今、かつてない感染力の強い伝染病が世界中に広がっている。それは「大衆迎合政治」だ。この伝染病に弱い体質があり、一旦伝染病にかかると高熱を発し攻撃的かつ排他的で自分勝手になると同時に、結末がどうなるか想像力が働かなくなる症状が一般的だ。各国の状況を概観してみる。
ホンダが英国を揺さぶる
ホンダの英国スウィンドン工場を閉鎖する決定が英国を動揺させている。ホンダの英国撤退は世界市場の変化に対する対応でありEU離脱とは無関係であると説明したが、同社の従業員3500人が職を失うだけでなく、英国の自動車産業や製造業全体に深刻な影響が及ぶとFTは伝えた。
ホンダの英国進出はサッチャー改革の一環で、その恩恵をとりわけ受けたのがスウィンドンだった。当時、人口は10万人で、鉄道会社の整備工場が主な勤め口だった。今や人口が22万人に増え、高付加価値製造業や専門サービス業などの一大集積地となった。
ホンダの撤退は同社の従業員3500人が職を失うだけでなく、英国の自動車産業や製造業全体に影響が及ぶという。高品質の車の生産をはじめ、工場管理や労使関係構築の手法を英国にもたらしたのは、日本企業だからだ。ところがスウィンドンは国民投票で離脱支持が54.7%と過半を占めた。
ポピュリズムの想像力の欠如
住民は経済の構造転換に成功したこの地をホンダが離れるなど夢にも思わなかったのだろう。スウィンドンだけでなく自動車産業で働く多くの英国人が離脱派に丸め込まれて投票し、自らの首を絞める結果になったと記事は伝えている。(英国人そんなにアホだったのか、未だに分からない。)
悲劇は国民投票で英国民の多数がEU離脱を選択した時に始まった。彼等を煽った政治家を含め英国民はEU離脱が長期的に何を意味するか想像出来なかった。何が起こるか分からないで投票した。想像力の欠如が自分で自分の首を絞めることになった。(私の知る英国人じゃない。)
世界にはびこるポピュリズム
この英国のEU離脱の一連の混迷が、国が重要な決定を国民投票に委ねる所謂「大衆迎合政治」が上手く行かないの典型的な例だ。ところが今や世界中で大衆迎合政治がはびこっている。英国だけではない。EUの多くの国はポピュリズム政治化してしまった。
ポピュリズム政治を思想的に分けると、その出自は社会民主主義(左)と保守・極右(右)に分かれるが、やってることは共に大衆の歓心を買う為のバラマキや移民難民の入国阻止でやがて強権政治に向かう。背景にはグローバリゼーションの過程で生じた格差拡大で残された人達の不満がある。
国によって事情は異なる
特に中流階級から滑り落ちたと感じる底辺の人達の怒りは極めて強く、極右勢力拡大の原動力になっていると推測する。自由民主主義の砦だった仏独伊などのEU先進国で、極左右勢力が伸長し中道政治が退潮している。ハンガリーやポーランド等の東欧諸国の強権政治とは別の深刻さがある。
英国の場合は今のところ特に政治的な方向性を感じないが、独伊は極右勢力がEU離脱を訴え支持を得て政治を左右するところまで来た。一方、仏社会を麻痺させた「黄色いベスト」運動と従来の極右勢力との政治的な関係がどうなるのか不明だが、マクロン政権の改革は失速寸前だ。
大衆迎合の象徴
トランプ大統領を生んだ米国が世界的な大衆迎合政治の象徴になった。本来なら彼から書き始めるべきだが、大衆迎合主義がどんな結末を迎えるのか最も分かり易い英国の例を最初に持って来た。だが米国がどんな方向に進んでいくかが世界最大の関心事であることに変わりない。
白人労働者階級とキリスト教福音派の岩盤支持を維持する為には、好調な米国経済を維持することが必須だ。トランプ大統領の怖さはその為に何でもすることだ。平気で嘘をつき尊敬される高官を首にする。一貫した主義も主張もない。この後世界や米国に何が起こるか岩盤支持者達は想像力がない、トランプ氏はそう言う連中に支持されている。
世界はバカになったのか
高慢な言い方だが世界の人々を想像力で層別すると、戦後70年間で今ほど想像力の足りない人々に支持された自由民主主義政治は無かったように思う。自由民主主義の世の中がそれ程魅力的でなくなったのだろうか。それを否定して彼等はどこに向かおうとしているか、私は分かっていないと思う。
一方、日本は幸いかな欧米ほど格差は広がっておらず、極端なポピュリズム政治の動きはない。判断を狂わすほど体温は上がってない。沖縄の辺野古基地移転の賛否を問う住民投票結果が示されたが、想像力を働かして我が国にとって何が重要か冷静に対応すべきだ。安倍首相は世界の大衆迎合政治を導く指導的役割を果たすべきだ。■
