八十路徒然なるままに

のどかなる日影に、垣根の草もえ出づるころより、やや春ふかく霞わたりてーーー。徒然草より

精霊棚

2023年08月05日 12時10分38秒 | Weblog

昨日、精霊棚の設置になつた。八日は命日になる。一周忌は先月にすませた。あの日も暑かったなぁと、思い出している。没する前々日は、入浴サービスの日で、車椅子からベットへ移す、ベットの縁に腰かけさせて、背中と腕と足を、ごしごしごしと、マッサージをしてやった。「ばあちゃん、食べねぇから、痩せきれちったぞぉ」と、声をかけた。「うんうん」と、うなずいていた。生きていた時の、週に一度の恒例だった。おしゃべりが出来なくなってからのある時、「ばあちゃん、俺が彼の世にいつた時は、俺の背中を、揉んでもらえっけぇ」と、聞くと、分かっていんのかどうか、「うんうん」と、うなずいていた。このマッサージは気持ちいいのか、背中をまるめ、ちょこっとあごを突き出して、おちょぼ口をしたいた。夜明け前の、この世との別れの時、訪問していただいたお医者さんが、「長い年月のーー」と、ねぎらいの言葉を、夫婦と孫とが茫然と、しばし聞いていた。お医者さんが戻っあと、皆が無言のまま、ばあちゃんの顔をなでたり、手をさすったりと、涙涙が流れるままだった。お医者さんに玄関先で、礼を申し上げた。その日も暑くなりそうな、夏の薄す夜明けだった。


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