見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2011関西遊:大和文華館+奈良博

2011-09-01 23:12:34 | 行ったもの(美術館・見仏)
 先週の日曜深夜、11日間の夏休み中国旅行から帰って、そのまま通常の社会生活に突入。さすがに、次の週末は休養したいところだったが、また出かけてしまった。何だろうねえ、いいトシをして、このわがまま。でも、京都の友人から、奈良博『天竺へ』の無料招待券も貰っちゃったし。目的は3つ。

■近鉄アーバンライナーに乗る

 中川家礼二、原武史著『鉄塾』を読んで、ヨシ、次回、関西に行くときは、近鉄アーバンライナーに乗ってみようと思っていたのだ。そこで、金曜の夜に東京を出て、名古屋に1泊。途中、大雨で新幹線が徐行運転を強いられ、20分程度の遅れとなった。やれやれ不運な…と思ったが、名古屋についてみたら、後続の列車は、完全に止まっていた。危ういところで、雨雲をすり抜けたようだ。

 翌朝、鶴橋までノンストップのアーバンライナーに乗車。デラックスシートで贅沢しようと思っていたが、窓側の席が残っていなかったので、普通車にする。混雑時でなければ、1人客は隣りを空けて配席してくれるので、十分に快適。人の乗り降りも車内アナウンスもなく、車内販売も来ないのは、いいなあ。仕事でも読書でも集中できる。たまに目をあげると、見覚えある沿線風景で、あ、室生寺のあたりだ、とか、そろそろ二上山だ、とか、さまざまな旅の記憶を刺激される。

 鶴橋から折り返して、目的の「学園前」で下車。この名古屋→奈良入りルートは癖になりそうである。

大和文華館 開館50周年記念特別企画展III『漆工展』(2011年8月13日~10月2日)

 日本、中国、朝鮮半島等の多様な漆工芸品を展示。同館の展覧会にしては、いつもより作品解説が詳しくて、ありがたかった。図録はあるのかな?と思って、途中でミュージアムショップに確認に行ったが、所蔵品カタログのようなものしかないという。しかたないので、せっせとメモを取ってきた。

 たとえば、冒頭の『瑇瑁貼螺鈿花鳥文八角筥』(奈良時代)は「類品が正倉院と某家にそれぞれ1点ずつあるが、3点のうちで本品が最もよく当初の状態を残している」。「某家」というのは、2009年4月、香港のサザビーズ中国美術オークションに出品されたこれ(※画像)のことらしい。大和文華館で目にしたものは、大きな螺鈿は剥げ落ちて、蓋の水玉つなぎくらいしか残っていなかった。

 室町時代の『蒔絵籬菊文机』の説明に、次の桃山時代になると(籬や土坡の表現が消え)「秋草のみが豪快に描かれるようになる」という記述に笑ってしまった。いわゆる高台寺蒔絵が代表格だと思うが、「華麗」とか「緻密で繊細」は聞いたことあるが、「豪快」っていうかなーと可笑しかったのだ。しかし、本展に集められた漆工芸品は、コレクターの趣味の反映なのか、文様も器形も大ぶりで「豪快」と呼びたくなるものが多いように思った。

 私がいちばん気に入ったのは、江戸ものだが『金貝桐三日月料紙箱』。桐の木よりも三日月がデカい。『蒔絵粟鶉文硯箱』の獰猛そうな鶉の眼付きも好きだ。

 逆に中国明代の『螺鈿平脱描漆秋草文食籠』は、中国製にしてはめずらしく、幾何学的な正確さがなくて、小さな草花が愛らしく散っている。日本の影響を受けたものという説も納得できる。なお、日本では、古代に玉虫厨子などの彩漆絵が制作されたあと、鎌倉・室町は、もっぱら単色の漆絵のみだったが、桃山時代に入ると、明朝の彩漆絵の影響を受けて、再び多彩な漆絵が起こったという。今年の夏休み旅行は中国中部・南部で、古代の彩漆絵をたくさん見てきたことが思い出された。

 朝鮮半島(朝鮮時代)の螺鈿工芸の印象は、貝片が大きいこと。なんとも大雑把。しかし、高麗時代~朝鮮王朝初期の螺鈿は、繊細だった。松葉菊みたいというべきか(ゾウリムシの繊毛みたいというべきか)「菊唐草文」(※例)が特徴的である。

奈良国立博物館 特別展『天竺へ~三蔵法師3万キロの旅』(2011年7月16日~8月28日)

 前期に続く再訪。前期より混んでいて、驚いた。私は、1週間前は西安にいて、華やかにライトアップされた夜の大雁塔(慈恩寺)を見てきたばかり。前期来館時に購入した図録は、けっこう注意深く眺めたつもりだが、やっぱり本物を前にすると、テンション(注意力)が高まって、こんなところに動物が!とか、なんだこの人物の表情は?とか、いろいろ驚かされて、おもしろい。法隆寺蔵『五天竺図』も見た。あとは図録で、ゆっくり復習することにしよう。
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