見もの・読みもの日記

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明清工芸にひそむ可愛いもの/カラフル(根津美術館)

2014-06-24 00:07:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
根津美術館 コレクション展『カラフル-中国・明清工芸の精華-』(2014年5月31日~7月13日)

 根津美術館の明清工芸品コレクションは、何度も見ているけれど、ゆたかな色彩に着目した「カラフル」って、これまで、ありそうでなかった視点である。そう来たか!という発想が楽しい。

 冒頭は渋めの「赤」。堆朱(ついしゅ)作品を揃える。『堆朱菊花文丸盆』の五輪の菊は、よく見ると花芯の文様がそれぞれ違っていたりして、凝っている。珍しい「堆黄」の作品は、万暦年間に集中しているのだそうだ。黄、オレンジ、赤、ときには紺や緑も用いられる「存星」という漆工芸も私の好きな技法。金持ちの年増女みたいに渋くて華やか。自由で力強い龍の形象をあらわした、万暦年間(16世紀末)の作品が多かった。日本なら桃山文化の頃だなあ、と、東アジアの同時代性を感じ取る。

 別の展示ケースに移って、目が釘づけになったのは清代(18~19世紀)の『螺鈿動物文皿』。6枚セットで、黒漆の小皿の中央に、それぞれ異なる動物が描かれている。獅子、鶴、麒麟、鹿、山鳥(?)、あと1枚がよく分からないが、プランクトンみたいで可愛い。陶磁器に移って『緑釉龍文鉢』も、よくよく覗き込んで笑ってしまった。ヒラメじゃあるまいに、面長な龍の横顔に二つの目が並んでいる。それも吾妻ひでおのキャラみたいな○に点の目。

 明代の陶磁器は、やっぱり民窯が好きだ。『呉州赤絵麒麟文皿』の「わおーん」という遠吠えが聞こえてきそうな麒麟が可愛い。ディズニーアニメに出てきそう。『呉州青絵赤壁図鉢』は、何度も見ているけど大好き。これは欲しくてしかたない。青絵の船の図もいいが、赤壁賦を写した文字が下手すぎて下手すぎて愛おしい。『呉州青絵楼閣山水人物文皿』は、これが楼閣山水なのか?と疑問というよりツッコミを呈したくなる。『五彩蓮池水禽文大甕』も楽しい。現代中国人が大好きな、バラやカーネーション模様の洗面器や魔法瓶に通じるところがある。

 時代が明から清に移ると、技術が急激に高度化し、思わず居ずまいを正してしまう作品が増える。豆彩のグリーン、粉彩のピンクがきれいだ。黄色や紅色の単色釉にも引き込まれる。でも究極の美品は「青磁」だなあ。今回は「天藍(水色)」「青磁」「豆青(明るい緑)」作品が並んでいて、その違いがよく分かった。私の好みは、やっぱり「青磁」だな。灰色がかった緑の深い味わいが、ようやく分かるようになってきた気がする。

 展示室2は「明清の絵画-大画面絵画」を特集。蒋嵩筆『舟遊・雪景図』二幅は、癖のある筆遣い(素早く騒々しい)で、否定的な意味合いで「狂態邪学」と呼ばれるそうだが、たぶん日本人は好きだろうな、こういう絵。伝・蘇漢臣筆『売貨郎』は鳥籠でいっぱいの車を引く鳥屋さん。五人の子供の挙措が可愛い。 波立つ海原を背景にした趙麒筆『蝦蟇仙人図』は、あまりグロテスクでなくて、孤高の仙人という感じがする。『掃象図』は不思議な作品で、一連の背景(山並み・川の流れ)でつながった四幅。右端に礼拝する高士、次は錫杖を持つ釈迦、次は二人の人物が棕櫚箒で白象を水洗いしている図、左端は水汲みの図を描く。典拠不明とのこと。縦に引き伸ばされたような象で、一人は象の背に乗っている。

 展示室3も「明清の絵画-画巻と画冊」で、今期は全館が中国モード。朱皆山筆『四季山水図巻』は、「旅の絵本」ふうで可愛い。はじめにピンクと白を使って桃林(?)が描かれ、蓮池と柳、刈入れ時の積み藁(犬が遊んでいる)、晩秋の紅葉、最後に雪景色が展開する。『回紇進宝図巻』(清・18世紀)は大きな画巻だ。日本でいうと『当麻曼荼羅縁起絵巻』の縦幅。ただし、こちらは絹本。描かれている人物も大きい。編んだ髪を前後左右、四本垂らした男性が大きな剣を捧げていたが、あれはウイグル族なのだろうか?

 『聴颿楼集宋元画冊』には、さまざまな作品が貼り込まれており「南宋時代の著名な画家の落款を有するものも含まれる」という微妙な解説がされていた。落款はあっても真偽は?というところか。聴颿楼(ちょうはんろう)は、潘正煒(1791-1850)という書画蒐集家の号らしい。
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