ホンダが英国を揺さぶる
ホンダの英国スウィンドン工場を閉鎖する決定が英国を動揺させている。ホンダの英国撤退は世界市場の変化に対する対応でありEU離脱とは無関係であると説明したが、同社の従業員3500人が職を失うだけでなく、英国の自動車産業や製造業全体に深刻な影響が及ぶとFTは伝えた。
ホンダの英国進出はサッチャー改革の一環で、その恩恵をとりわけ受けたのがスウィンドンだった。当時、人口は10万人で、鉄道会社の整備工場が主な勤め口だった。今や人口が22万人に増え、高付加価値製造業や専門サービス業などの一大集積地となった。
ホンダの撤退は同社の従業員3500人が職を失うだけでなく、英国の自動車産業や製造業全体に影響が及ぶという。高品質の車の生産をはじめ、工場管理や労使関係構築の手法を英国にもたらしたのは、日本企業だからだ。ところがスウィンドンは国民投票で離脱支持が54.7%と過半を占めた。
ポピュリズムの想像力の欠如
住民は経済の構造転換に成功したこの地をホンダが離れるなど夢にも思わなかったのだろう。スウィンドンだけでなく自動車産業で働く多くの英国人が離脱派に丸め込まれて投票し、自らの首を絞める結果になったと記事は伝えている。(英国人そんなにアホだったのか、未だに分からない。)
悲劇は国民投票で英国民の多数がEU離脱を選択した時に始まった。彼等を煽った政治家を含め英国民はEU離脱が長期的に何を意味するか想像出来なかった。何が起こるか分からないで投票した。想像力の欠如が自分で自分の首を絞めることになった。(私の知る英国人じゃない。)
世界にはびこるポピュリズム
この英国のEU離脱の一連の混迷が、国が重要な決定を国民投票に委ねる所謂「大衆迎合政治」が上手く行かないの典型的な例だ。ところが今や世界中で大衆迎合政治がはびこっている。英国だけではない。EUの多くの国はポピュリズム政治化してしまった。
ポピュリズム政治を思想的に分けると、その出自は社会民主主義(左)と保守・極右(右)に分かれるが、やってることは共に大衆の歓心を買う為のバラマキや移民難民の入国阻止でやがて強権政治に向かう。背景にはグローバリゼーションの過程で生じた格差拡大で残された人達の不満がある。
国によって事情は異なる
特に中流階級から滑り落ちたと感じる底辺の人達の怒りは極めて強く、極右勢力拡大の原動力になっていると推測する。自由民主主義の砦だった仏独伊などのEU先進国で、極左右勢力が伸長し中道政治が退潮している。ハンガリーやポーランド等の東欧諸国の強権政治とは別の深刻さがある。
英国の場合は今のところ特に政治的な方向性を感じないが、独伊は極右勢力がEU離脱を訴え支持を得て政治を左右するところまで来た。一方、仏社会を麻痺させた「黄色いベスト」運動と従来の極右勢力との政治的な関係がどうなるのか不明だが、マクロン政権の改革は失速寸前だ。
大衆迎合の象徴
トランプ大統領を生んだ米国が世界的な大衆迎合政治の象徴になった。本来なら彼から書き始めるべきだが、大衆迎合主義がどんな結末を迎えるのか最も分かり易い英国の例を最初に持って来た。だが米国がどんな方向に進んでいくかが世界最大の関心事であることに変わりない。
白人労働者階級とキリスト教福音派の岩盤支持を維持する為には、好調な米国経済を維持することが必須だ。トランプ大統領の怖さはその為に何でもすることだ。平気で嘘をつき尊敬される高官を首にする。一貫した主義も主張もない。この後世界や米国に何が起こるか岩盤支持者達は想像力がない、トランプ氏はそう言う連中に支持されている。
世界はバカになったのか
高慢な言い方だが世界の人々を想像力で層別すると、戦後70年間で今ほど想像力の足りない人々に支持された自由民主主義政治は無かったように思う。自由民主主義の世の中がそれ程魅力的でなくなったのだろうか。それを否定して彼等はどこに向かおうとしているか、私は分かっていないと思う。
一方、日本は幸いかな欧米ほど格差は広がっておらず、極端なポピュリズム政治の動きはない。判断を狂わすほど体温は上がってない。沖縄の辺野古基地移転の賛否を問う住民投票結果が示されたが、想像力を働かして我が国にとって何が重要か冷静に対応すべきだ。安倍首相は世界の大衆迎合政治を導く指導的役割を果たすべきだ。■
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