期金利が1年7ヶ月ぶりの低水準になったとトップで伝えている。個人的には私の個人資産もしっかり影響を受けて又もや元本割れに沈んだ。

フランスとギリシャの選挙結果は、欧州財政危機の取り組みとして緊縮財政路線一本で突き進む限界を鮮明にした。仏大統領選後に注目された独仏首脳会議では、緊縮財政と経済成長の両立を合意し、ギリシャのユーロ離脱に否定的な立場を表明した。だが、ギリシャの総選挙結果とその後の展開は事態が容易でないと冷や水をかけた。

緊縮財政原理主義路線は死んだ

今後ギリシャの政変の行方によって、欧州や世界がどのような展開を見せるだろうか。ギリシャの再選挙はユーロ圏から離脱するか否かギリギリの選択をする国民投票の性格を有することになった。専門家は緊縮財政一本やりが失敗したと見做し軌道修正があると予測している。

日経は2つのケースを予測している。ケース1: 新政権が緊縮財政を拒否し欧州は支援を停止、早ければ6月にも資金が枯渇し年金や給料の支払いが止まり経済の混乱からユーロ離脱に追い込まれる。ケース2: EUが譲歩して歳出削減目標達成時期を遅らせ、緊縮財政の痛みを和らげ時間を稼ぐ。

ファイナンシャルタイムズは具体的に4つのシナリオ(1)従来計画の断行は必ず政治的に失敗する、(2)緊縮財政を続けプライマリーバランスを回復させてからデフォールトする、(3)従来計画を撤回し対外債務をデフォールトするがユーロ圏には留まる、(4)今すぐ自発的に離脱する、を紹介し、後からデフォールトするシナリオを勧めている。私はデフォールトありきの姿勢が気になる。

ギリシャのユーロ離脱はユーロ解体の始まり

緊縮財政路線一本は現実的でないことがコンセンサスとして出来上がったと私も感じる。それは世界的な理解で欧州のアプローチが極端に過ぎたと理解する。実は緊縮財政に拘るドイツも足元で反乱の声が上がり、オランダでも緊縮財政見直しを求める地方選結果が出たという。

だが、緊縮財政の見直しとギリシャのユーロ離脱は別の話と考えるべきだ。ドイツ強硬派のジョブレィ財務相はギリシャのデフォールトにユーロは耐えうると発言したといわれる。私の理解が正しければ、とんでもない思い上がりの見誤りだと私は思う。市場はそれ程生易しくない。

ギリシャが離脱すると市場は次のターゲットとしてスペインやイタリーを狙って仕掛けるだろう。既にスペインの長期金利が危険値まで上昇したと報じられている。一旦ユーロ離脱ありの姿勢を見せれば、市場はユーロ解体までしつこく仕掛けてくるだろう。

ドイツはギリシャ救済の責任が

ここまでは能書きだ、随分長い能書きだった。これからが本論であり結論だ。ドイツは再選挙を選んだギリシャを軟着陸させ、世界経済への悪影響をミニマムにする責任がある。それはドイツにとってもベストであると私は考える。しかも、それはドイツだけしか出来ないことだ。

EUは27カ国の加盟国からなり政治的には独立しているが、資本や人の移動は完全に自由化された一つの国のように振る舞い、日本の約2倍のGDPを産出しその3割をドイツが占める。ドイツは域内の最強国で、EUシステムのお陰でダントツに利益を上げた国だ。

表裏一体の勘違い

ギリシャや他の財政危機に陥った南欧諸国は、EUに加盟して独仏など豊かな国のような生活が出来ると勘違いし借金を積み重ねた。一方ドイツはドイツで、南欧諸国の財政危機が引き起こしたユーロ安のお陰で競争力を増した車などを世界に売りまくることが出来た。いくら儲けてもユーロ安になる都合のいい制度だ。緊縮財政を拒否したギリシャを一方的に我儘と決め付けられない。

つまり私に言わせれば同じ原因でドイツは最も豊かになり、ギリシャは破綻寸前になった表裏一体の関係だ。「政治は別々、経済と通貨は一緒」という二重構造は、シーソーの関係でもある。シーソーの片側が降りたらもう一方はぶっ飛ぶ、そういう関係であることをドイツは謙虚に受け取らねばならない。

ドイツにとってベストの解

これが、ドイツがギリシャ救済にもっと積極的に支援してユーロ危機に取り組むべき理由であり、ドイツにとってもベストの選択であるという訳である。言い換えると、ドイツが更に経済成長を続けられる「都合のいい制度」を守る最善の投資は、ユーロ圏内の重債務国救済にドイツがもっと大きな負担をすることである。

今朝も対ドル・ユーロともに急激に円高が進行し、欧米の株安を受けて日経平均は8600円台まで大きく値を下げている。「早く何とかしろ」という気分だ。だが、中長期的に見ると私は微妙な気分になる。ドイツがうまくこの都合のいいシステムを維持すると、相対的に日本は更に劣勢になりそうだからだ。ま、とりあえずはドイツに混乱を収めてもらいたい。■

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