見もの・読みもの日記

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パンを求めて/ロシア革命(池田嘉郎)

2017-03-23 22:49:51 | 読んだもの(書籍)
〇池田嘉郎『ロシア革命:破局の8か月』(岩波新書) 岩波書店 2017.1

 今年2017年は、ロシア革命から100年目に当たる。そのことに気づいて本書を読んでみたが、難しかった。旧勢力側は皇帝ニコライ二世、革命勢力はレーニンとトロツキーくらいしか名前を知らないので、なじみのない人名や党派名がずらずら出てくるのに辟易した。明治維新や中国の辛亥革命なら、名前を聞くだけで、親しみや反感が湧く人物がたくさんいるのだけど。

 本書が焦点をあてる「8か月」とは、1917年2月の二月革命から同年10月の十月革命までの期間をいう。革命以前のロシアは、ニコライ二世の治世で、1906年に二院制の議会が開設されていた。真に議会らしかったのは下院(国家ドゥーマ)である。1914年には第一次世界大戦が勃発し、ロシアは参戦して、挙国一致の総力戦体制がつくられる。しかし、戦線では退却が続き、経済は悪化し、食糧事情が逼迫する中で、1917年2月23日、女工たちが「パンを!」の声をあげて街頭に出たことが革命の始まりとなる。街頭に出る労働者の数は日ごとに増え、はじめは軍隊が群衆に発砲して鎮圧につとめたが、やがて兵士も反乱に加わる。議員たちは、議論の末、ドゥーマとしてではなく「臨時委員会」として、事態に対応することを決める。

 やがて群衆の中から、労働者と兵士の代議員評議会=ソヴィエトが誕生する。このへんが私には唐突で、よく分からないのだが…皇帝退位後、ドゥーマの権威を継承する臨時政府がつくられた。しかし、臨時政府とペトログラード・ソヴィエトの二重権力状態にあった。5月には、社会主義者が入閣して、自由主義者と社会主義者の連立政府が発足するが、ドイツ軍との戦闘は続き、農民による土地の奪取、生産現場の混乱、民族紛争、食糧不足、犯罪の横行など、あらゆる災厄に疲弊する中で、武装蜂起による十月革命が成立する。そして、新政府の決断で、ドイツ・オーストリア・オスマン帝国とは講和が成立するが、そのかわり、白軍×赤軍に分かれた内戦が勃発し、諸外国の介入が始まる。

 初学者のメモはこのくらいにしておくが、とにかくロシア民衆にとって苛酷な時代だったことは少し分かった。やっぱり「食べるものがない」怒りから始まる革命は後戻りしないのだな。人間にとって、最も根本的な欲求であるから。逆にいうと、自由や平和を求めるデモにも意味はあるけど、食べさせている限り、政権は簡単に倒れないんだな、とも感じた。そして革命は、長い混乱と暴力を伴う。革命なしで過ごせるなら、たぶんそのほうがいいだろう。

 また、ロシア革命の特徴としては、女性の活躍が目につき、面白かった。もちろん一部の少数者であり、著者は「総じて、女性の役割を限定しようとする発想法は、革命ロシアの労働者の間にも長く残った」と述べているけれど、臨時政府は女性を迎え入れている。
コメント
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