菅直人副総理兼国家戦略・経済財政担当相は、20日朝の閣議後記者会見で「デフレ状況と認識」していることを述べた。又、経済協力開発機構(OECD)は19日、最新の世界経済見通しを発表し、2010年の日本の実質経済成長率は1.8%と上方修正した。同時に、デフレが2011年まで続くので現行の低金利政策の維持を求めたと報じられた。
私は今まで物価下落のトレンドは構造的なもので、新たなパラダイム(ニューノーマル)に向かっているという仮説を支持してきた。言い換えれば、現状の「デフレ」は需給悪化による競争激化で物価下落が起こっているとしても、景気回復後も下がった物価が新標準になると私は予測する。今後の国家運営はそういう発想が必要だと信じる。
今日夕方のNHKの四国ローカル番組で、新政権が打ち出した高速道路無料化が引き起こす変化を報じていた。明石大橋の無料化で関西方面への農産物を安く届けることが出来る一方、フェリー、高速バス、JRの経営に大打撃を与えるというものであった。
その結果として、過疎地を走る路線や会社そのものの存続が問われることになり、政府の支援が必要と言う声を紹介していた。だが、視点を変えて見れば高速道路や大橋の通行料を人工的に高くしたことに寄りかかって、従来他の交通機関の経営が成り立っていたといえる。
利用者に経済的に不合理な価格を押し付け、その結果として日本の高コスト構造が成り立っていた。政治的に作られた非効率性ゆえに存続できるビジネスが日本中に存在する。悲劇的なのは地方がこの歪の襞(ひだ)に引っ掛かって生きていることだ。
今次の世界同時不況で元気な企業は、例えば298円ワインで紹介したように海外で計画生産後コンテナに詰め一度も積み替えることなく小売店に届けるといった、徹底的にロジスティックスを合理化した構造的な低価格であり、持続性のあるやり方で売り上げを伸ばしていることだ。品質を落としたり、客寄せの為の一時的な出血価格による物価下落ではない。一言でデフレと言って対策を考えるのは現状認識ができてないピント外れのアプローチになる可能性がある。
政権交代前も後も、その非効率性を正そうとすると、「襞」に引っ掛かったビジネスとそれに依存する生活者が打撃を受ける。不幸にもその多くは地方切捨てという論理で受け止められることである。だが、それを避けて通るということは冒頭の別の道を歩むことになりはしないか。そんなに時間をおかずに新政権は厳しい判断を求められそうな気がする。■
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