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かぶれの世界(新)

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割れた鏡

2009-11-19 21:17:13 | 社会・経済

今日の日経平均は前日の米株安を受け下げが止まらず、一時9500円台を割ったが若干買い戻しが入り、3日続落の前日比127円安の9549円で引けた。このところ米国が大幅上昇すると日本は小幅上昇、米国が小幅に下げると日本は大幅下落する。マイナスの下駄を履いたみたいだ。

今年の夏までは日本株式市場は、米国の前日相場を鏡のように映した展開を見せ、「鏡相場」といわれたのに何が起こったのだろうか。GDP成長率の回復も予想以上なのに、株式市場は日本の一人負けのような状態はまことに歯がゆい。例によって何が起こっているか報道を総合して、マーケットを俯瞰してみたい。

買い手がいなくなった

端的に言えば日本の買い手がいなくなった。不景気対策で世界中にお金がだぶついているのに、そのお金が日本の株式に向かってこないのだ。向かった先はBRICsや資源国などの新興国で、これらの国では既にリーマンショックを上回る株価になった。これに続いて先進国でも夏以降も回復が続き、例えば米国では昨日13ヶ月ぶりの株価に回復したと伝えられた。

だが日本株だけは余りにも動きが鈍い。何か日本だけの事情があるはずである。ソニーやトヨタなど日本の代表的な企業の収益力回復がイマイチなだけが理由ではない。世界経済が新パラダイムに向かう道を走り始めた時、日本だけが別の道を走っているような気がする。

振り返ると、日本市場が米国市場の「鏡」でなくなったのは皮肉なことに鳩山政権が誕生した頃からだ。鳩山内閣は適切なマクロ経済政策を打ち出さず、多分海外投資家は何をするのか掴みようがない、方向感を失ったように感じているはずだ。

その間、新興国には巨額の投資マネーが流入し過熱を警戒し、オーストラリアは金利上昇、ブラジルは投資マネーに課税するといった対応まで出てきた。先進国企業もそこにビジネス機会を求めている。この間まで破綻の危機にあったGMさえ、新興国の売り上げに支えられ政府救済資金の返却を言い出したのだから、その変わり様には驚く。

新興国に向かう投資マネーの多くは今や実質ゼロ金利のドルを借りて、高金利のブラジルレアルや豪ドルに投資する所謂ドルキャリートレードによるもので、これがドル安を引き起こした。結果として日本の輸出産業の逆風となって株安を招いている要素もある。

避けられない構造変化

日本株一人負けにはもう一つ国内要因がある。それはこのところ金融機関が相次いで巨額増資を図っており、株式の希薄化を恐れた投資家が買いをためらっているからだ。報道によれば個人や生保などの機関投資家も手を出さないらしい。彼らのお金は国債に向かっているという。民主党政権の赤字国債発の買い手にはなるかもしれないが、歓迎すべき方向ではない。

中期的にはもっと構造的で深刻な要因がある。これも大元は新政権の政策と深く関わっている。本日の日本経済新聞によれば、今年5兆円という異例の巨額増資が行われている。それは金融機関(2兆円)よりも、実は東芝など金融以外の企業(3兆円)の方が多いという。当然のことながらこれも株式の希薄化による株安の要因になっている。だが、それだけには留まらない。

金融機関の増資は自己資本比率を改善するものだが、金融以外の企業は世界大不況回復後に起こる新市場(米国と新興国が牽引するパラダイムシフト)に対応するための資金集めと推測される。新市場に合わせて海外展開を見直しシャッフルするため巨額の資金を準備している、株価が回復した今が増資のチャンスと判断したとの見方である。つまり、国内に投資しないのである。

鳩山内閣が内需拡大と主張するものの、一貫性のある具体的な政策を打ち出さない中で、企業は生き残りをかけて大転換を図ろうとしている。有効なマクロ経済政策を打ち出さない鳩山政権を見限ったかどうかは分からないが、日本経済を牽引してきた輸出産業が海外展開し、国内空洞化が一層進む筋書きが衣の下からチラ見えしているように感じざるを得ない。

政権交代は55年体制の膿を出す為に必要であったが、新政権がこの状況を認識しないまま3年も4年も経過すると酷いことが起こりそうで、先行き不安になってしまう。3QのGDP成長率3.8%は前政権の経済政策の効果だった。その追加補正もさることながら、世界で何が起こっているか理解し、せめてその中で生き残りをかけて打って出る日本企業の足を引っ張ることの無い様にして欲しい。■

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