○大阪市立美術館 特別展『再発見!大阪の至宝』(2013年10月29日~12月8日)
正倉院展と薬師寺東塔水煙降臨展を見て、近鉄で鶴橋→JRで天王寺へ移動。これも今回、外せないと思っていた展覧会。何しろ、「大阪市の美術館や博物館が所蔵する主要な美術コレクションと、大阪を発祥とする私立美術館の代表的作品や、大阪市立美術館寄託の国宝作品を一堂に展覧する名品展」(パンフレット)だというのだから、見るほうの期待も盛り上がる。
薄暗い会場に入ると、だだっ広い展示室の隅に、ぼうっと浮かび上がる小さな水墨画。米友仁の『遠岬晴雲図』だった。メルヘンのようにやわらかなタッチ(→中国語サイトに画像あり)。大阪市立美術館の自慢の中国絵画コレクション(阿部コレクション)の逸品である。別の隅には、国宝・油滴天目茶碗。大阪市立東洋陶磁美術館の安宅コレクションからの出品だ。この展覧会、ふだんは異なる美術館に展示されている名品が同居する楽しさがある。
特に前半(1階)は、大阪市美の中国石造彫刻コレクションと、東洋陶磁美術館の中国・韓国陶磁器のコラボが新鮮で、楽しい。陶磁器を360度全方位から鑑賞できる展示ケースが多かったのも嬉しかった。
気になった作品は『天発神讖碑(てんぱつしんしんひ)』。原碑は三国時代の呉(3世紀)に建てられたが、清の嘉慶10年(1805年)に焼失し、拓本のみが残されているという。師古斎・岡村蓉二郎氏のコレクション。一銀行員として、私財を投じて、大好きな中国拓本を集めたというエピソードに泣かされる。
2階は日本美術。1つ目の展示室に入ると、奥の展示室の入口に、豊臣秀吉ゆかりの『富士御神火文黒黄羅紗陣羽織』がもう見えていて、自然と気持ちが吸い寄せられていく。最近、NHK日曜美術館が富士山の美術を特集したとき、この陣羽織を取り上げていて、どうしても見たい、と思っていたものなのだ。うーん、カッコいい! そのまま自分の周囲に欲しいデザインである。
小西家伝来の尾形光琳関係資料には「大阪市立美術館所蔵」のキャプションがついていて、あれ?思ったが、いろいろ紆余曲折があって、同館と京都国立博物館に分蔵されることになったそうだ。
木村蒹葭堂旧蔵の『破笠細工蒔絵箱入貝類標本』はすごい。小川破笠の作品はいくつか見たことがあるが、その極限みたいな貝文様の蒔絵箱がすごい。しかし、その箱に納められた蒹葭堂の貝類標本コレクションはもっとすごいっ! ドロップみたいにスイートな色彩の貝殻もあって、夢のよう。へえ、大阪市立自然史博物館が所蔵しているんだ。
蒹葭堂日記(羽間文庫本)(大阪歴史博物館所蔵)を見ることができたのも嬉しかった。几帳面な文字。「羽間文庫」というのが、天文学者・間重富の間家(羽間家)に由来するらしいことを初めて知った。そして旧跡がまだ現存することも。大阪の歴史は、知らないことが多いなあ。もっと街歩きに励みたい。
東京ではあまり見ないような気がする上方浮世絵のコレクション、陶磁器の鍋島、禅画、近世文人画、近代洋画まで、バラエティに富む。絶対、図録を買って帰ろうと思ったら「ありません」のつれないひとこと。さまざまな美術館から出陳を願っているだけに、調整が難しかったのかなあ。私の前にいたおじさんも怒っていたけど、残念きわまりない。各美術館・各コレクションの由来と特徴を解説した折本仕立てのパンフレット(無料)が唯一の記念品である。
正倉院展と薬師寺東塔水煙降臨展を見て、近鉄で鶴橋→JRで天王寺へ移動。これも今回、外せないと思っていた展覧会。何しろ、「大阪市の美術館や博物館が所蔵する主要な美術コレクションと、大阪を発祥とする私立美術館の代表的作品や、大阪市立美術館寄託の国宝作品を一堂に展覧する名品展」(パンフレット)だというのだから、見るほうの期待も盛り上がる。
薄暗い会場に入ると、だだっ広い展示室の隅に、ぼうっと浮かび上がる小さな水墨画。米友仁の『遠岬晴雲図』だった。メルヘンのようにやわらかなタッチ(→中国語サイトに画像あり)。大阪市立美術館の自慢の中国絵画コレクション(阿部コレクション)の逸品である。別の隅には、国宝・油滴天目茶碗。大阪市立東洋陶磁美術館の安宅コレクションからの出品だ。この展覧会、ふだんは異なる美術館に展示されている名品が同居する楽しさがある。
特に前半(1階)は、大阪市美の中国石造彫刻コレクションと、東洋陶磁美術館の中国・韓国陶磁器のコラボが新鮮で、楽しい。陶磁器を360度全方位から鑑賞できる展示ケースが多かったのも嬉しかった。
気になった作品は『天発神讖碑(てんぱつしんしんひ)』。原碑は三国時代の呉(3世紀)に建てられたが、清の嘉慶10年(1805年)に焼失し、拓本のみが残されているという。師古斎・岡村蓉二郎氏のコレクション。一銀行員として、私財を投じて、大好きな中国拓本を集めたというエピソードに泣かされる。
2階は日本美術。1つ目の展示室に入ると、奥の展示室の入口に、豊臣秀吉ゆかりの『富士御神火文黒黄羅紗陣羽織』がもう見えていて、自然と気持ちが吸い寄せられていく。最近、NHK日曜美術館が富士山の美術を特集したとき、この陣羽織を取り上げていて、どうしても見たい、と思っていたものなのだ。うーん、カッコいい! そのまま自分の周囲に欲しいデザインである。
小西家伝来の尾形光琳関係資料には「大阪市立美術館所蔵」のキャプションがついていて、あれ?思ったが、いろいろ紆余曲折があって、同館と京都国立博物館に分蔵されることになったそうだ。
木村蒹葭堂旧蔵の『破笠細工蒔絵箱入貝類標本』はすごい。小川破笠の作品はいくつか見たことがあるが、その極限みたいな貝文様の蒔絵箱がすごい。しかし、その箱に納められた蒹葭堂の貝類標本コレクションはもっとすごいっ! ドロップみたいにスイートな色彩の貝殻もあって、夢のよう。へえ、大阪市立自然史博物館が所蔵しているんだ。
蒹葭堂日記(羽間文庫本)(大阪歴史博物館所蔵)を見ることができたのも嬉しかった。几帳面な文字。「羽間文庫」というのが、天文学者・間重富の間家(羽間家)に由来するらしいことを初めて知った。そして旧跡がまだ現存することも。大阪の歴史は、知らないことが多いなあ。もっと街歩きに励みたい。
東京ではあまり見ないような気がする上方浮世絵のコレクション、陶磁器の鍋島、禅画、近世文人画、近代洋画まで、バラエティに富む。絶対、図録を買って帰ろうと思ったら「ありません」のつれないひとこと。さまざまな美術館から出陳を願っているだけに、調整が難しかったのかなあ。私の前にいたおじさんも怒っていたけど、残念きわまりない。各美術館・各コレクションの由来と特徴を解説した折本仕立てのパンフレット(無料)が唯一の記念品である。