見もの・読みもの日記

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歴史画いろいろ/武士の姿・武士の魂(大倉集古館)

2025-02-24 22:17:54 | 行ったもの(美術館・見仏)

大倉集古館 企画展『武士の姿・武士の魂』(2025年1月28日~3月23日)

 本展第1章では江戸時代から昭和にかけて武士の姿を描いた作品と、霊威をもち武士の魂として大切にされてきた刀剣を展示、第2章では、武力や権力の象徴であり、威信財でもある鷹を描いた作品を取り上げ、鷹図が武士の表象としてどのように描かれ、荘厳され、利用されたかを探る。

 冒頭に佐藤正持(1809-1857)という画家の『本朝歴史絵』という画集から「宇治川合戦」の図が開いてきた。怪力無双の畠山重忠が、溺れかけた味方の武士を掴み上げ、対岸に投げ飛ばして救う場面。馬上の重忠が片手で高々と掲げた武士は、腹を下にエビ反った姿勢で投擲を持っている。重忠、カッコいい。佐藤正持は、日本神話や歴史上の出来事などを多く描き、市井で衆人に見せて日本精神の高揚を図ったそうで、勤皇画家とも紙芝居の元祖とも言われるらしい。今どきはあまり流行らない感じだが、おもしろい。

 『虫太平記絵巻』(江戸時代)はたぶん何度か見た記憶があった。描かれた登場人物は、男も女もみんな頭に虫を載せている(昆虫だけでなく、蛇やトカゲも虫)。北条高時はクモで、田楽を踊る天狗たちも、後醍醐天皇らしき人物も虫を載せていたが、虫に貴賤とか善玉悪玉の感覚はあったんだろうか。

 そして大好きな前田青邨の『洞窟の頼朝』。描かれた甲冑は、国宝の鎧数点を参照しており、時代に合わないものも描かれていると解説にあった。甲冑に注目してしみじみ眺めると、実に紐だらけであることに気づく。兜の緒や腰紐(繰締の緒)はもちろん、籠手の脇の下とか履物とか、あらゆるところを紐で締め、結んでいるのだ。脱ぎ着は大変だろうなあと思ってしまった。なお、武蔵御嶽神社所有の国宝『赤糸威大鎧』(原品は平安末期、畠山重忠奉納)の複製品が来ていて並んでいた。東博にもあったと思うが、本展では千葉県立中央博物館所蔵の複製品である。

 もうひとつ楽しみにしていた安田靫彦『黄瀬川陣』がないと思ったら、後期(2/26~)の展示だった。そして『随身庭騎絵巻』も後期なのか~。これはもう一回来なくては。そのかわり、小山栄達(1880-1945)『吉野山合戦』という、少しあやしい雰囲気の歴史画を見ることができたのでいいことにしよう。このひとは「講談社の絵本」で加藤清正や菊池武時の挿絵を描いている。

 2階展示室は、久隅守景の『賀茂競馬屏風』に始まり、鷹狩図、架鷹図など。東博や摘水軒記念文化振興財団から多数の作品が出陳されていた。摘水軒の『洋犬・鷹図』は、たぶん春の江戸絵画祭りかどこかで見た記憶があった。変わった作品だったのは阪昌文『鷹狩犬図・鷹匠図』3幅(東博)。阪昌文(さかしょうぶん)は連歌師で、この3幅対は絵のほかに鷹狩に関する古典語彙がびっしり書き込まれた用語辞典になっている。東博、こういう面白い作品をもっとどんどん展示してほしいなあ。


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