〇文化学園服飾博物館 『ひだ-機能性とエレガンスー』(2019年12月20日~2020年2月14日)
久しぶりに同館を訪ねた(日祝休館なので、なかなか行けていなかったのである)。本展は、世界各地の民族衣装やヨーロッパのドレスなど、ひだが作り出す機能性とエレガンスを紹介する。
展示のはじめに「ひだの種類」の解説があって、ギャザー、シャーリング、スモッキング、プリーツ、タック、フリル、ドレープという名前が並んでいて、そうか、確かにあれもこれも「ひだ」だな、と妙に感心する。フリルとかプリーツとか、服飾的にはフェミニンなイメージで、自分が着るのは苦手に感じていたが、最初の展示室は「機能的なひだ」がテーマだった。
華やかなイブニングドレスや可愛い民族衣装に混じって、男性用のデニムの上下を着せたマネキンがあって、え?どこにひだ?と思ったら、注目すべきはジャケットの袖付きの後ろ。アクションプリーツと呼ばれる折り込みによって、腕の動かしやすさを実現しているのだ。
モンゴルのハラート(袍)は全体にゆったりと大きく、腰のあたりにタックを取って、スカート状の下衣をさらに広げている。馬の乗り降りがしやすいようにできているという説明に納得した。日本の袴(男性用・女性用)も韓国のチマ・チョゴリも、「動きやすさ」のためにひだを取り入れているのだな。
中国の苗(ミャオ)族の女性の衣装、台湾のパイワン族の男性の衣装は、ひだの細かいプリーツスカートを用いていた。山岳地帯に暮らす民族は、険しい山道を歩くため、足や膝の動きを妨げないものを下半身にまとう。なるほど~。世界各地で男性がスカート(状のもの)を穿く理由が「機能性」にあることがやっと分かった。ギリシャのフスタネラという男性用民族衣装は、白のブラウスに白のミニプリーツスカート、紺のベストがとてもおしゃれだった。もっと日本でもスカートを穿く男性が増えればいいのに。たぶん見慣れてしまえば何ということもないと思う。
昔の技術で細かいプリーツをどうやって作るのかは不思議だったが、板の上でひだを寄せながらしつけ糸で縫い、蒸して固定するそうだ。苗族のスカートは、卵白などを塗布してコーティングし、固く張りを持たせるという説明があった。
続いて「寒い地域」「暑い地域」「昼夜の寒暖差が大きい地域(砂漠地帯など)」における、ひだの機能性。寒い地域では、暖かい空気を身体のまわりに溜めて逃がさないようにするために、ひだが用いられる。襟元や袖口は締めるのがポイント。布地の厚みも増すし、確かに暖かそうだと思った。一方、暑くて湿気のある地域では、ひだのある1枚布でゆるやかに身体を覆う。すると空気が通りやすく、入れ替えもしやすいのだそうだ。インドのサリーは、むかしシンガポール旅行でお土産に買って帰ったことがあるが、きれいなひだをつくって着るのは難しかったなあ。ドーティという腰布を巻き付けてパンツに見せるものも、不器用な私には穿ける気がしない。
寒暖差の大きい地域では、空気を「溜める」「入れ替える」2つの機能を併せ持つ衣装が必要となる。布地をたっぷり使ったギャザーパンツが紹介されていたが、どうやって着る(穿く)のか、よく理解できなかった。
もう1つの展示室は「魅せるひだ」。ひだを用いた衣装は、布をたくさん使うことで豊かさやステイタスをあらわす。男性の衣装としては、身体を大きく見せる効能もある。なるほど、日本の武士の正装である裃(特に肩衣)もそうだな、と思う。武家の女性用の火事頭巾が出ていて、ひだというより、丈の違う生地の重ね方が、ティアードスカートみたいで愛らしかった。