「故宮展」開幕直前の東京国立博物館。なぜこんな時期に…と思われるかもしれないが、東京出張がこのタイミングになってしまったのだから仕方ない。それならそれで、平常展(総合文化展)をゆっくり見てこようと思い、まず東洋館(アジアギャラリー)の最上階から。5階には、朝鮮半島の美術工芸に加えて、「中国の漆工」と「清時代の工芸」。白菜ならぬ、瑪瑙でつくった石榴あり。
■東洋館8室 特集『中国の絵画 日本にやってきた中国画家たち-来舶清人とその交流-』(2014年6月17日~7月27日)
江戸時代、清朝の文人趣味や、浙江・福建の画風を日本にもたらした来舶清人の画業を紹介。中国本土にはほとんど伝来していない、日本独自の中国絵画受容である。浙江の人・宋紫嵒の『石榴小禽図、白梅小禽図』は若冲の濃彩画にすごく似ている。沈南蘋筆『鹿鶴図屏風』は初めて見るだろうか? 展示ケースの手前に設置してくれているので、鹿の毛並みや鶴の羽毛の細密描写がよく分かった。鹿の表情が妙に人間臭くて、しかも一匹一匹違う。
あわせて『乾隆平定両金川得勝図』が出ていたのにはびっくりした。箱裏の銘文には「天保二年辛卯」(1831)牧野長門守成文が長崎奉行のときに得たもの云々とある(ように読める)。「牧野長門守」って調べたら勝小吉の『夢酔独言』にも出てくるみたい。展示解説に、大和文華館の『台湾征討図巻』も同じ頃に日本に入ったのではないか、と述べられていて、興味深かった。それにしても乾隆帝って、中国人が大好きなのは分かるが、台湾の人から見ても憧れの皇帝なのか、どうなのかなあ。
隣室の『明時代の書』もよいのだが、久しぶりに『中国文人の書斎』の展示ケースを覗いて、爽やかでいいなあ、と思った。展示替えはないのかと思っていたが、現在の展示は「2014年6月10日~7月27日」だそうだ。「台北故宮展」にあわせて、ちょっといい文物を出してきたのかも。
■東洋館5室 特集『日本人が愛した官窯青磁』(2014年5月27日~10月13日)
3階「中国陶磁」の一区画でおこなわれている特集展示。東博、常盤山文庫、アルカンシエール美術財団などの所蔵作品を通して、日本における官窯研究の歴史をたどる。「川端康成旧蔵」という注記のついたものが3点。特別、見栄えのする形や大きさではないが、色の美しさは無類である。
南宋官窯には、修内司(しゅうないし)官窯と郊壇下(こうだんか)官窯があったとされるが、前者は今なお幻の名窯なのだそうだ。後者は杭州の領事をつとめた米内山庸夫の陶片採集で知られている。そして、郊壇下官窯でも陶片が見つかっている「米色青磁」。大好きだ、この色。
もちろん青の青磁も好きだ。余談だが、「國立」二文字で一悶着あった台湾故宮展の開幕式で、国立故宮博物院の馮明珠院長が「雨上がりの空のように」云々と述べたと聞いたときは、すぐに「雨過天青雲破処」を思い浮かべて、にんまりした。
■本館11室・14室 親と子のギャラリー『仏像のみかた 鎌倉時代編』(2014年6月10日~8月31日)
2部屋を使って、主に鎌倉時代に造られた仏像を展示。いつもの11室(彫刻)では、いつもの仏像の背後に、ことさらカッコいい背景幕(スクリーン)をしつらえてみたり、文殊菩薩騎獅像および侍者立像の足元に「波」を置いてみたり、いろいろ遊んでいる。
このほか、本館18室「近代の美術」に前田青邨の『大同石仏』が出ていて、全館的に中国を意識している感じがした。本館7室「屏風と襖絵-安土桃山~江戸」の長谷川久蔵筆『大原御幸図屏風』は、前日、東京富士美術館で見たものに構図がそっくり。ある程度の大量生産品なのかな。本館4室「茶の美術」で見た無準師範筆「湯」一字の軸。断簡だというけど、現代中国語でいうと「スープ」って書いてあるわけで、ちょっと笑った。
■出光美術館 没後90年『鉄斎 TESSAI』(2014年6月14日~8月3日)
