夫婦の家に昨日家族が集まって恒例のクリスマスパーティをやった。子供達が独立して夫々に家庭を持つようになって以来、出来るだけ皆が集まる機会を作るのが父親の務めと心がけている。その工夫の一つとして年に一度は夫々が料理を持ち寄るポトラック・パーティ形式にして、参加者の負担を減らし長続きするようにしている。 今年は娘夫婦の結婚10周年になる区切りの年でもあり皆でお祝いし楽しく過せた。ちょっと物足りなかったのはパーティに子供が一人しかいないことだ。参加者構成は私たち夫婦2人が60代、子供たちと配偶者計5人が30代、そして2歳の子供1人だ。彼らにとって経済的な制約はないのだが、欲しくても子供に恵まれない。 このまま行ってこの子が20年後大学を卒業する時、全員生き延びていれば後期高齢者2人と高齢者予備軍5人を家族に持つことになると、元気に走り回る子供を見ながら思った。今は周りの大人に大事にして育てられる。だが、20年後の彼は全員の面倒を見るわけではないとしても、7人の老人を考えただけで負担に感じるだろう。これでは家族として成立しえないと思った。 私も人一倍パーティを楽しんだが、ふとこのシナリオを頭に浮かべて秘かに暗い気持ちになった。多分、20年後の日本も大なり小なりこんな家族が一杯いるんだろうと思った。こんな国は成り立たないだろうと、不吉な崩壊の予感がした。だが、今回の総選挙でもこの問題が危機感を持って語られることはなかった。
代間格差が先の衆院選で全く争点にならなかったのを思い出した。毎年給付が急増する現行制度の社会保障(年金・医療・子育て)の維持は困難だ。社会保障をどうすべきか国民の関心は高いが十分に議論されたとはいえない。報道を見る限り数日後に発足する安倍政権もこの問題の優先順位は低いように感じる。だが、この国は困っている全ての人に欲しいだけお金をばら撒く力は最早無くなった。 今日の日本経済新聞を引用して安倍政権の最初の政治課題を要約すると、自公民の歴代政権が特例で1割に据え置いたままの70‐74歳の医療費自己負担を、本来の2割に引き上げられるかが試金石となる。金融緩和を求めて日銀に強い圧力をかける安倍氏だが、国民に苦い薬を飲ませるとなると歴代首相と同じで歯切れの良さが突然無くなる。維新の実行力が欲しいところだ。 記事によれば来年の参院選を前に先送り気運が広がっているという。社会保障の負担増や抑制策は3党が合意した社会保障制度改革国民会議で話し合われることになっている。だが、年少扶養控除の復活や幼児教育の無償化など財源の手当てが不明と見透かされている。それでは政権交代しても財政赤字は益々悪化の道を辿り、孫の世代には踏んだり蹴ったりだ。 給付に見合う税収の確保、若しくは医療費を含む生活保護費をどこまで切り込めるか不透明だ。既得権益層やマスコミの支援を受けた小数派からの強い反発が出るのは間違いない。安倍政権にそれを乗り越える力があるだろうか。マスコミと全国に広がる反対の声に屈せず、国の為と日米安保締結を断行した祖父岸元首相を尊敬する安倍氏に、孫の未来を託せるだろうか。■ |