最初に言っておくが、個人的にはトランプ大統領が大嫌いだ。彼の自分本位の性格や粗野で一貫性のない言動、とりわけ民主主義の基礎となる「法の下での平等」を無視するかのような振る舞いは我慢できない。自称「アメリカかぶれ」の私が尊敬するアメリカ人が、よくもこんな滅茶苦茶な人間を大統領に選んだものだと嘆く。
その上で、トランプ大統領の愚行の中にも他の誰もが出来なかったことをやっていると評価する、しかも結構多くの政策に同感することがある。彼のバカさ加減にうんざりしている一方で、誰もが逡巡する困難な政策を打ち出しガンガンやっている。そこに焦点を当て議論するのが本文の目的だ。
現在訪問中のEUでもトランプ大統領が主張するEU諸国軍事費倍増要求や貿易赤字解消など、「自国第一」主義に基づく根拠が曖昧な要求が話題になっている。しかし、米国が注ぎ込んでいる軍事費の数字から見れば、米国の要求はそれ程無茶苦茶という訳ではないと私は思う。
メルケル独首相と激論になったとされる「ドイツが新たにロシアから天然ガスを輸入する」件につき、大統領は「制裁をかけて敵対するロシアにエネルギー依存を高めるのは欧州の安全保障を弱体化させる」と厳しく批判したとされる。私はもっともな批判で、ドイツは大義のないご都合主義の政策を取っている様に見える。旧東欧諸国は反対するが声が小さく、トランプが代弁したと感じた。
発言の裏にはトランプ大統領は米国産天然エネルギーを売りたい狙いが隠されているとの批評があるが、仮にそうだとしても大統領は筋の通った発言でドイツを非難したことに変わりはない。EU内で圧倒的力を持つドイツに忖度してものが言えなかった国は、よくぞ言ってくれたということになる。
そういう意味では世界が驚き息を飲んで見守るのが米中貿易戦争だ。トランプ大統領の本音は過去に前例のない巨額の貿易赤字の解消であっても、建前の一つに中国の知的財産侵害を重大問題として取り上げて改善を求めたのは全く正しい。全世界に共通する問題なのに中国は無理押ししていた。
従来、中国市場の大きさと更には将来の潜在力の大きさの魅力に負け、及び腰の各国政府と企業は現地企業との合弁を強いられ知的財産を公開させられていた。初めは強権的で人権無視の政治を非難していた国もそのうち沈黙し、国際ルールを都合よく捻じ曲げた中国のやりたい放題になっている。それにトランプ大統領は待ったをかけた形になっている。どの国の誰も出来なかったことをやった。
ここまで褒めたところで、トランプ大統領の二期目は絶対阻止しなければならない。最近の情勢分析では民主党が絶対有利とされてきた中間選挙も共和党が持ち直してきた。このままでは米国も世界もガタガタにされ修復不可能になる。一期目はメチャメチャで首尾一貫しない形でも重要な問題を明らかにした。だが、思いつきの実行では民主主義の理念や自由貿易の基礎が壊れてしまう。
このままではIブレマー氏の洞察の如く「G0(Gゼロ)」の時代がとんでもない方向に進んでしまう。トランプ大統領のやっていることは、自国の都合で動く普通の国の振る舞いであり、それ自体は非難できない。だが、米国が果たしてきた戦後世界の中での特別な役割を放棄したとして、許せないのは破壊することだ。彼はそれを露骨で粗野な形でぶち壊そうとしている。
戦後米国の役割は特別に偉大で他のどの国もなしえなかった。幸運にもトランプの代りに次期大統領が選ばれたとして、力の衰えた米国が取り得る政策は限られているかもしれない。少なくともトランプ大統領は分かり易い形で問題提起した。そこに期待したいが、楽観的にはなれない。■
その上で、トランプ大統領の愚行の中にも他の誰もが出来なかったことをやっていると評価する、しかも結構多くの政策に同感することがある。彼のバカさ加減にうんざりしている一方で、誰もが逡巡する困難な政策を打ち出しガンガンやっている。そこに焦点を当て議論するのが本文の目的だ。
現在訪問中のEUでもトランプ大統領が主張するEU諸国軍事費倍増要求や貿易赤字解消など、「自国第一」主義に基づく根拠が曖昧な要求が話題になっている。しかし、米国が注ぎ込んでいる軍事費の数字から見れば、米国の要求はそれ程無茶苦茶という訳ではないと私は思う。
メルケル独首相と激論になったとされる「ドイツが新たにロシアから天然ガスを輸入する」件につき、大統領は「制裁をかけて敵対するロシアにエネルギー依存を高めるのは欧州の安全保障を弱体化させる」と厳しく批判したとされる。私はもっともな批判で、ドイツは大義のないご都合主義の政策を取っている様に見える。旧東欧諸国は反対するが声が小さく、トランプが代弁したと感じた。
発言の裏にはトランプ大統領は米国産天然エネルギーを売りたい狙いが隠されているとの批評があるが、仮にそうだとしても大統領は筋の通った発言でドイツを非難したことに変わりはない。EU内で圧倒的力を持つドイツに忖度してものが言えなかった国は、よくぞ言ってくれたということになる。
そういう意味では世界が驚き息を飲んで見守るのが米中貿易戦争だ。トランプ大統領の本音は過去に前例のない巨額の貿易赤字の解消であっても、建前の一つに中国の知的財産侵害を重大問題として取り上げて改善を求めたのは全く正しい。全世界に共通する問題なのに中国は無理押ししていた。
従来、中国市場の大きさと更には将来の潜在力の大きさの魅力に負け、及び腰の各国政府と企業は現地企業との合弁を強いられ知的財産を公開させられていた。初めは強権的で人権無視の政治を非難していた国もそのうち沈黙し、国際ルールを都合よく捻じ曲げた中国のやりたい放題になっている。それにトランプ大統領は待ったをかけた形になっている。どの国の誰も出来なかったことをやった。
ここまで褒めたところで、トランプ大統領の二期目は絶対阻止しなければならない。最近の情勢分析では民主党が絶対有利とされてきた中間選挙も共和党が持ち直してきた。このままでは米国も世界もガタガタにされ修復不可能になる。一期目はメチャメチャで首尾一貫しない形でも重要な問題を明らかにした。だが、思いつきの実行では民主主義の理念や自由貿易の基礎が壊れてしまう。
このままではIブレマー氏の洞察の如く「G0(Gゼロ)」の時代がとんでもない方向に進んでしまう。トランプ大統領のやっていることは、自国の都合で動く普通の国の振る舞いであり、それ自体は非難できない。だが、米国が果たしてきた戦後世界の中での特別な役割を放棄したとして、許せないのは破壊することだ。彼はそれを露骨で粗野な形でぶち壊そうとしている。
戦後米国の役割は特別に偉大で他のどの国もなしえなかった。幸運にもトランプの代りに次期大統領が選ばれたとして、力の衰えた米国が取り得る政策は限られているかもしれない。少なくともトランプ大統領は分かり易い形で問題提起した。そこに期待したいが、楽観的にはなれない。■