見もの・読みもの日記

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鎌倉・宝物風入れ2011(円覚寺、建長寺)

2011-11-04 21:57:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
 久しぶりに鎌倉の宝物風入れを見に行った。2008年の参観以来、3年ぶりになる。今回は、少し詳しくレポートしておくことにする。

臨済宗・円覚寺派本山 円覚寺

 第1会場1~3室は、ずらり並んだ、元の張思恭筆と伝える『五百羅漢図』33幅が見もの。全体に黒ずんだ絹本であるが、このところ羅漢図になじんできたおかげで(?)描いてあるものが見えるような気がする。指先から天に向かってビームを発していたり、虎の頭を抑えて歯磨きさせていたり、雲の上の羅漢さんが地上の貧者に食物(あるいは穴開き銭?)をバラ撒いていたり、見慣れたモチーフを発見するのが興味深い。白い大蛇の口の中に羅漢が座っているものもあって、おお、狩野一信の羅漢図そのままじゃないか!と思った。

 それぞれ、羅漢図の合間に別の大幅が掛けられていて、1室は『仏涅槃図』(鎌倉後期)。ニホンザルもいればラクダもいる。2室は岸駒の『虎』『開山像』『龍』三幅対。開山・仏光国師(無学祖元)は、若草色の衣を着て、浅黄色の布のかかった椅子に座す。霧に包まれたように、椅子のまわりを背景に溶かし込んでいるのが面白い。左肘のあたりと足元に2羽の鳩が描かれている。胸のピンク色が美しい。ハトの種類は不案内だが「キジバトだね」と話しているおじさんがいた。やっぱり鎌倉といえば、鳩なのだ。

 2室の手前には『緞子縫合編繍大袱紗(どんすぬいあわせあみしゅうおおふくさ)』が広げられていた。展覧会でガラスケース越しにも見たことがあるが、素通しで見ると、金糸の刺繍(特に端のほうによく残る)がキラキラ光って美しい。

 3室の中央には、恰幅のよい『被帽地蔵菩薩像』。ときどき国宝館で見る。羅漢図は、張思恭筆本が終わって、伝・兆殿司(明兆)筆16幅になる。宋元画を学んだ画僧と言われるが、この羅漢図に限っては、明代っぽいと思う。第1幅の上部に描かれていたのは神農だろうか? 兆殿司本は廊下に続き、浴室に向かう図があったり、喫茶の図があったり(侍者が瓜を切っている)、鉄鉢を持った腕をなが~く差し出す超能力の図があったりする。耳掻きされる龍、荷物を背負わされてへばり顔の虎が可愛い。石橋図は、遠近法のつもりかもしれないが、橋の上に現れた僧が小人に見える。

 4室にも兆殿司筆『十六羅漢図』があって、これも好きだ。各幅「羅漢1人+1」を描くのだが、「+1」は童子だったり、従者だったり、天王だったり、動物だったりする。トレーディングカードを見ているようで、全部欲しくなる。

 第二会場は3室ぶち抜きで、おもに書状、墨蹟、文献資料を展示。雨の日の洗濯物みたいに、隙間なく書軸が垂れ下がっている。歴史好きにはたまらないだろう。墨蹟では、無学祖元法語のおおらかな文字が私の好みだ。それにしても、義満の字は、なぜあんなに下手なのか? 文書の山に埋もれて、善光寺式の銅造阿弥陀如来両脇侍立像も、なぜかこの会場にいらっしゃった。

 第三会場では、小品だが、松花堂(昭乗)筆『豊干禅師像』に目がとまる。今年の風入れは、前回ほど混雑した感じがなかった。また、前回の記憶とは、場所が変わっているものもあるようで(単に私の記憶違い?)、もしかすると会場を少し広くしたか、あるいは、今年は5日(土)があるので、お客が分散したのかもしれない。

■臨済宗・建長寺派大本山 建長寺

 建長寺の風入れは、2003年に改築された客殿(紫雲閣)を第1会場、方丈(龍王殿)を第2会場として行われている。前回は、第1会場と第2会場が逆だったような気もするが、記憶に自信がない。

 第1会場(紫雲閣)の2階に上がると、いきなり緋毛氈の上に伽藍神が座って(腰掛けて)いて、笑ってしまった。参観者は立ったまま近づくので、伽藍神を冠の上から見下ろすことになる。いや、これはちょっとマズイんじゃないの? 目を引いたのは、銅造の小さな僧形像6体。立像で30センチ、坐像で20センチくらいか。三門楼上に安置されている五百体余の銅造羅漢の一部だという。天保~安政年間の鋳造。はじめて見た。隠元和尚賛の『関羽図』にはどこかで見たような印判が押してあるのだが、読めないのが悔しい。

 1階に下り、お抹茶とお菓子(2008年の写真と同じ)の無料接待を受ける。それから第2会場の方丈へ。方丈のつくりは、円覚寺と同じで、中央の「室中」+左右の3室構成になっている。1室目、『地獄十王図』(室町時代)は状態がよく、下絵の朱筆もよく見える。2室目、室中。円覚寺では方丈の仏様は顔を出していなかったが、建長寺では、幕間から宝冠釈迦如来像(?)がわずかにお姿を見せている。

 3室目、伝・張思恭筆『白衣観音図』は、最近、修復が終わって、国宝館で展示されていたもの。明兆の『十六羅漢図』には、また指からビームを出している羅漢さんがいる。ここは、元の顔輝筆と伝える『十六羅漢図』がいい。人物のみを画面いっぱいに描き、背景も従者も省略する。あまり類例が思い浮かばない構成。今年流行のルーズなショートブーツみたいな履物が特徴的。

 方丈を出ると、法堂で無料の展示をやっていたので、覗いていくことにする。鎌倉をライフワークとする写真家・原田寛氏の写真展「らかんさん」(2011年10月15日~11月6日)で、建長寺三門楼上の銅像五百羅漢のさまざまな表情を撮影したものだ。どれもUPに耐える、いい表情をしている。彫刻家・高橋鳳雲(1810-1858)作の木像を元に制作されたもので、原型の木像は身延山に安置されたが、明治20年に焼失して伝わらないのだという。風入れの会場で見た数体も悪くなかったが、小さい像なので、写真で見るほうが魅力が増すと思う。

鎌倉国宝館 特別展『鎌倉×密教』(2011年10月15日~11月27日)

 最後に国宝館へ。いやー密教仏が揃うと雰囲気が濃いなあ~。彫刻は、不動明王の占有率高し。ただし、東国らしい力の籠もった不動明王だけでなく、より古い時代の穏やかな丸顔の不動明王も混じる。また、あれ、これが密教仏?と思うものもあって、密教の流行で変化観音が広まったことで、かえって「聖観音」が成立する、という説明になるほどと思った。鎌倉と縁が深いという、滋賀の園城寺からも数体が出品されている。

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