■東大寺法華堂(三月堂) 『秘仏 国宝・良弁僧正坐像特別拝観』(2023年10月28日〜11月19日)
関西旅行2日目は、朝8:00開館の奈良博の正倉院展に飛び込もうと思っていたのだが、前日、十分楽しめたので予定を変更。「東大寺開山良弁僧正1250年御遠忌法要」の一環として、ふだん開山堂にいらっしゃる良弁僧正坐像が三月堂にお出ましと聞いて、朝からこちらを見に行った。仏像の安置されている正堂に入ると、左奥、須弥壇の前のスペースに横向き(中央向き)にお像が安置されていた。
堂内にいらした方の解説に寄れば、開山堂では毎年12月16日に開扉されているが、正面からしか見ることができないので、この機会に横顔や後ろ姿を見てもらおうと思ったとのことである。私は、むかし一度、12月16日に東大寺に来たことがあるはずなのだが、このブログを書き始めるもっと前のことのようだ。良弁僧正の横顔は、姿勢のよさと端正な鼻筋が印象深く、膝の上に如意を横たえていらっしゃった。お寺の方の解説では、講話をするときは如意を立て、話を止めると寝かせるのだという。「いま正倉院展に良弁僧正のお使いになった如意と、その容れ物が展示されています」ともおっしゃっていたが、如意の柄は、くるくると螺旋状になっているのがオシャレで、正倉院御物とは違うデザインだった。
■奈良県立美術館 開館50周年記念展・特別展『仮面芸能の系譜 仮面芸能のふるさと奈良』(2023年9月30日~11月12日)
縄文時代の土面に始まり、伎楽、雅楽、舞楽、散楽、田楽、その淵源が謎に包まれた予祝舞・翁舞、猿楽など、奈良で生まれ育った仮面芸能の魅力を紹介する。伎楽・雅楽くらいまでは想定の範囲内だったが、奈良と能楽の深いかかわりはあまり認識していなかったので、古い翁面の伝来などに驚く。南都舞楽の楽祖・狛光高(こまのみつたか、高麗系なんだろうなあ)を祀る舞光社が氷室神社の境内にあるというのも初めて知ったので、次は詣でてみたい。館長の籔内佐斗司さんの作品も、一部は触れて楽しかった。
■元興寺法輪館 『菅原遺跡と大僧正行基・長岡院』(2023年10月21日~11月12日)
時間に余裕があったので、奈良町の陰陽町を訪ねて、元興寺に寄った。宝物館では、奈良の西郊の高台にある菅原遺跡の発掘成果を紹介する展示が行われていた。行基入寂の後、その供養のために建てられた円形建物(柱穴は十六角形くらい)「長岡院」の遺構が発見されているとのこと。関連で、堺市には、円形の段を持つ土塔があることも初めて知った。小学生男子を連れた大阪のおばちゃんが「土塔行ったな」「行った」とふつうに話していた。
※「高僧・行基の供養堂? 類例ない円形建物跡を発見 奈良」(朝日新聞デジタル 2021/5/20)
■大阪中之島美術館 特別展・生誕270年『長沢芦雪-奇想の旅、天才絵師の全貌-』(2023年10月7日~12月3日)
長沢芦雪(長澤蘆雪)の画業を紹介する、大阪で初となる回顧展。芦雪は大好きなので、必ず見に来ようと意気込んでいた。展示は参考作品を含めて約110件。展示替えがあるので、一度に見られるのは半分くらいである。個人蔵や初公開の珍しい作品をかなりたくさん見ることができたが、無量寺の『虎図襖・龍図襖』は見られず。図録には『山姥図』や『方広寺大仏殿炎上図』が載っているのにリストには入っていないので、あれ?と思ったら、九博に巡回予定があるので、そちらで展示されるらしい。逸翁美術館の『降雪狗児図』など、かわいい系のわんこ図が目立って多かった。この春、府中市美術館の『江戸絵画お絵かき教室』で蘆雪のスズメを模写したこともあって、スズメの顔が気になる。マンガみたいなサルも気になる。同時代の天才画家のコーナーに、若冲の『象と鯨図屏風』が来ていたのにはびっくりした。なお、ミュージアムショップでは『虎図襖』のトラのTシャツが、ここでも阪神優勝記念で推されていた。
■藤田美術館 『妖』(2023年11月1日~2024年1月31日)『護』(10月1日~12月28日)『江』(9月1日~11月30日)
まだ1か所くらい回れそうだったので、久しぶりに同館へ。芦雪筆とされる『幽霊・髑髏仔犬・白蔵主図』3幅対を見た。でも、あどけない子犬に髑髏を配する趣向、芦雪本人は好まない気がする。あとは『相撲絵巻模本』や『十二天図屏風』を楽しんだが、やはりリニューアル前の垢抜けない雰囲気のほうが好きだった。しかし東京の美術館に比べると、入館料1,000円は良心的。
今回、はじめて「あみじま茶屋」でお茶とだんごセット500円をいただいたが、このお値段もリニューアル開館(2022年)から上がっていなくて嬉しかった。おだんごがモチモチで美味。
まわりの風景が大きく変わっていたのには戸惑った。太閤園(2021年6月30日営業終了)の茶色いレンガの建物が跡形もなく消えていたのだ。むかし、藤田美術館に来ると、(藤田観光系列の)太閤園のカフェの割引券(?)が貰えた記憶があるが、結局、一度も利用せずに終わってしまったなあ。少し残念。
そしてこの日は、日本橋の国立文楽劇場で第3部『冥途の飛脚』を見て、泉佐野に泊まった。