〇国学院大学博物館 企画展『古物(たから)を守り伝えた人々-好古家たち Antiquarians-』(2020年1月25日~3月15日)
近世から近代にかけて好古家と呼ばれた古物の研究・蒐集家に焦点を当て、彼らの果たした役割を明らかにする企画展。私は、むかしからこの手の人々に関心と親近感を抱いてきた。その上、本展のポスターに松浦武四郎の大首飾の写真があしらわれているのを見て、これは行こう!と思い立った。
本展に登場する好古家は、江戸時代から幕末維新期へと、時代順に紹介されている。江戸時代は、木内石亭、藤貞幹、木村兼葭堂。奇石愛好家として知られる木内石亭の著書『雲根志』は、大学生の頃、澁澤龍彦先生の随筆で覚えた。藤貞幹は有職故実家として認識していたが、毀誉褒貶があって、おもしろい人物なのだな。国学院大学図書館所蔵の考古遺物スケッチ図巻『集古図』が展示されていた。木村兼葭堂旧蔵の馬形埴輪(頭部の断片のみ)は、関西大学博物館から出陳されていた。
幕末維新期は、蜷川式胤、ハインリッヒ・フォン・シーボルト(医師シーボルトの次男)、柏木貨一郎。柏木の名前は、すぐに思い出せなかったが、『沙門地獄草紙』の旧蔵者である(香雪美術館で見た)。江戸幕府小普請方大工棟梁の職にあったが、維新後は古美術蒐集家となり、のちに博物館御用掛となる。ええ~飛鳥山渋沢邸の建築は、建築家としての柏木の作品なのか。明治5年、仁徳天皇大仙陵の前方部で石棺などが発見されたときの記録画(写)が展示されており、ジブリアニメかと思うような、不思議なデザインだった。
さらに、神田孝平、本山彦一、根岸武香、根岸友山、田中芳男らが収集した石製品、石棒、玉類、埴輪などが展示されていた。考古遺物好きは多かったんだなあ。松浦武四郎は、大首飾に加えて、大小の勾玉10個をつけた短い首飾も。また、武四郎と特に関係のない『曲玉連飾図』という絵画資料が出ており、翡翠や水晶などを長く連ねて首飾りとすることが、近世の考古家たちに流行していた裏付けと説明されていた。面白い。ちょっと中華風な感じもする。
最後に、黒川真頼、落合直澄、井上頼圀・頼文・頼壽は、皇典講究所および国学院大学の関係者。江戸時代に成立した「国学」は、趣味の好古家を生むと同時に、考証学問としての好古(文学・史学・考古学・民俗学など)に流れ込んでいく。本展には登場しないが、折口信夫もこの先にいるんだなと思った。
最後に、国立博物館設立の機縁となった大学南校物産会(明治辛未物産会)の目録、錦絵など。私大の博物館でこうした資料を見たのは初めてで、珍しかった。