今回は最後も絵画で締めようと思い、鉄斎を見ていく。はじめて年代順に見て、晩年の作品ほどいいということが分かった。人間、長生きしてみるものだね。しかし、作品以上に印象に残ったは、火鉢を前に悠然と読書にいそしむ本人の写真だった(有名な写真らしくて、画像検索するとすぐ出てくる)。無造作に押入れ(?)に押し込められた万巻の書。こういう爺になってみたい。
■東洋館8室 特集『中国の絵画 日本にやってきた中国画家たち-来舶清人とその交流-』(2014年6月17日~7月27日)
江戸時代、清朝の文人趣味や、浙江・福建の画風を日本にもたらした来舶清人の画業を紹介。中国本土にはほとんど伝来していない、日本独自の中国絵画受容である。浙江の人・宋紫嵒の『石榴小禽図、白梅小禽図』は若冲の濃彩画にすごく似ている。沈南蘋筆『鹿鶴図屏風』は初めて見るだろうか? 展示ケースの手前に設置してくれているので、鹿の毛並みや鶴の羽毛の細密描写がよく分かった。鹿の表情が妙に人間臭くて、しかも一匹一匹違う。
あわせて『乾隆平定両金川得勝図』が出ていたのにはびっくりした。箱裏の銘文には「天保二年辛卯」(1831)牧野長門守成文が長崎奉行のときに得たもの云々とある(ように読める)。「牧野長門守」って調べたら勝小吉の『夢酔独言』にも出てくるみたい。展示解説に、大和文華館の『台湾征討図巻』も同じ頃に日本に入ったのではないか、と述べられていて、興味深かった。それにしても乾隆帝って、中国人が大好きなのは分かるが、台湾の人から見ても憧れの皇帝なのか、どうなのかなあ。
隣室の『明時代の書』もよいのだが、久しぶりに『中国文人の書斎』の展示ケースを覗いて、爽やかでいいなあ、と思った。展示替えはないのかと思っていたが、現在の展示は「2014年6月10日~7月27日」だそうだ。「台北故宮展」にあわせて、ちょっといい文物を出してきたのかも。
■東洋館5室 特集『日本人が愛した官窯青磁』(2014年5月27日~10月13日)
3階「中国陶磁」の一区画でおこなわれている特集展示。東博、常盤山文庫、アルカンシエール美術財団などの所蔵作品を通して、日本における官窯研究の歴史をたどる。「川端康成旧蔵」という注記のついたものが3点。特別、見栄えのする形や大きさではないが、色の美しさは無類である。
南宋官窯には、修内司(しゅうないし)官窯と郊壇下(こうだんか)官窯があったとされるが、前者は今なお幻の名窯なのだそうだ。後者は杭州の領事をつとめた米内山庸夫の陶片採集で知られている。そして、郊壇下官窯でも陶片が見つかっている「米色青磁」。大好きだ、この色。
もちろん青の青磁も好きだ。余談だが、「國立」二文字で一悶着あった台湾故宮展の開幕式で、国立故宮博物院の馮明珠院長が「雨上がりの空のように」云々と述べたと聞いたときは、すぐに「雨過天青雲破処」を思い浮かべて、にんまりした。
■本館11室・14室 親と子のギャラリー『仏像のみかた 鎌倉時代編』(2014年6月10日~8月31日)
2部屋を使って、主に鎌倉時代に造られた仏像を展示。いつもの11室(彫刻)では、いつもの仏像の背後に、ことさらカッコいい背景幕(スクリーン)をしつらえてみたり、文殊菩薩騎獅像および侍者立像の足元に「波」を置いてみたり、いろいろ遊んでいる。
このほか、本館18室「近代の美術」に前田青邨の『大同石仏』が出ていて、全館的に中国を意識している感じがした。本館7室「屏風と襖絵-安土桃山~江戸」の長谷川久蔵筆『大原御幸図屏風』は、前日、東京富士美術館で見たものに構図がそっくり。ある程度の大量生産品なのかな。本館4室「茶の美術」で見た無準師範筆「湯」一字の軸。断簡だというけど、現代中国語でいうと「スープ」って書いてあるわけで、ちょっと笑った。
■出光美術館 没後90年『鉄斎 TESSAI』(2014年6月14日~8月3日)
今回は最後も絵画で締めようと思い、鉄斎を見ていく。はじめて年代順に見て、晩年の作品ほどいいということが分かった。人間、長生きしてみるものだね。しかし、作品以上に印象に残ったは、火鉢を前に悠然と読書にいそしむ本人の写真だった(有名な写真らしくて、画像検索するとすぐ出てくる)。無造作に押入れ(?)に押し込められた万巻の書。こういう爺になってみたい。