今回積極的にお勧めする本はないが、敢えて言うなら私の勝手な評価ではお勧めレベルに達していないが「2005年体制の誕生」(田中直毅)と、「プランB」(レスター・ブラウン)である。テーマは異なるが戦後から現在までの日本政治の政策決定枠組みと地球レベルの環境変化を総括的に理解するのに役立つ。
(1) 私刑 Pコーンウェル 1995 講談社 どうしても読書欲が沸かないとき読み、意欲回復の触媒として役割を果たした。
(1.5) 日本自動車産業の実力 土屋逸男他 2002 ダイヤモンド社 今日の原油高による米国勢の経営難を予測していないが、生き残りの条件は次世代製品開発力・世界市場戦略・収益力と明快で今日を正しく予測。ディジタル商品はモジュール型、自動車は調整が入る統合型と分析。日本メーカは物つくりを生かして上方下方展開と主張。
(2) 日本資本主義の哲学 木村剛 2002 PHP 題名ほどの深みはないが私の波長とあっているので評価のうち+0.5は私の好み。日本企業の組織を共同体とみなした理論展開は説得力があるが、そこから具体的なシステム提案がないのは著者の限界。
(2.5) IT革命か、ITバブルか 佐々木S美根子 2000 東洋経済 ガルブレイス、サミュエルソン、ソローからマンキューまでITバブル破裂直前の認識をインタビューしたもの。内容は題名ほど軽くない、私の知識では背景や行間を十分理解できない。しっかりした経済学の素養のない私には無理なのかも。
(1.5)こんな日本に誰がした 谷沢永一 1995 クレスト社 戦後左翼知識人に対し舌鋒鋭いが、自らの主張の根拠が粗雑なので全体として信憑性に欠ける。
(1) 日本の「死」 中西輝政 2003 文芸春秋 自説の国家論の虜になり現在進行形で進む小泉改革の評価が著作後たった2年で的外れになっている。処女作「大英帝国衰亡史」の輝きと比較しどうしても評価が厳しくなる。
(2.5)自治体の「改革設計」 佐々木信夫 2002 ぎょうせい 「地方自治は民主主義の学校である」という言葉を自己責任・自己決定・自己負担の新しい関係で解説している。平成の大合併後の地方自治改革のあり方について考えるベースを与えてくれる。
(2.5)官僚主導国家の失敗 加藤寛 1997 東洋経済 バブル後遺症に悩み公共投資しか思いつかなかった時代に小さな政府を主張し、郵政民営化などの改革を唱えた書、今日読んでも的外れな指摘はない。
(2)21世紀日本の国家戦略 中曽根康弘 2000 PHP 著者の思い入れは伝わるが、散文の寄せ集めで書物としての一貫性に欠ける。
(2.5)2005年体制の誕生 田中直毅 2005 日経新聞社 元々著者と波長が合っているので、55年体制の問題指摘と05体制との対比は無理なく入ってくるが、体制と呼べる程に確かで持続性があるかについてはまだ論拠が不十分。本書は既知の情報を整理した範囲で、書名に相応しい新情報や分析が無かったのは残念。
(3) プランB レスター・ブラウン 2003 ワールドウォッチジャパン テーマは地球の能力以上に自然(水、農地、温暖化)を酷使し、一方で人口増とHIV蔓延状況の結果として迫り来る食糧危機を説き、豊富なデータで破滅を回避するプランBを提唱している。現在の中国の資源浪費や水不足などの状況を正確に予測している。
(2) 社会学の作法・初級編・改 野村一夫 2000 文化書房博文社 末の息子が社会学専攻で苦労しているのを見て読んでみた。この初歩的作法は私の目指すパーソナル・ジャーナリズムの手法に役立ち、私には意味のある本。
(2)愛はなぜ終わるのか Hフィッシャー 1993 草思社 離婚のピークは結婚後4年に来る理由を生物学・人類学・考古学など色々な角度から説いている。ホンマかいな。先日テレビで著者が同じテーマでインタビューを受けているのを見た。(余談だが、若い頃美人だった面影がしっかり残っていた。)
(2)5000年前の男 Kシュピンドラー 1994 文藝春秋 NFとして思い入れを前面に出さない淡々とした記述が好ましく感じる。コーンウェル以上に読書欲向上できた。
(2)コンサルティングの悪魔 Lピーノルト 2000 徳間書店 コンサルタントを使った経験から身に覚えのある事が多い。私は題名ほど悪魔とは思わないが。
(1.5)わかる!ナレッジマネジメント 高梨智弘 2000 ダイヤモンド社
(2) デジタルチルドレン Dタプスコット 1998 SOFTBANK ベイビーブーマーはテレビで力を持ちベトナム戦争を終結させたのと対比し、インターネット世代の特徴は個人の競争力に価値を置き知的冒険家で社会問題に敏感、世界を変えると持ち上げている。いつの時代も新技術に対する過剰な期待に溢れているが、10年経過後の今、世代としてのビジビリティはまだ余り無い。
(2) ニート 玄田有史・曲沼恵美 2004 幻冬舎 じっくり調査したというより、手元にあるデータにインタビューを補足して取りあえず話題のテーマを纏めたもののようだが、それでもニートの一面を捉え生々しく伝えるものがある。
(2)ディープ・スロート Bウッドワード 2005 文藝春秋 予め準備したという割にマーク・フェルト元FBI副長官の家族が昨年突然正体を明かした直後のやっつけ仕事の印象を受ける。「ウォーターゲート事件の脚注」、「エピローグのエピローグ」かつ著者の自伝という性格を免れない。歴史的価値はないと思うが個人的にはニクソンが追い詰められていく驚きと衝撃はいまだ新鮮で感傷的になった。深入りしていないがポスト社に逆通報者がいたこと、情報源秘匿のルールが確立されその後ワシントンに匿名情報提供者が多数生まれたことは興味深い。著者のフェルト氏に対するやや複雑だけど尊敬の気持ちは救われる。
(2)日中再考 古森義久 2001 産経新聞 著者の指摘する5年前の中国の現実が今では一般の知識になったと思う。中国の言論抑圧や人権問題など普遍的な価値観の否定に対し沈黙する日本の政治家やメディアの姿勢も最近徐々に変化しつつあるが、その幾分かは産経が貢献している。内容がもう少し前向きであれば尚良いのだが。
(1.5)ホームレスから大統領まで-韓国政界縦横無尽 ユジュンサン 2002 花伝社
[書評]時間をかけて読む価値があるか否か、知識を得るという個人的視点での評価
(0):読む価値なし (1):他になければ読めば! (2):読んで損は無い
(3):お勧め、得るもの多い (4):名著です (5):人生観が変わった
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