今朝まだ暗い6時頃だった、目が覚めて何時ものように手元のラジオのスイッチを捻った。何時もはNHKを聞くのだが、チューニングが狂っていたようで雑音しか入らない。ダイヤルを回しているうちに最近は聞くことのなくなったFENにチューンインした。
だが何時もと違う緊迫した印象を受けたので耳を澄ました。最近は英語が良く聞き取れなくなったのだが、耳に入る単語を繋ぎ合わせ何事が起こったか理解しようと務めた。すると、それはNPR(米公共放送)のニュース番組‘All Things Considered’だった。
米国のニュータウンという聞いた事も無い町で銃乱射事件が起こり、28人が犠牲になったと伝えていた。珍しく現地と中継するライブの臨場感が伝わってきた。過去30年間に61件の銃乱射事件が起こったとの専門家の言を聞いて、私は又かと思った。同じ専門家によれば銃乱射の犯人像は20-30代の白人が典型だという。
過去の銃乱射事件後、安全のために銃の購入が急増したと言われている。この国の人達は懲りないなと思った。多くの米国民のメンタリティがどういうものか象徴的な出来事だ。彼等の多くは白人男性でブルーカラーとか大卒など広範にわたっている。根底には黒人の暴力に対する恐れがあるというが、実は黒人の銃保有支持者は少ないと言う。
こんな虐殺が年2回のペースで起こって直後に銃規制を求める声が高まるが、悪名高き全米ライフル協会(NRA)が政治力を発揮して銃規制の動きを潰してきた。彼等の政治力は極めて強い、日本でいうなら全国に組織を持つ農協(JA)のような影響力を持ち改革を阻む。特に共和党議員への影響力は絶大と言われている。
あの歴史に残るリーマンショックの後、直ちに前例の無い巨額の金融緩和で副作用を恐れず金をバラマキ市場崩壊から救う決断をした同じ国が、30年以上に亘りこの既得権益を守る為に銃規制できず人の命を軽んじてきた。バブル崩壊後思い切った規制改革などの手が打てず「失われた20年」と揶揄される我国だが、「人命軽視の失われた30年」を米国に贈りたい。
果たしてオバマは効果的な銃規制に向えるだろうか。銃規制に反対する共和党が多数のネジレ議会の障壁が立ちはだかっている。それは、日本政府がJAを宥めて規制緩和やTPP参加を推進するくらい難題だ。悲観的にならざるを得ない。
おまけに、米国には憲法修正2条の「武装の権利」が銃所持の根拠になっていると言われており違憲判断を乗り越えての規制は容易ではない。日本の憲法9条みたいに論議のある条文だ。私はNRAが影響力を行使し、何も進まないだろうと予測する。彼等の失われた30年はまだ続く。■