見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年6月@東京:江戸の相撲(太田)、軍師官兵衛(江戸博)、徒然草(サントリー)

2014-06-26 00:55:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
太田記念美術館 『江戸の相撲と力士たち~石黒和義コレクション』(2014年6月1日~6月26日)

 石黒和義氏のお名前は初めて知ったが、日本IBMや日本ビジネスコンピューターの幹部を歴任された経営者らしい。相撲錦絵のコレクターとしても知られ、このたび550点のコレクションを全て太田記念美術館に寄贈された。本展では、そのうち100点余を公開。同じ人物浮世絵でも「役者絵」は扮装や化粧にまどわされやすいのだが、力士がモデルだと、なるほど浮世絵は人間の個性(外見&内面)をこういうふうに描き分けるのか、と分かりやすかった。まだ錦絵と呼ぶには色数の少ない、寛政年間(18世紀末)の摺りものに惹かれた。

 江戸の相撲のシステムをよく知らないので、解説を読むのもいろいろ面白かった。「看板力士」って、見栄えがいいので土俵には上げるが、実際は取り組みをしないこともあったのか! あと、当たり前だが月代を剃って髷を結う力士もいたのだな。

江戸東京博物館 2014年NHK大河ドラマ特別展『軍師官兵衛』( 2014年5月27日~7月13日)

 ドラマは真面目に見ていないが、扱っている時代は好きなので、いちおう見てきた。しかし主人公が地味なので、やや散漫な印象。『朱塗合子形兜・黒糸威胴丸具足、小具足付』は本物が来ていたが、厳重な別格扱いで展示されていた。『白檀塗合子形兜』は残念ながらレプリカ。『金瓢箪頭立蟹爪脇立六十二間星兜』はいいですねえ。『黒漆塗桃形大水牛脇立兜』は、どう考えても動き回るのに邪魔だろう。…というぐあいに「戦場のよそおい」に注目するのが、いちばん楽しいのではないかと思う。

 『肥前名護屋城図』(なぜか篠山市教育委員会所蔵)が見られたのも嬉しかった。江戸時代前期に『肥前名護屋城屏風』を写したものだという。原本は肥前名護屋城博物館(佐賀県唐津市)の所蔵。唐津駅からずっと離れていたので、見に行くのを諦めたことがある。いわゆる「安宅船」が何隻も描き込まれていた。

サントリー美術館 『徒然草-美術で楽しむ古典文学』(2014年6月11日~7月21日)

 鎌倉時代後期に成立した『徒然草』は、成立後100年あまり、鑑賞の歴史をたどることができない作品だという。まあ、そういう文学作品は珍しくないので驚かないけどね。『徒然草』の本格的な享受は慶長年間(1596-1615)に始まり、「徒然絵」とも呼ぶべき絵画作品が登場するようになる。本展は、近年、同館コレクションに加わった海北友雪筆『徒然草絵巻』20巻を初公開するもの。

 前半では、年代の明らかな「徒然草」所見の歴史史料として最初期のものに属する『実隆公記』を展示。以前、「御伽草子」についても同様の趣旨で『実隆公記』が展示されていた。三条西実隆ってすごいんだな。慶長年間に刊行された嵯峨本には、もう「徒然草」が入っているのか。

 階段を下りたところのホールに、海北友雪筆『徒然草絵巻』20巻が延々と展示されている。これがけっこう面白いのだが、絵画作品よりもパネルの「徒然草」現代語訳から目を離せない人のほうが多かった。私は、あまり好きな作品ではないと思って来たが(いちいち訳知り顔でうっとおしい)、その凡庸さが凡人の安心と共感を呼ぶのかなあ、と見直した。読み返してみるかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする