見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

春近し札幌:片岡球子(北海道近美)+あったかい住まい(北海道博物館)

2017-03-07 22:25:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
北海道立近代美術館 特別展『片岡球子 本画とスケッチで探る画業のひみつ』(2017年1月4日~3月20日)

 週末、久しぶりに北海道に行ってきた。むかしの仕事仲間が集まる飲み会が目的だった。土曜の午後は、約束の時間まで少し余裕があったので、この展覧会を見に行った。日本画家の片岡球子(1905-2008)は札幌生まれ。高等女学校卒業後に上京しているので、あまり北海道出身のイメージがなかったが、道内ではけっこう愛されている画家である。

 本展は、球子が小学校教師時代から最晩年に至るまで描きつづけた約350冊のスケッチブックと、完成品として世に出た作品をあわせて展示し、画家の創造のひみつを探るもの。いやー噂には聞いていたけど、すごい迫力のスケッチブックだった。私は、最晩年の「裸婦」シリーズのスケッチは見たことがあるのだが、それ以外は初めて見た。「雅楽」シリーズの爆発する色彩、すごい。小学生が教室で使うような油性のマジックインキを使って描いている。「火山」シリーズもすごい。「阿波踊り」も「歴史人物」も、ただ呆然と眺めるしかなかった。

 展覧会に落選し続けて「落選の神様」と呼ばれたとか、小林古径に「今のあなたの絵はゲテモノに違いないが、ゲテモノと本物は紙一重の差だ」と励まされたとか、これはドラマになりそうだと思ったが、結婚や家族のエピソードがないと駄目だろうか。

北海道博物館 総合展示+第7回企画テーマ展『あったかい住まい-北海道・住まいの道のり-』(2017年2月3日~3月31日)+秩父宮記念スポーツ博物館北海道巡回展『2020年東京オリンピック・パラリンピックがやってくる』(2017年2月3日~3月17日)



 日曜日はいろいろ考えた末、北海道博物館を訪ねた。アプローチにはかなり雪が残っていたが、防滑底のブーツで足元は万全。二度目なので、アッサリ見られるかなと思ったら、結局、2時間近くかけてじっくり見てしまった。

 北海道の歴史や地誌が分かってくればくるほど、面白さが増す。年末に読んだ本『シャクシャインの戦い』を思い出したり、先月見た『火焔型土器のデザインと機能』展を思い出して、本州の縄文式土器と北海道の縄文式土器の違いに思いを馳せたりした。北から南から、また大陸から、さまざまな文化が出入りし、境界線が伸び縮みする様子を見ていると、「日本文化」とか「日本らしさ」という言葉が、いかに無根拠なものかが実感できる。

 企画展示『あったかい住まい』も面白く、特に屋根のかたちの変遷が興味深かった。私が札幌に住んでいたとき、本州から訪ねてきた友人が「住宅の屋根は三角じゃないのねえ」と不思議がっていた。そういえば、私が小学生の頃、北海道は積雪を避けるため、 急勾配屋根が多いと社会科で習った記憶がある。今回の展示によると、昭和20年代に「三角屋根住宅」が開発され、同時に断熱材や外付アルミサッシュで防寒化が進み、石油ストーブが急速に普及して、真冬でも室内では薄着という北海道の生活スタイルが生まれたという。ちなみに、写真は「冬の室内温度」の都道府県別比較表(茨城、寒い…)。



 一方、人口が増えて住宅地の狭隘化が進むと、屋根の雪を落として捨てることができなくなり、M字型屋根の「無落雪屋根住宅」が普及した。このかたちの住宅は、いまも札幌の市街地で見ることがあるが、M字部分に雪を溜めて溶かしていたのか。知らなかった。
コメント
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