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公示地価下落の底流

2010-03-20 22:07:33 | 社会・経済

示地価(今年1月時点)が全国平均で前年比4.6%下落、特に商業地の落ち込みが大きく6.1%の下落となったと18日に報じられた。中でも下落率が大きいのが日本商業地のシンボルである銀座界隈だった。これは景気に連動した地価の変化だけでは説明できない、日本の消費者の変化を反映したものである。

直接的な原因として、証券化された不動産(REIT)から海外の投資が引き上げられたことが指摘される。リーマンショック以降の世界同時不況が資本引き上げの引き金を引いた。だが、引き上げられた資金がどこに向かったかと言うと、どうも相当部分が香港・シンガポール・上海に向かったらしい。つまり、海外から見て日本が魅力的な投資の対象ではなくなってきたということだ。

大雑把に言うと今回下落が目立った商業地の中でも、高級商業地の新橋や銀座は海外からのREIT投資で地価が上昇し、資本が引き上げられてその分下落したといえる。しかし、リーマンショックの前から高級品販売のシンボルだった百貨店の衰退は一貫して続いていた。海外からの投資で地価の上げ下げはノイズであり、むしろ伝統的な高級商業地衰退がトレンドだった。

それは若者の消費スタイルの変化や、デフレをどう見るか、で私がこのブログで何度か指摘してきた「合理的消費」への変化が底流にあると考える。不景気とか流行とか一過性で終るものではなく、今後長く続く新しい生活スタイルへの転換が起こっているように私は解釈する。

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-30代の若者の消費行動の変化を同じ18日NHKの「クローズアップ現代」は報じた。高額なファッションやブランド品、車、海外旅行が売れなくなり質素な生活をする一方で、音楽など人夫々に異なるこだわりには思い切ってお金を使うといった消費スタイルだ。

番組はこの変化の底流に、若者の所得減少や将来不安、バブル崩壊後に育った世代、価値観の転換などの原因を指摘したが、必ずしもこれだという明快な分析はなかった。番組ではこの変化を異変と呼び、企業や専門家が対策に悩んでいると報じたが、私は直感的に異変というより「新しい標準(ニューノーマル)」だと考える。

何故直感か、それはかなり前の時代に遡る。私はバブル時代の日本人の消費行動は、世界の他の国と比べると変だと思っていた。バブル時代と前後して喧伝された「一点豪華主義」も、何故こんな無駄使いをするのか理解に苦しんだ。消費に関して私はその時代の傍観者だった。

長男が仕事に就き暫く経った数年前、彼がかつて殆どの独身男性が欲しがった車を欲しくないと言い、あえて買うならプリウスのような環境対応車と言った。趣味以外は質素な生活をしている様子だった。その時は彼独自の嗜好かと思ったが、クローズアップ現代を見て改めて彼が多くの若者の一員であると理解した。

若者の消費スタイルの変化は景気の回復とか流行の変化で変わるような一時的なものではない。マーケティングの専門家はとっくに気付いていて対応している。百貨店の撤退や銀座に欧米の安価なファッション製品の専門店が進出しているのもその一環だ。だが新たな商品やビジネス・モデルの開発は容易ではない。

デフレデフレと騒ぐより、これが標準だと思い前向きに取り組まなければ衰退産業の一翼をになう羽目になるだろう。デフレの時こそ企業は知恵を絞り、市場を根底から変える新製品を開発し今日も主力製品であり続けている歴史がある。さもなければ、撤退しか残された道は無い。■

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