見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2013秋@正倉院展(奈良国立博物館)

2013-11-09 23:41:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別展『第65回正倉院展』(2013年10月26日~11月11日)

 連続参観を続けて12年目。昨今、ちょっとマンネリ?と思っていたが、今年のポスターになっている『漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)』はインパクト絶大で、なんとしても行きたくなった。「23年ぶり二度目の出陳」だという。

 今年は三連休初日の朝を避けて、11/2(日)の朝、8時半くらいに行ってみたら、もうピロティの下には並べなくて、列はテントの下に長く延びていた。あ~あ。でも開館と同時に、制限なくどんどんお客を入れていくので、ほとんど待たずに館内に入れた。すぐそばに、毎年来ているというおじさんがいて、「今年の宝物(漆金薄絵盤)は平成5年の図録に載ってたわ」とおっしゃっていたが、奈良博ホームページの説明によると「漆金薄絵盤は甲・乙2基あり、今年出陳される品は甲です。乙は平成5年に一度出陳されています」とのこと。

 さて、入口付近の展示室はいちばん混んでいるので、ちょっと途中をスキップして、『檜和琴(ひのきのわごん)』から見始める。控えめな螺鈿細工がきれいだ。附随する『玳瑁絵(たいまいえ)』(実際の素材は牛角?と推定)は小さすぎて、よく分からない。拡大写真で精巧な細工を確認。

 すぐ隣りのケースには、簡素な尺八、横笛。笛吹袍。このへんは「音楽」に関する宝物を集めているらしい。さらに伎楽面が3件。どう見ても日本人の顔ではないが、こういう異相を「人」と認識できたのはなぜなんだろう、と不思議に思う。それから投壺(とうこ)の銅製の壺と投げ矢。投げ矢の鏃(やじり)は丸いんだな。お正月の羽根つきの羽根みたいだ。漆弾弓(うるしのだんきゅう)は、以前、弓身に小さく唐散楽図を描いたものを見た記憶があるが、これは別物。

 東新館の前半が少し空いてきたようなので、戻ってみる。螺鈿の鏡が2件か、と思って、アッサリ見てしまったが、あとで図録を読んで、「最も保存状態のよい」1件と、寛喜2年(1230)に盗まれ、割られてしまったが、明治期に修復された1件だったことを知った。もっとよく違いを見てくるんだった。『鳥毛帖成文書屏風(とりげじょうせいぶんしょのびょうぶ)』は、1979年以来の出品。なんとなく見覚えがある気がして調べたら、平城宮跡資料館に復元品が展示されているらしい。しかし「父母不愛不孝之子(父母は親不孝な子供を愛しはしない)」をはじめ、書かれている成句が身も蓋もないほどストレート。出典を調べたが分からなかった。日本人が作った漢文なのだろうか。

 今年の見もの『漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)』がないなあ、と思ったら、西新館の第1室が、同品の特集展示に当てられていた。最前列で見るための待ち時間は30~40分くらい。これは細部をよく見たいので、並ぶ。列が進んでいく間、壁にいろいろ参考パネルが飾られているので、飽きない。面白かったのは、日本香堂の協力による「お香実験」のパネル。はじめ、『漆金薄絵盤』と関係があると思わず読んでいたら、この『盤』の上で、唐草文に型抜きしたお香を焚いたのではないか、という想定実験であると分かって、興味が増した(※関連記事:YOMIURI ONLINE 2013/10/22)。なお、『盤』の蓮弁は下向きになっているので、現物を見るより、鏡になった展示台を覗き込むほうが見やすい。そして、鏡面を覗き込むには、最前列でないと難しいように思う。

 このあとも、今年は様々な法具類、香炉、如意、献物箱、献物台、盆、皿など、美しい細工物が多く出ていた。私のお気に入りは『白石火舎(はくせきのかしゃ)』。四頭の獅子に支えられた大理石の香炉である。人の身長ほどもある『椿杖(つばきのつえ)』には、卯日の儀式用の杖=卯杖の遺品という説明がついていた。「枕草子」など古典に出て来たことは記憶していたが、実物を見るのは初めて。さらに調べてみて、京都の神社には、いまも卯杖祭の習俗が残っていることに驚く。

 文書類は少なめだったが、意外に熱心な観客がいた。写経生の給与支払いとか前借りに関する文書で、やっぱり金銭がからむと、切実な親近感が湧くのかもしれない。『綱封蔵見在納物勘検注文(ごうふうぞうけんざいのうぶつかんけんちゅうもん)』は、永久5年(1117)に南倉の宝物の点検が行われた際の記録。「正倉院塵芥文書」には、後世の正倉院宝物の管理や点検に関する記録も貼り継がれて、伝わっている。ちなみに鳥羽天皇の(というより白河法皇の)御代である。このほか、元禄年間に調進された古鑰(錠と鍵)、慶長年間に徳川家康が造進させた慶長櫃(けいちょうき)なども展示されていた。

 最後は華やかな『花喰鳥刺繡裂残片(はなくいどりのししゅうぎれざんぺん)』に魅入られ、疲れを忘れる構成。もうちょっと空いていればなあ、とは毎年思うのだが、まあお互い様なので、譲り合って楽しみたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする