これは3日前の記事の補足だ。G8首脳会議が方向の定まらない期待外れに終り、欧米の「日本化」が本物(?)になってきたように感じる。ドイツ包囲網は各国の国内事情で中途半端になった。そんな中で、今の状態は危機というより普通の状態と捉えた方がいいという開き直り説が私には妙に説得力がある。少し心配になってきた、全くの思いつきだが私の想いを紹介したい。
欧米は「日本化」だけは避けると言い続けて来た
企業や政治が思い切った対策を打たないで小手先の改革をやっている間に、何年も経済停滞が続く状況を「日本化」とか「失われた10年」と揶揄された。だが、いざ苦境に立つと欧米諸国も痛みを先送りする誘惑に駆られ、日本と同じことを繰り返す恐れがあると指摘された。昨今では既に日本化しているという見方が出てきた。
リーマンショックから3年以上経過したが、欧州危機が一向に収まらずユーロ圏が沈滞している。国民の反発を受けて思い切って有効な政策を打てず、ギリシャ・スペイン・ポルトガル・イタリーからフランスまで政権がコロコロ変り、欧州は根本解決が遅れ経済悪化の悪循環が進み「日本化」したという。スペインやイタリーの金融不安が又もや浮上したと先週伝えられた。
「日本化しなかった」と胸を張る米国も家計のバランスシート調整は長引き、ために消費回復に力強さが無く住宅市場は依然として低迷が続き、日本の「失われた10年」の跡を辿っているという懸念が無くならない。欧州みたいに酷くはないが、米経済回復の先行き不透明感が拭えない。今や皆が日本化すればそれが当たり前になり、寧ろ日本を見直す意見まで出てきたから驚きだ。
実は「日本化」は悪いことではないという説
昨日の日本経済新聞でロバート・シラーエール大教授は、財政緊縮政策の代わりに日本型の景気刺激策をとれと説いている。バブル崩壊後、日本はうまくやってきた。財政出動を繰り返し国家債務は非常に高水準になったが、低いながらも経済成長を続け恐慌には陥っていない。それが「現実的に望めるベストの道」だと。おや、まあ、褒められちゃった。
確かに、日本は低レベルだが経済成長を続け欧米に比べ半分以下の失業率を保っている。これが現実的に考えてベストだと言われれば、もっと悪い経済状況の欧米の人達は納得するかもしれない。だが日本的垂れ流しの財政赤字を勧めている訳ではない、教授は「均衡の取れた景気刺激予算」(増税と歳出拡大)という道を唱えている。
本家の日本はニューノーマルで「日本化」を深める
日本政府にたいしては、債務をこれ以上増やさない責任ある姿勢を示し、増税と同時に支出を増やせという。野田首相が政治生命をかけた消費増税政策には成長路線が加味されたが、本格的な景気刺激策となるか不透明だ。貿易立国の日本が大震災以前の状態に戻り、貿易収支が回復しないとこのシラー教授のシナリオも野田首相の狙いも結果を出せるか疑問だと私は考える。
野口悠紀雄氏は回復しない理由として(1)アメリカの消費ブームの終焉、(2)円高、(3)電力制約、(4)生産拠点海外移転であり、これらは一時的なものでなく構造的なものと指摘する(ダイヤモンド1/26)。同様な視点からWサミュエルソンは日本経済の輸出依存と米国経済の消費依存は共に壊れたビジネスモデル(WP3/12)と指摘している。
これが忘れた頃になって再認識させられた日本のニューノーマルであり、構造的な問題をもう少し深耕し共通の理解を導く必要があるように思う。尻切れトンボになったが、先ずはそこからどこに進むか「日本化」の道を探って行くのが良さそうに思う。■