見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

中国書画精華(東京国立博物館)+常設展

2015-10-25 22:37:55 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・東洋館8室『中国書画精華-日本における受容と発展-』(2015年9月8日~11月29日)

 久しぶりに東博に行ってきた。せっかく関東に戻ってきたのに、今年度は『鳥獣戯画』(←京都で見た)『クレオパトラ』『ブルガリ』と、特別展をパスしている。今回のお目当ては、東洋館の恒例企画『中国書画』(10月27日~展示替えあり)。伝・馬遠筆『寒江独釣図』とか伝・石恪筆『二祖調心図』(トラがかわいい)など、見慣れた東博コレクションの名品もあれば、おや?と思う作品もあった。『祖師図』(元代)はリストを見ると東博のものなんだな。顔は比較的丁寧に書くけど、衣を風になびかせた体はあっさりした減筆であらわす。東福寺の『維摩図』(元代)は、衣の模様や寝台の装飾が緻密に描き込まれている。衣の端から覗く痩せさらばえた手足、しかし鋭い眼光。 病を押して文殊菩薩と問答する維摩居士の姿は、中国士大夫の自画像だというのが納得できる。

 伝・夏珪筆『山水図』二幅も東博コレクションなのか。あまり記憶になかった。「夏珪 山水図」で画像検索しても出てこない作品。李唐の『秋冬山水図』(大徳寺高桐院)を思い出したんだけど、あとで画像を確認したら、ぜんぜん似てなかった。雪舟の師として知られる李在の『山水図』も面白いな。明代にしては古風な印象。でも屹立する岩山の横に、存在感のある建築(寺院?)が描かれているのが、妙に人間くさい。

 書では、私の好きな八大山人の『行書臨河序軸』(蘭亭序)を久しぶりに見た。 文人の書斎を模した展示ケースに、蔵書印をたくさん押した『韓集挙正』(韓愈の詩文集を校勘したもの)の冊子は開いてある。重要文化財・大倉集古館所蔵。前回(8月)も思ったが、改修休館中の大倉集古館の収蔵品が、東博のあちこちに紛れ込んでいるのが、まちがい(?)探しみたいで面白い。東洋館の1階には、何喰わぬ顔で、銅雀台出土の伝来を持つ獅子の石像(大倉集古館所蔵)が鎮座している。

 東洋館では『東洋の白磁-白をもとめ、白を生かす』(2015年8月18日~12月23日)と『不孤斎が愛した小さな器-茶入・振出・香合』(2015年8月18日~12月23日)もいい。中国、朝鮮、日本だけでなくて、ベトナムにも白いうつわがあるのだなあ。

 本館(日本美術)では、国宝室に神護寺の『山水屏風』(2015年10月6日~11月3日)が来ている。人も家も動物も小さくて、のどかすぎて、どう鑑賞したらいいのか分からないけど…いろいろと往時を想像して、テンションが上がる。屏風といえば、7室(屏風と襖絵)の現在のセレクション(2015年9月15日~10月25日)も好きだ。亜欧堂田善の写実的な『浅間山図屏風』に対して、装飾的な金屏風の『網代に葡萄図屏風』と椿椿山筆『蘭竹図屏風』。 後の2点は大倉美術館所蔵なんだけど、こういう大きな展示室に置くと収まりがいい気がする。

 ちょっと驚いたのは、3室(仏教の美術)(2015年9月15日~10月25日)の冒頭に、めずらしく愛染明王坐像が展示されていたこと。解説に「内山永久寺旧蔵」とあり、截金・彩色が美しく、青いガラス(石?)を連ねた瓔珞が赤い身体に映える。記憶にひっかかるものがあって、いま探してみたら、2010年春に展示されていた愛染明王らしい。ただ、前回は、台座の蓮華を覆うように垂れ下がった瓔珞が印象的だったのだが、今回はそれがなかった(なぜか)ので、別物のような気もしたのである。でも、久しぶりによい仏様を見せてもらった。
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