見もの・読みもの日記

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龍光院の曜変天目を見る/国宝(京都国立博物館). 第2期

2017-10-22 22:07:01 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都国立博物館 開館120周年記念 特別展覧会『国宝』(2017年10月3日~11月26日)(第2期:10月17日~10月29日)

 国宝展第1期に続き、第2期も行ってきた。当初は行くつもりがなかったのだが、京都・龍光院の曜変天目が出ると知って、無理やり予定を入れた。SNSを見ていると、平日も混雑しているようなので、なるべく夕方を待ち、15時過ぎに行った。正面ゲートは待たずに入れたが、建物に入ってから10分ほど並ばされた。3階から順序よく見ようと思ったが、2階に「曜変天目は1階です」というプレートを持って立っているお姉さんがいたりして心が乱れるので、やっぱり腰を据えて見るのは1階からにする。

【1階】

・陶磁:奥の展示室に向かう通路の左側に列ができており、「曜変天目を最前列でご覧になりたい方はお並びください。二列目以降でご覧になる方は右手をお進みください」と係員が誘導している。まずは最前列で見たいと思い、列に並ぶ。さほど混んでいなかったので、3~4分で先頭まで進んだ。目に入った曜変天目、内側に白い貝殻のような粒子が散りばめられている。いや釉薬の変化でできた斑点なのだが、あまりにも存在感があって、象嵌か螺鈿みたいだ。え?これなの?青くないの?と予想外の姿に戸惑いながら、ゆっくり展示ケースに沿って歩を進めると、ある角度で、突然、白い粒子の外縁に青い光がきらめき現れる。うお~と感嘆する間もなく、「間を空けずにお進みください」の声に促されて、鑑賞終了。

 二列目以降に下がってゆっくり眺めようとしたが、青い光は茶碗の底にだけあるので(この日の照明の角度による)、上からのぞき込まないと本当の魅力が分からない。もう一回、列の後ろに着き、4~5分で茶碗の前へ出る。これを4回くらい繰り返した。龍光院の曜変天目を見るチャンスは、もう一生ないかもしれないと思っている。なんて書いておくと、意外とすぐに二度目がまわってきたりするのだけど、どうだろうか。ネット上の情報によると、1990年と2000年に東京国立博物館で開催された日本国宝展には出品されたことがあるそうだ。その頃はまだ古美術への関心が薄かったし、今のように展示替え情報を気軽にゲットできる時代でもなかったしなあ。ちなみに今年の春の藤田美術館で、同館所蔵の曜変天目の解説をしながら、龍光院のものに触れて「秋の国宝展にもしかしたら出るかもしれませんね」と注意を促してくれた学芸員さんに感謝。

 曜変天目と『青磁鳳凰耳花入(銘:万声)』のほかは墨蹟。おや見慣れない作品が?と思ったら、竺仙梵僊筆『諸山疏』というもので、これも龍光院の所蔵だった。やや右肩上がりの、勢いがあっておおらかで気持ちの良い文字だ。もうひとつ、蘭渓道隆の端正な筆跡『金剛経』も龍光院のものだった。

・絵巻物:『華厳五十五所絵巻』がいっぱい開いていて嬉しかった。いつも下から尊者を仰ぎ見ている、小さな童子の表情が愛らしい。『信喜山縁起絵巻』は「尼公の巻」。

・染織:第1期と変化なし。

・金工:厳島神社の『紺糸威鎧』は平重盛奉納と伝える。重盛さま! 紺糸にところどころ紫糸が混じり、華やかさを加えているが、これは後世の補修とのこと。胴の弦走(つるばしり)(正面部分)には優美な獅子丸文の染革を張る。

・漆工:第1期と変化なし。

・彫刻:清凉寺の釈迦如来立像がおいでだった。まわりの仏像と比べて色の黒さが目立つ。マホガニーとか、南方系の木材を思い出させる。光背の細工が精緻ですごいが、これも広東やタイの木彫工芸を思わせる。

【3階】

・書跡:今期は空海と最澄の特集。空海は作品によってずいぶん雰囲気が変わるが、あまり意識したことのなかった『金剛般若経開題残巻』の、のびやかな独草体(連綿を用いない、一字ずつ独立した草書)が気に入った。京博所蔵だから、ぜったい以前に見ていると思うけれど。今期は仮名が全然ないというのは、ちょっと寂しい。

・考古:変化なし。

【2階】

・仏画:ほぼ変化なし。『吉祥天像』だけお帰りになっていた。

・六道と地獄:東博と京博の『餓鬼草紙』が並んで出ており、黒山の人だかり。この夏の『源信』展で京博本(餓鬼の救済物語を含む。目連尊者の母の説話など)は見たが、東博本(人知れず跋扈する餓鬼の姿を描く)は見逃したので、順番待ちをして、しっかり見て行く。聖衆来迎寺の『六道絵』は展示替え。『病草紙』は同じ。

・中世絵画:ほぼ変化なしだが、毛利博物館の『四季山水図巻(山水長巻)』が場面替えになっていたので、じっくり見る。墨画の中に投入された淡色が美しい。アニメーションにして動かしてみたくなる。

・近世絵画:『風俗図屏風(彦根屏風)』を久しぶりに見る。ほかは変化なしだが、前回、記憶に残らなかった等伯の『楓図壁貼付』(智積院)をあらためていいと思う。金地の中にちらりと見える池の青が美しい。赤、白、緑など自由な色彩は、江戸琳派につながっていくように思えた。

・中国絵画:個人的に、ここは第2期でいちばん注目どころだと思っている。まず、ふだん一緒に見られない因陀羅筆『禅機図断簡』が3点が集結(丹霞焼仏図、智常禅師図、寒山拾得図)。山梨・久遠寺の『夏景山水図』はたまに東博で見るもの。京都・金地院の『秋景・冬景山水図』2幅も何度か見ている。右隻の二羽の鳥、左隻のサルを見落とすところだった。京都・高桐院の李唐筆『山水図』2幅は、左:滝、右:巨木の並べ方。高桐院では逆なんだけど、京博の定番はこうなんだな。大和文華館の『帰牧図、附牽牛』の2幅も肩を寄せ合うように並んでいた。
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