見もの・読みもの日記

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2018年4-5月@東京近郊展覧会拾遺その2(東博・名作誕生/新指定)

2018-05-10 21:43:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 特別展『名作誕生-つながる日本美術』(2018年4月13日~5月27日)(前期:4月13日~5月6日)

 作品同士の影響関係や共通する美意識に着目し、地域や時代を超えたさまざまな名作誕生のドラマを、国宝・重要文化財含む約130件を通して紹介する。事前に出品リストを見て、行くなら後期と考えていたのだが、連休前に友人から「招待券あるよ」という話を聞き、同行させてもらった。近年の特別展と比較すると「客が入っていない」という噂だが、私はこのくらいが適切な集客だと思う。展覧会のメインテーマは「つながり」だが、展示は、いくつかのサブテーマ(実例)によって進行する。

 たとえば「一木の祈り」は、冒頭に中国・唐時代の十一面観音菩薩立像(山口・神福寺、岩見美術館の展覧会で見た!)を示す。大陸で生まれた精緻で、しかも清新な表現が日本にもたらされ(渡来仏師の活躍もある)、奈良~平安時代初期に、数々の木造仏の名作が生まれた。唐招提寺の伝薬師如来立像に伝衆宝王菩薩立像(西洋風の顔立ちの)、ひょえ~元興寺の薬師如来立像まで来ていらっしゃる!!とびっくりした。孝恩寺の薬師如来立像(親しみやすいおばちゃん顔)に会えたこともうれしい。兵庫・成相寺の薬師如来立像は知らなかったが、お相撲さんみたいに量感たっぷりで堂々としている。私はこの時代の木造仏が大好きなので、大満足だった。「祈る普賢」で、大倉集古館の普賢菩薩騎象像(彫刻)と東博の普賢菩薩像(絵画)が並んだのも感慨深かった。

 「巨匠のつながり」は、雪舟、宗達、若冲の三人における「継承と工夫」を特集。雪舟と中国絵画については後期が本番という印象だが、正木美術館所蔵の雪舟筆『潑墨山水図』や京都・大雲院所蔵の伝玉㵎筆『山水図』など、見る機会の少ない作品を見ることができた。宗達の『扇面散屛風』(三の丸尚蔵館)に『平治物語絵巻』の図様がそのまま使用(トリミングして模写)されている。以前から知られていたことではあるが、実際に絵巻(摸本)や断簡を近くに置いて見比べる体験は初めてで、すごく面白かった。でも、まわりのお客さんは、あまり展示の趣旨を理解できていない様子で残念だった。若冲は『白鶴図』と中国絵画の影響関係など。

 古典文学、山水、花鳥なども取り上げられてるが、人物について、岸田劉生の『野童女』(麗子像)に寒山拾得を見るという視点には驚いた。このほか、見ることができた名品は『洛中洛外図屛風』(舟木本)や等伯の『松林図屛風』、岸田劉生の『道路と土手と塀(切通之写生)』など。『見返り美人図』は昔から東博の推しなんだけど、あまり良さが分からない。

■東京国立博物館 特集『平成30年新指定国宝・重要文化財』(2018年4月17日~5月6日)

 同じ日にこちらの特集展示も見た。今年の目玉は、何と言っても大阪・金剛寺の『紙本著色日月四季山水図』(国宝指定)だろう。4月初めに金剛寺の落慶法要に行ったとき、摩尼院書院のボランティアのおじさんに「先日、運び出して行ったから、いま東京で展示されているでしょ?」と言われて、「いや、まだです。もう少し先のはずです」と答えたことを思い出した。国宝になると、これまでより展示の機会が増えるのかなあ。嬉しいけれど、大事にしてほしい。

 若冲の『紙本墨画果蔬涅槃図』と応挙の『紙本墨画淡彩瀑布図』も仲良く重文指定。文化庁所蔵の『平清盛請文』は知らなかった。清盛の自筆で、巧くはない(バランスがよくない)が、おおらかな文字の印象。面白かったのは、山形・上杉神社が所蔵する『明国箚付/明冠服類』。朝鮮出兵後の和平交渉の際に、明から贈られたもので、景勝は「都督同知」という武官の官職に任命されているのだそうだ。アーカイブズ資料である『江戸幕府書物方関係資料』および『京都盲唖院関係資料』も興味深かった。

 11室(彫刻)には、東寺の雄夜叉神が来ていて、息が止まるほどびっくりした。大好きな仏像(神像?)だが、破損がひどいし、規格外れなので、指定は難しいだろうと勝手に思っていた。正式には木造夜叉神立像(東夜叉)というのだな。今年度、東寺は木造夜叉神立像2躯に加えて、木造四天王立像(焼損)(所在食堂)4躯(展示はパネルのみ)も重文に指定された。うれしい。国宝への昇格は、蓮華王院(三十三間堂)の木造千手観音立像1千1躯(3躯のみ展示)と、興福寺の木造四天王立像4躯(仮金堂→近年、南円堂に移されたもの)である。

 東博でゆっくり半日を過ごしたあとは、池の端の鴎外荘で友人と食事。いい休日だった。


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