見もの・読みもの日記

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2017年10月@関西:国宝(京都国立博物館). 第1期

2017-10-12 00:13:31 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都国立博物館 開館120周年記念 特別展覧会『国宝』(2017年10月3日~11月26日)(第1期:10月3日~10月15日)

 国宝展第1期に行ってきた。当初は日曜の朝から並ぶつもりだったが、SNSを見ていると、開館前から数百人の行列ができているらしい。今回は「入館と同時に駆け寄りたい!」というお宝があるわけでもないので、朝から並ぶのは止めにした。土曜日に京都入りして、観光の合間にtwitterを見ていると、午後の遅い時間になって「待ち時間はありません」という情報が流れてきた。よし! 予定外の決断をして、京博に向かった。到着したのは午後3時過ぎで、待ち時間なしで入れた。

 エレベーターで3階に上がるよう誘導されるが、列が短いので、ロッカーに荷物を預けたり、ふらふらコースを外れてもOK(たぶん混雑時はそんな自由はない)。ちょっと1階の展示室を覗いてみたが、やっぱりエレベーターに乗ることにする。3階に上がったが、最初の「書跡」がものすごく混んでいたので、2階から見てまわることにする。以下、各室で印象的だった作品を紹介しよう。

【2階】

・仏画:久しぶりの『釈迦金棺出現図』が目に入り、おお!さすが国宝展と気分が盛り上がる。赤い衣が美しい神護寺の『釈迦如来像』(赤釈迦)。東博の『普賢菩薩像』は、切れ長の目の「見返り」白象に座す。戦後の国宝指定第1号だという記事をどこかで読んだ。東博ではあまり見る機会のない作品だと思う。肉感的な腕がうごめくような『千手観音像』も東博所蔵。美麗な平安仏画を堪能できて大満足! と思ったら、単立の展示ケースに薬師寺の『吉祥天像』がおいでだった。平安仏画に比べると、むしろ実在の人間らしいなあと感じる。

・六道と地獄:夏に『源信』展で見たばかりの聖衆来迎寺の『六道絵』から4幅と奈良博の『地獄草紙』。京博の『病草紙』の「二形(ふたなり)」と「眼病治療」「歯槽膿漏」は『源信』展に出なかったもの。

・中世絵画:雪舟の国宝6件が1室に!ということで第1期の呼びものになっている部屋。個人的には、『秋冬山水図』2幅『破墨山水図』『天橋立図』『慧可断臂図』『山水図』(絶筆)は見る機会が多いので、毛利博物館の『四季山水図巻(山水長巻)』が嬉しかった(ただし前半のみ)。

・近世絵画:宗達の『風神雷神図屏風』。実は久しぶりなのだが、東京で光琳や抱一の風神雷神図を見ているので、そんな感じがしない。志野茶碗『卯花墻』あり。

・中国絵画:東博の所蔵品が中心で新鮮味なし。赤い官服の男装女性を描いた『宮女図』が意外だった。これ何度か見てるけど国宝だったのか。『飛青磁花入』あり。

【1階】

・陶磁:看板に偽り(?)ありで、焼きものは『青磁鳳凰耳花入(銘:万声)』と相国寺の『玳玻天目』の2件しかない。あとは壁一面に墨蹟。常盤山文庫の(根津美術館でよく見る)『遺偈』(毘嵐巻空)が来ていた。

・絵巻物:『粉河寺縁起絵巻』と『信喜山縁起絵巻』の「山崎長者の巻」。大好き!

・染織:中宮寺の『天寿国繍帳』は垂直に飾られていたけど、寝かさなくて大丈夫なのかな? 法隆寺の『四騎獅子狩文様錦』は、馬上で振り向きざまに弓を構える射手のエキゾチックな文様を織り出す。あと袈裟が何種類かあって、京博の趣味だなあと思った。

・金工:平安時代後期にさかのぼる甲冑『赤韋威鎧』はたぶん初めて見た。なるほどこれも「金工」か。

・漆工:奈良時代の漆芸を伝える東大寺所蔵の『花鳥彩絵油色箱』はかなり大型。蓋が反ってしまっている。徳川美術館の「初音の調度」には大勢の人だかりができていた。琉球王国尚氏関係資料はこの部屋にまとめてあって、漆工のほか、装束や冠もあった。

・彫刻:いつもの彫刻のほか、平等院の雲中供養菩薩像、東寺の兜跋毘沙門天像など、京都近郊で集めた感じで物足りない。醍醐寺の虚空蔵菩薩立像がシャープな造形でよかった。

【3階】

・書跡:高知県立高知城歴史博物館所蔵『古今和歌集 巻二十(高野切本)』に感激した。いわゆる高野切の当初の姿をほぼ留める完本である。しかも筆跡は第一種! 巻二十って、内容的に面白くない(華がない)から需要がなくて切られなかったのかなあ、などと考えた。10/3-10/9までの1週間しか出品されないので、ほんとに貴重な出会いだった。この部屋は、解説の文体が面白くて、高野切第一種を「一皮むけた大人の味わい」と評していたり、曼殊院本『古今和歌集』の「メリハリのきいた筆線」は確かにそのとおりだった。藤原俊成自筆の『古来風躰抄』について「切れ味鋭いナイフのような力強い筆跡」には、ちょっと笑った。

・考古:ファンが多くて意外に混んでいた。やはり『深鉢型土器(火焔型土器)』が奇跡のように素晴らしい。土偶の名品は、それぞれ個性的で楽しかった。

 どの展示室も混雑していたが、作品に執着する人が少なく、どんどん動くので、あまりストレスなく鑑賞できた。まわりの会話を聞きながら、やっぱり「国宝」を掲げると、ふだん美術館に来ない人も呼び込むんだなと感じた。全体に京博の強みを感じる展示で、書画(特に絵画)の満足度は高い。彫刻(仏像)はうーん国宝展?というレベルだが仕方ない。さて、この日はお昼ごはん抜きで動いていたので、館内のカフェで一休み。「トラりんデザート」をいただく。



 混雑時はカフェに入ると展示室に戻れず、再び入館待ちの列に並ばされるそうだが、この日はすでにお客の入りも落ち着いていたので、館内に戻って、好きな作品の前を重点的にうろつくことができた。第2期と第3期にも再訪の予定だが、もうこんな平和な鑑賞は許されないかもしれない。覚悟してこなくては。
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